2026年1月1日より、「中小受託取引適正化法(取適法)」が施行されます。これまで「下請法」として知られていた法律が改正され、新たに「取適法」として生まれ変わりました。本記事では、税理士事務所の視点から、取適法の概要や中小企業が押さえておくべきポイントをわかりやすく解説します。中小企業の方はもちろん、取引先との業務委託を行う事業者の方も必見です!
取適法は、取引における「優越的地位の濫用」を防ぐことを目的とした法律です。特に、中小企業が大企業との取引で不利益を被らないよう、公正な取引環境を整備するための規制が盛り込まれています。適用対象となるかどうかは、以下の2つの基準で判断されます。
これらの基準を満たす場合、発注者(委託事業者)が「優越的地位にある」とみなされ、取適法の規制が適用されます。以下では、具体的な取引内容と基準について詳しく見ていきましょう。
取適法では、以下の5つの取引が対象として定められています。それぞれの取引について、具体例を交えて解説します。
物品の製造や加工を他の事業者に委託する取引です。発注者が規格、品質、形状、デザインなどを指定して製造を依頼する場合が該当します。
例:自動車メーカーが部品メーカーに自動車部品の製造を委託する。
物品の修理を請け負う事業者が、その修理作業の一部または全部を他の事業者に委託する取引です。また、自社使用物品の修理を外部に委託する場合も含まれます。
例:自動車販売業者が顧客から依頼された修理作業を専門の修理業者に委託する。
ソフトウェアや映像コンテンツ、デザインなどの情報成果物の作成を他の事業者に委託する取引です。情報成果物には以下が含まれます。
例:広告会社がCM制作を専門の制作会社に委託する。
運送やビルメンテナンスなどのサービス提供を他の事業者に委託する取引です。ただし、建設業法に基づく建設工事は対象外です。
例:ビル管理業者がビルの警備業務を警備会社に委託する。
販売・製造・修理・情報成果物の作成を請け負った物品について、取引先(または取引先が指定する者)への運送を他の事業者に委託する取引です。
例:家具小売業者が販売した家具の配送を運送業者に委託する。
取適法の適用対象となる取引は、取引内容だけでなく、発注者(委託事業者)と受託者(中小受託事業者)の資本金または従業員数の規模によっても決まります。以下は基準の概要です。
以下のいずれかの基準を満たす場合、取適法の対象となります。
上記と同じ基準が適用されます。
以下の基準が適用されます。
【ポイント】取引の種類や企業規模によって基準が異なるため、自社の取引が取適法の対象となるかどうかを慎重に確認することが重要です。公正取引委員会や中小企業庁のガイドブック(公正取引委員会、中小企業庁)も参考にしてください。
取適法の適用対象となる場合、発注者(委託事業者)には以下の義務が課されます。
中小企業としては、自社が受託者側の場合、取引先がこれらの義務を遵守しているかを確認することが重要です。また、発注者側の場合には、取適法違反とならないよう、契約内容や取引条件を見直す必要があります。
取適法の適用対象となるかどうかは、取引内容や企業規模によって複雑に判断されます。
取適法への対応は、単なる法令遵守にとどまらず、取引先との信頼関係を築くためにも重要です。ぜひ当事務所にご相談ください!
【参考文献】公正取引委員会・中小企業庁「中小受託取引適正化法ガイドブック 『下請法』は『取適法』へ ~知っておきたい制度改正のポイント~」