商品、製品、 仕掛品、 原材料等の棚卸資産は、会社の資金が形を変えた大切な財産。
知らぬ間の消失や陳腐化、破損は財産の喪失であり、経営に大きな影響を及ぼします。
そのため、定期的な 実地棚卸による在庫管理は必須。 「棚卸」 の重要性をあらためて考えてみましょう。
「棚卸」は、会社が保有する棚卸資産 (商品、 製品、仕掛品、原材料等) を数えて正確な数量や 品質を確認する作業です。「棚卸」は、次のような観点から正しく行うことが求められています。
・正確な決算書の作成
・適切な在庫管理
・適正な税務申告
損益計算書は、「費用収益対応の原則」に従って作成されなければなりません。
当期に仕入れた商品・製品等でも来期以降の売上に対応するのであれば、当期の売上原価にはならず、期末在庫 (棚卸資産) となります。
当期の売上高に対応する売上原価を計上することによって正しい損益を計算できます。
その結果、資産や利益が正確に決算書に表示されるのです。
商品等の帳簿上の数量は、 商品受払帳等で把握することができます。
実地棚卸によって実際の数量を確認し、 帳簿上の数量との誤差を確認し、正確な期末在庫の数値を確定させます。
実地棚卸は、単なる 「数の確認」に留まりません。
過剰在庫や不足在庫、商品等の破損・ 紛失等を発見することができる絶好の機会でもあります。
発注量の調整や不良在庫の処分等、適切な在庫管理のために必要な情報を得ることができます。
過剰在庫は資金を寝かせることにつながります。
不良在庫は商品価値が下がり、 値下げや廃棄処分ともなれば利益を減少させることになります。
定期的な実地棚卸による在庫管理は、会社の資金繰りを良くするためにも、 また、 予期せぬミスや不正等を防ぐためにも重要です。
「棚卸の計上漏れ=所得の過少申告」 となるため、 税務調査で確認される事項の1つに期末在庫の数量があります。
実地棚卸によって 「社内在庫」は正確に確認できても、 下表の2・3・4ような 「社外在庫」 の確認はもれやすいため注意が必要です。
また、 税務調査においては、下表の5の視点からも期末在庫の正確性が検証されることになります。
なお、 故意に水増しされた在庫の金額を取り崩し、 当期の売上原価として損金の額に算入する行為は、「真正の事実」 に反する税務申告となるため認められません。
適正な税務申告を行う上でも、 正しい期末在庫の把握は欠かせません。
決算時に正しく期末在庫 (特に数量)を把握するための5つのポイント
1.在庫の実際の数量と帳簿上の数量は一致していますか?
在庫の実際の数量と帳簿上の数量が一致しないときは、その原因を確かめます。原因として、入出庫時の記入ミ ス、現品の紛失・誤廃棄、品違いが考えられます。 無断出庫や横流しの懸念も。
2.社外の倉庫や取引先に自社の材料や製品を預けていませんか?
社外の倉庫や取引先で保管されている製品等についても、 決算日に棚卸資産として計上する必要があります。保管先から 「保管証明書」等を発行してもらいましょう。
3.すでに仕入計上されているもので、 まだ自社に届いていない商品 (未着商品) はありませんか?
未着商品は、所有権が移転した時点、 例えば、 貨物代表証券(貨物引換証や船荷証券)を受け取った時点で、棚卸資産 として計上します。
4.決算日時点で得意先に未着または未検収の製品等はありませんか?
売上計上のタイミングを納品基準や検収基準としている場合、発送した製品等が決算日時点で得意先に未着または未検収であれば、その製品等は棚卸資産として計上します。
5.決算日間際の仕入や売上はありませんか?
決算日間際の商品の受け渡しには注意が必要です。 決算日間際に仕入れた商品について、その商品がまだ売上となっていない場合は、期末在庫となり棚卸資産として計上する必要があります。