外国人も、日本で働いて所得を得ていれば、原則として所得税や住民税、社会保険の対象となります。
給与から何がどのくらい天引きされ、手取り額がいくらになるのか、外国人の雇入れ時に説明しましょう。
給与等の支払いに伴う源泉所得税や住民税の税務については、日本人労働者と異なる場合があるので注意が必要です。
外国人労働者が「居住者」か「非居住者」かで、その取扱いが変わります。
確認する際は、必ず公的な書類でチェックすることが重要です。
区分 | 定義 | 所得税 (国内源泉所得) | 住民税 | |
居住者 | 永住者 | 国内に住所を有し、または現在まで引き続き1年以上居所を有する者のうち、下の「非永住者」以外 | 課税 | 前年に所得があり、その年の1月1日に国内に住所を有する場合に課税 |
非永住者 | 日本国籍を有しておらず、かつ、過去非永住者10年以内において、国内に住所または 居所を有していた期間の合計が5年以下 |
課税 | ||
非居住者 | 居住者以外 (1年未満の短期滞在を予定している場合) | 課税 | 課税されない |
日本人労働者と同じように 「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の提出を受け、毎月源泉徴収します。
また年末調整も行い、金額等を記載した「源泉徴収票」を交付します。
ただし、以下の点に 注意が必要です。
「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」に、国外に居住する親族の記載があった場合には、その人が親族であることを証明する外国政府等が発行した書類等と、海外への送金を証明する書類を提 出してもらう必要があります。
なお、国外に居住する親族の情報収集には非常に時間がかかるケースが多く、日本人労働者に年末調整の案内をする時期(11月頃)に準備を始めても間に合わない場合があります。
そのため、母国に家族を残して就労する外国人労働者には、早めの案内が必要です。
技能実習生や留学生等の場合、本人の母国との租税条約により、所得税が軽減・免除される場合があります。
租税条約の適用を受けるためには、本人から「租税条約に関する届出書」等の必要書類を受け取り、雇入れ後最初に給与等を支払う日の前日までに税務署長に提出する必要があります。
支給した給与の 20.42%を源泉徴収し、年末調整は不要です。
また、居住者が受けられる所得控除を受けられない場合があります。なお、②と同様に、その外国人労働者の居住国との租税条約により、所得税が軽減・免除される場合があります。
扶養控除以外の所得控除あるいは税額控除については、適用対象外となる場合があります。
また、外国人労働者が在留期間を更新するときは、「給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表」を提出書類の1つとして求められることが多いため、必ず顧問税理士に相談しましょう。
1月1日時点で国内に住所がある外国人労働者 (居住者) は住民税(所得割・均等割)の対象となります。
所得税の源泉徴収義務がある給与支払者は、日本人労働者の場合と同様に、毎月の給与から住民税を天引きして市区町村に納入します。
ただし、以下の点に注意が必要です。
①所得や家族の状況、 あるいは租税条約によって住民税が免除される場合があります。
②非居住者は課税対象外です。
③1月1日~5月31日に退職・帰国する場合は、最後に支給する給与や退職金から5月分までの住民税を一括徴収します。6月1日~12月31日に退職・帰国する場合は普通徴収に切り替えますが、本人の申出があれば残りの住民税を一括徴収することもできます。
原則として、適用事業所の従業員で、一定の要件を満たす場合は、国籍・性別に関係なく加入しなければなりません。
採用から5日以内に、事務センターや所属する健康保険組合等に「健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届」を提出しましょう。
国籍を問わず日本国内の労働者全てに適用されます。
就労可能な在留資格で就労していれば、 一部の例外を除き国籍を問わず被保険者になります。
厚生年金保険の被保険者資格を喪失し、日本に住所を有しなくなった外国人は、一定の要件のもと、定められた割合の脱退一時金を日本年金機構に請求できます。
手続きは外国人本人または委任を受けた代理人が行いますが、あらかじめ制度について説明しておきましょう。