事例で確認!「短期前払費用の特例」を適用できる・できないケース
日々の業務の中で生じる、経理処理にまつわる迷いやギモン、誤解についてあらためて確認していくシリーズです。今回のテーマは「短期前払費用の特例」。一定のルールのもと、支払時に一括して費用計上が認められるものを「短期前払費用」といいます。
実務では、「短期前払費用の特例」の適用可否について注意すべきケースがありますので、事例で確認しておきましょう。
Case① 自動車のリース料(1年分)の前払い
- 7月決算法人 (中小企業)
- 5年契約の営業用自動車のリース(オペレーティング・リース) について向こう1年分(7月から翌年6月)のリース料48万円を7月下旬に前払いして、「リース料」として処理した。
キホンの
考え方!
継続的に1年以内に受けるサービスのための支払いである―――――といったことから、翌期以降の継続適用を条件として、「短期前払費用の特例」を適用して、支払った期(当期)に一括で費用処理することが可能です。
Case② 毎月の事務所家賃の処理
- 3月決算法人
- 事務所家賃は毎月、月末に翌月分を支払っており、支払時に、「地代家賃」として処理している。3月末に支払った翌月分(4月分)の家賃についても、当期の「地代家賃」として費用処理した。
キホンの
考え方!
原則として、3月に支払った翌月分の家賃は、翌期の費用であるため「前払費用」とする処理が求められます。
ただし、支払時に「地代家賃」とする処理を継続して適用しているのであれば、当期に費用処理することが認められています。
Case③ 事務所の火災保険料 (3年分)の前払い
- 5月決算法人
- 事務所の建物について、5月から3年間の火災保険契約を結び、3年分の火災保険料30万円を5月に前払いし、全額を当期の「支払保険料」として処理した。
キホンの
考え方!
1年を超えた期間である3年分の火災保険料を全額前払いしているので、支払時に全額を費用処理することはできません。
その火災保険料は3年間にわたって費用処理する必要があり、当期は1か月分だけ「支払保険料」として費用処理します。
Case④ 複合機の保守点検料(年額)の前払い
- 7月決算法人
- 事務所の複合機(事務機器)の保守点検契約(3年間)を結び、翌期の8月から翌年7月までの保守点検料6万円を6月に前払いして、当期の「修繕費」として処理した。
キホンの
考え方!
決算月でない6月に前払いした保守点検料は、8月から翌年7月までの1年間分のものであり、支払った日から1年を超えて提供されるサービスとなるため、「短期前払費用の特例」を適用することができません。当期は「前払費用」として処理し、翌期に費用処理することが求められます。
Case⑤ 経営セーフティ共済の掛金の1年分前納
- 7月決算法人
- 5月に経営セーフティ共済に加入し当期分の掛金30万円を支払い、決算月に翌期分(8月から翌年7月分)の掛金120万円を支払い、全額を当期の「支払保険料」として費用処理した。
キホンの
考え方!
経営セーフティ共済の掛金※は、「短期前払費用の特例」規定とは別に、掛金を支払時に費用計上できる特例措置があります。ただし前納期間が1年以内の場合に限り認められています。そのためこの例では、全額費用処理が認められます。
※(独)中小企業基盤整備機構が行う中小企業倒産防止共済事業の基金に充てるための共済契約に係る掛金。








