貸借対照表(B/S)の「資産の部」に表示される固定資産。その中でも、「投資その他の資産」は長期保有を目的とした資産であり、資金繰りや事業承継に大きな影響を与える可能性があります。この記事では、「投資その他の資産」の内容や管理のポイントを詳しく解説し、貴社の財務戦略を強化する方法をご紹介します。
貸借対照表の固定資産は、以下の3つに分類されます:
「投資その他の資産」は、会社の本業とは直接関係しない、将来の価値を見越して保有する資産です。具体的には以下のような項目が含まれます:
これらの資産は「すぐに現金化しにくい(流動性が低い)」という特徴があり、資金繰りに影響を与える可能性があります。
資金繰りを考える際、理想的な貸借対照表は「現金」「預金」「売掛金」など、すぐに現金化できる流動資産が多い状態です。しかし、「投資その他の資産」が多くを占めると、以下のようなリスクが生じます:
特に、バブル期に取得した投資不動産やゴルフ会員権などは、価値が大きく下落している場合があります。これらの資産は定期的に見直し、必要に応じて整理・売却を検討することが重要です。
「投資その他の資産」は原則として取得価額で計上されますが、市場価値の変動により「含み益」や「含み損」が発生します。
価値が上昇した資産は「含み益」を生み、以下のようなメリットがあります:
しかし、含み益は未実現の利益であり、売却しない限り現金にはなりません。株式など市場価格が変動する資産は、含み益が一転して含み損になるリスクもあります。適切なタイミングでの売却が重要です。
価値が下落した資産は「含み損」を生み、資金繰りや事業承継に悪影響を及ぼす可能性があります。含み損を抱える資産は、損失を確定させる形で売却することも検討しましょう。
貸借対照表の「資産の部」は、現金化しやすい順に上から並んでいます。流動資産(現金預金、売掛金など)が上部に、投資その他の資産が下部に位置するため、流動性の低さが一目瞭然です。以下の6つの視点から「投資その他の資産」をチェックしましょう:
チェックポイント | 詳細 |
---|---|
経理処理は適切か? | 資産計上すべき金額は税法で規定されています。適切な処理を確認しましょう。 |
本当に必要な資産か? | 価値が大きく下落した資産や過大な投資は、整理・売却を検討しましょう。 |
すぐに現金化できるか? | いざというときに売却できるかどうかが重要です。 |
含み損が出ていないか? | 放置せず、処分を検討しましょう。 |
含み益を過信していないか? | 価値下落のリスクを考慮しましょう。 |
回収可能性はあるか? | 債権は実際に回収可能か確認しましょう。 |
「投資その他の資産」に含まれる保険積立金や長期前払費用は、税務上の処理が複雑です。以下に注意点をまとめます:
養老保険や終身保険など貯蓄性のある保険の場合、支払った保険料のうち貯蓄部分は「保険積立金」として資産計上されます。特約など損金算入可能な部分は「保険料」や「厚生費」として処理します。
火災保険など長期契約で一括払いした保険料は「長期前払費用」として資産計上し、期間に応じて費用配分します。定期保険の生命保険料も、契約期間や加入者の年齢によって損金算入の可否が異なり、損金にならない場合は「長期前払費用」として処理します。
自社株式の評価額が高くなると、相続時の税負担が増大する可能性があります。定期的に自社株式の評価を行い、計画的な贈与や譲渡、特例事業承継税制の適用を検討しましょう。これにより、後継者の税負担を軽減し、スムーズな事業承継を実現できます。
「投資その他の資産」は、会社の将来を見据えた重要な資産ですが、流動性が低いため資金繰りや事業承継に影響を与える可能性があります。年1~2回の定期的なチェックを行い、以下のアクションを検討しましょう:
当税理士事務所では、貴社の貸借対照表の分析や資産管理の最適化をサポートします。資金繰りや事業承継でお悩みの場合は、ぜひお気軽にご相談ください。