令和7年分(2025年分)の所得税の確定申告期間は、
令和8年2月16日(月)〜3月16日(月)の予定です。
特に、個人事業主の方や不動産オーナーの方は、
「必要な書類が見つからない」「ギリギリになって慌ててしまう」といったことにならないよう、
早めの準備がおすすめです。
▶ 申告期間中は税務署・税理士事務所ともに大変混み合います。
1〜2月上旬の比較的余裕のある時期に、帳簿・領収書・各種控除証明書などの整理を進めておきましょう。
1. そもそも確定申告が必要か確認しましょう
「会社員だから申告は関係ない」とお考えの方でも、
副業収入や不動産収入、株式の売却や年金受給などがある場合は、
確定申告が必要となるケースがあります。申告をすることで、
医療費控除やふるさと納税(寄附金控除)、住宅ローン控除などの
有利な制度を利用できる場合もあります。
申告が必要となる主なケース(チェックリスト)
以下の項目のうち、ひとつでも当てはまる場合は、確定申告の対象となる可能性があります。
- 個人事業主として、一定の売上・利益があった
- 不動産賃貸(アパート・駐車場・土地など)による地代家賃収入があった
- 各種補助金・助成金・給付金・協力金などの入金があった
- 2か所以上から給与・報酬を受け取っている(副業・ダブルワークなど)
- 公的年金(国民年金・厚生年金・恩給・退職年金など)を受け取っている
- 講演料・原稿料などの臨時収入があった
- 金融機関以外から利子等を受け取った
- 生命保険・火災保険などの満期・解約・保険金の受け取りがあった
- 株式・投資信託・ゴルフ会員権・暗号資産などを売却した
- 山林の伐採・譲渡など、特殊な資産取引があった
※上記は一例です。詳細は個別のご状況により異なりますので、
該当する項目がある場合はお早めに当事務所までご相談ください。
2. 令和7年分からの「基礎控除」の見直し
所得税の計算にあたっては、すべての方に共通して差し引かれる「基礎控除」があります。
令和7年分の所得税では、合計所得金額が2,350万円以下の方について、基礎控除額が次のとおり見直されています。
| 合計所得金額 |
基礎控除額 |
| 132万円以下 |
95万円 |
| 132万円超 336万円以下 |
88万円 |
| 336万円超 489万円以下 |
68万円 |
| 489万円超 655万円以下 |
63万円 |
| 655万円超 2,350万円以下 |
58万円 |
| 2,350万円超 2,400万円以下 |
48万円 |
| 2,400万円超 2,450万円以下 |
32万円 |
| 2,450万円超 2,500万円以下 |
16万円 |
| 2,500万円超 |
0円(基礎控除なし) |
※「合計所得金額」とは、その年に得たすべての所得(事業所得・不動産所得・給与所得・配当所得など)を合計した金額です。
※ご家族の所得状況によっては、配偶者控除・配偶者特別控除・扶養控除などの適用範囲も変わるため、
早めにそれぞれの収入額を確認しておくことが大切です。
3. 所得控除を漏れなく活用するためのポイント
次のような支出や出来事があった場合、確定申告をすることで税金が軽減される可能性があります。
医療費・セルフメディケーション税制
- 1年間の医療費の自己負担額が、原則10万円(または総所得金額の5%)を超えた場合は、医療費控除の対象となる可能性があります。
- スイッチOTC医薬品など、一定の市販薬の購入が年間12,000円を超えた場合は、
セルフメディケーション税制の適用を検討します(医療費控除との選択適用)。
- 保険金・給付金・共済金などで補填される金額がある場合は、その金額も把握しておく必要があります。
災害・盗難・横領などによる損失(雑損控除)
- 地震・豪雨・豪雪・火災・害虫などの災害により自宅や家財に損害を受けた場合
- 盗難・横領などの被害にあった場合
→ 損失の状況をまとめた明細書、罹災証明書・盗難証明書、修繕費用などの領収書、保険金額が分かる書類などが必要になります。
住宅ローン控除・リフォーム減税
- 住宅ローンを利用して、新築・中古住宅を取得した場合
- バリアフリー・耐震改修など、一定の要件を満たすリフォーム工事を行った場合
→ 住宅ローンの年末残高証明書、売買契約書・請負契約書の写し、登記事項証明書、増改築等工事証明書、工事代金の領収書などを揃えておきましょう。
小規模企業共済・iDeCo・生命保険等
- 小規模企業共済への掛金(小規模企業共済等掛金控除)
- 個人型確定拠出年金(iDeCo)の掛金
- 生命保険料(一般・介護医療・個人年金)や地震保険料
- 社会保険料(国民年金・国民健康保険・介護保険など)
→ 各種控除証明書(保険会社・共済・金融機関などから送付される書類)を必ず保管しておきましょう。
ふるさと納税・その他の寄附金
- ふるさと納税を行った場合
- 学校・認定NPO法人・政党などへの寄附を行った場合
→ ふるさと納税の受領書や寄附金受領証明書が必要です。ワンストップ特例を利用している場合でも、
場合によっては確定申告をした方が有利になるケースもあります。
4. 事前に揃えておきたい主な書類
(1)所得計算に必要な書類
- 会計帳簿(現金出納帳・売上帳・仕入帳・経費帳など)
- 売上・収入の資料(請求書控、売上日報、支払調書、賃貸借契約書、収入管理表など)
- 経費の資料(領収書、請求書、クレジットカード明細、固定資産税納付書など)
- 給与所得の源泉徴収票、公的年金等の源泉徴収票
- 株式・投資信託等の特定口座年間取引報告書、配当金計算書
- 不動産や資産の売却に関する売買契約書、登記事項証明書、取得価額や譲渡費用が分かる資料
(2)所得控除に必要な書類
- 各人の所得が確認できる源泉徴収票など
- 社会保険料控除証明書
- 小規模企業共済掛金控除証明書、iDeCo掛金の控除証明書
- 生命保険料控除証明書(一般・介護医療・個人年金)
- 地震保険料控除証明書
- 医療費通知書、領収書、保険金等の補填額が分かるもの
- 寄附金の受領書(ふるさと納税を含む)
- 災害・盗難等の損失額明細書、罹災証明書・盗難証明書、関連支出の領収書
- 住宅ローン年末残高証明書、住宅の売買契約書・請負契約書、登記事項証明書、工事証明書など
5. 確定申告までの流れ(3ステップ)
- 1. 収入の洗い出し
事業収入・不動産収入・給与・年金・株式や保険の売却益など、1年間の収入を漏れなく確認します。
- 2. 経費・控除の整理
経費に関する領収書や明細、医療費控除・寄附金控除・住宅ローン控除などに関する書類を分類・整理します。
- 3. 帳簿の確認とご相談
帳簿と資料の内容に不明点がないかをチェックし、早めに税理士に相談することで、
税額の試算や節税の検討、資金繰りの見通しづくりがスムーズになります。
6. チェックリスト(ダイジェスト)
- 申告が必要となる収入がないか確認した
- ご自身・ご家族の年間所得金額の見込みを把握した
- 帳簿・売上資料・経費資料を揃えた
- 源泉徴収票、各種控除証明書(保険・共済・iDeCo等)を保管した
- 医療費通知・領収書、ふるさと納税の受領書などを整理した
- 住宅ローン控除・リフォーム減税の対象となる書類を揃えた
- 災害・盗難などの被害があれば、その記録と証明書を確保した
- 不明点・気になる点をメモにまとめ、税理士に相談する準備をした
事務所通信を参照して作成。
