事業が順調に拡大してくると、多くの個人事業主様が直面するのが「いつ法人化すべきか?」という悩みです。早すぎればコストの無駄になり、遅すぎれば節税の機会を逃してしまう可能性があります。
この記事では、法人化(法人成り)を検討すべき具体的なタイミングや、判断の基準となる目安、そして最新のインボイス制度を踏まえた注意点について、澤田匡央税理士事務所が解説します。
法人化を検討すべき3つの主なタイミング
法人化のタイミングは「利益(所得)」「売上高」「社会的信用」の3つの視点から判断するのが一般的です。
1. 課税所得(利益)が800万円〜900万円を超えたとき
最も大きな判断基準となるのが「税金の負担」です。個人事業主にかかる「所得税」は、所得が増えるほど税率が高くなる超過累進税率(5%〜45%)を採用しています。
一方、法人にかかる「法人税」の税率は一定の範囲で固定されています(中小法人の場合、年800万円以下の部分は約15%、超える部分は約23.2%など)。
一般的に、個人の課税所得が800万円〜900万円を超えると、法人税の実効税率の方が低くなり、節税メリットが出やすくなると言われています。
2. 課税売上高が1,000万円を超えたとき(消費税対策)
2年前の課税売上高が1,000万円を超えると、その年は消費税の課税事業者となります。しかし、法人化(資本金1,000万円未満で設立)することで、設立から最大2年間は消費税の納税義務が免除される特例があります。
2023年10月より開始されたインボイス制度により、設立1年目から適格請求書発行事業者として登録する場合、消費税の免税メリットを受けられないケースがあります。取引先が一般消費者メインか、企業メインかによって判断が分かれるため、慎重な検討が必要です。
3. 社会的信用や人材採用が必要になったとき
節税以外の面でも、法人化には大きな意味があります。大手企業との取引において「法人であること」が条件となる場合や、銀行からの融資の受けやすさ、求人を出した際の応募者の安心感などは、法人の方が圧倒的に有利です。
法人化のメリット・デメリット比較
法人化は必ずしもメリットばかりではありません。事務負担やコストの増加も考慮する必要があります。
| 項目 | 個人事業主 | 法人(株式会社・合同会社) |
|---|---|---|
| 税金の種類 | 所得税(累進税率) | 法人税(比例税率) |
| 経費の範囲 | 限定的 | 広い(役員報酬、社宅、生命保険など) |
| 赤字の繰越 | 3年間 | 10年間 |
| 社会保険 | 任意(従業員5人未満など) | 強制加入(社長1人でも) |
| 設立費用 | 0円(開業届のみ) | 約20〜25万円(株式会社の場合) |
| 交際費 | 事業に関連すれば全額 | 原則、年間800万円まで(中小法人) |
知っておくべき「見えないコスト」
法人化すると、たとえ赤字であっても「法人住民税の均等割(最低でも年間約7万円)」の支払い義務が発生します。また、社会保険(健康保険・厚生年金)への加入が義務付けられ、会社負担分の保険料が新たなコストとして発生します。
さらに、決算申告の手続きが複雑になるため、税理士への報酬も個人事業主時代より高くなる傾向があります。
まとめ:あなたの事業にとって最適なタイミングは?
法人化の最適なタイミングは、単に「所得がいくらになったから」という基準だけで決めるものではありません。
- 今後の事業拡大プラン
- 家族構成や役員報酬の設定額
- 主な取引先の属性(インボイス対応の必要性)
- 社会保険料の負担増と税金削減額のバランス
これらを総合的にシミュレーションする必要があります。








