令和7年分の年末調整は、「年収の壁」の見直しにより、所得税の還付を受ける方が大幅に増加する見込みです。
従業員本人だけでなく、配偶者や扶養親族の年収・年齢も例年より厳密に確認する必要があります。
「去年と同じ」では絶対にNG!今すぐポイントを最終確認しましょう。
まずは基本をおさらい!「年収」と「給与所得」の違い
年末調整の申告書を従業員に説明する際、混同しやすいこの2つの概念を正しく理解しておくことが重要です。
| 項目 |
内容 |
| 年収(年間給与収入) |
1月1日~12月31日までの1年間に会社から支払われる総支給額(税金・社会保険料控除前) |
| 給与所得 |
年収から「給与所得控除」(必要経費相当)を差し引いた金額
※給与所得のみの場合、給与所得=合計所得金額 |
税額計算の仕組み(フローチャート)
年収(年間給与収入)
↓ - 給与所得控除
給与所得
↓ - 所得控除(基礎控除・配偶者控除など)
課税所得
↓ × 税率(所得に応じて5%~45%)
所得税額
※必要に応じて税額控除を適用
年末調整に必要な申告書一覧(資料1)
従業員から提出を受ける主な書類は以下の通りです。特に★印の書類は「年収の壁」見直しと密接に関連します。
- ◎ 扶養控除等(異動)申告書
- ★ ◎ 基礎控除申告書
- ★ ◎ 配偶者控除等申告書
- ★ ● 特定親族特別控除申告書 (令和7年新設)
- ◎ 所得金額調整控除申告書
- ● 保険料控除申告書
◎:必須提出書類(該当者のみ)
●:任意提出書類(控除適用希望者のみ)
★:「年収の壁」見直しにより特に注意が必要な書類
申告書別チェックポイント(下図に基づく)

1. 基礎控除申告書(従業員本人)
- 「合計所得金額の見積額」欄:給与所得控除の最低保障額が55万円 → 65万円に引き上げ。計算ミスに注意!
- 「基礎控除の額」欄:控除額計算表が昨年と変更。合計所得金額に応じた控除額を正しく適用。
2. 配偶者控除等申告書(配偶者)
- 「配偶者の合計所得金額の見積額」欄:配偶者の年収が昨年と同額でも、給与所得控除増で所得が減少 → 控除額が増える可能性大!
- 「配偶者控除の額」または「配偶者特別控除の額」欄:基礎控除申告書の「区分Ⅰ」・配偶者控除等申告書の「区分Ⅱ」に基づき、正しい金額か確認。
重要:配偶者の年収が133万円以下でも、控除対象となるケースが拡大!
給与所得控除の最低保障額65万円により、従来「年収の壁」だった130万円超でも控除が受けられる可能性があります。
3. 特定親族特別控除申告書(大学生世代の子等)
令和7年度税制改正の目玉!
| 改正内容 |
改正前 |
改正後 |
| 特定扶養控除の年収要件 |
103万円以下 |
123万円以下 (合計所得58万円以下) |
| 新設制度 |
― |
特定親族特別控除 (年収123万円超~188万円以下) |
- 「特定親族特別控除の額」欄:合計所得金額58万円超~123万円以下で段階的に控除(最大63万円)
- 年齢確認必須:19歳以上23歳未満(平成15年12月生まれ~平成19年1月1日生まれ)
実務担当者が絶対に押さえるべきポイント
- 従業員への周知徹底:「去年と同じ」はNG!特に配偶者・子どもの年収証明書類を再提出させる。
- 年齢確認の徹底:特定親族特別控除は年齢要件が厳格。生年月日を必ず確認。
- 給与システムの更新:給与所得控除65万円最低保障への対応を完了させる。
- 還付シミュレーション:該当者に事前連絡し、追加書類の提出を促す。
まとめ:今年の年末調整は「確認の年」
「年収の壁」見直しにより、所得税還付対象者が大幅に増加する令和7年分年末調整。
給与所得控除の最低保障額65万円への引上げ、特定親族特別控除の新設など、従業員・配偶者・扶養親族の年収・年齢確認が例年以上の重要度を帯びています。
「去年と同じ」では絶対にNG!
今すぐ申告書のチェック体制を見直し、従業員への周知を徹底しましょう。