中小企業や個人事業主の経営は、多くの場合「社長の健康」と「社長個人の信用力」に大きく依存しています。
そのため、突然の病気・事故・死亡などの不測の事態が起きると、売上の減少や資金繰りの悪化を通じて、
事業そのものが揺らいでしまうリスクがあります。
中小企業庁の「事業承継ガイドライン」等でも、経営者の高齢化・健康不安は
事業継続上の大きな課題として指摘されています。
こうしたリスクに備える有効な手段が「企業防衛のための生命保険」と「公的な共済制度」です。
当事務所では、特定の商品に偏らず、税務・財務の観点から「会社を守るための適正な備え」についてアドバイスを行っています。
例えば、創業25年の製造業を営む社長Aさん(60歳)が、ある日突然、脳梗塞で倒れ、
長期入院・リハビリが必要になったとします。
主要な取引先との交渉や銀行対応、資金繰りはすべて社長が担っていたため、以下のような事態が発生しました。
これらは決して珍しい話ではありません。十分な内部留保(現預金)がなければ、
黒字経営であっても、わずか数か月で資金ショート(倒産)に直結してしまうリスクがあります。
※上記は一般的なリスク事例をイメージ化したものです。
経営者に万一のことがあったとき、会社が直面するリスクは大きく4つに分類されます。
多くの生命保険会社(大同生命など)や法人会・商工会議所では、
中小企業の経営特性に合わせた「企業防衛」のための保険商品を用意しています。
個人の保険とは異なり、あくまで「法人の財務を守る」ことが目的です。
経営者が死亡または高度障害状態になった際に保険金を受け取り、以下の資金に充当します。
一般的に、これらの必要額を算出したものを「標準保障額」と呼び、
「借入金残高 + 運転資金(月商の6ヶ月分~1年分)」などが目安とされます。
「死なないリスク」への備えです。社長が働けない期間、
会社の売上減少をカバーするための毎月の給付金や、
社長自身の治療費・生活費を会社経費ではなく保険金で賄う仕組みを作ります。
将来の社長の退職金を計画的に準備するために活用されます。
ただし、近年の税制改正(2019年の法人税基本通達改正など)により、
「節税(全額損金)」を主目的とした保険加入のメリットは限定的になっています。
現在は税務メリットよりも、「確実にキャッシュを用意する(財務強化)」という視点が重要視されています。
民間の保険だけでなく、国(中小企業基盤整備機構など)が用意している公的なセーフティネットを組み合わせることで、
コストを抑えながら強固な防御壁を作ることができます。
取引先が倒産した際、積み立てた掛金の10倍(上限8,000万円)まで無担保・無保証人で借入れができる制度です。
掛金は全額損金(経費)に算入できるため、利益が出ている時の節税と資金積立を兼ねて利用する企業が多いですが、
近年の税制改正に注意が必要です。
中小企業庁が所管する制度で、取引先の倒産や災害、金融機関の破綻などにより
経営の安定に支障が生じている場合、信用保証協会の保証枠を「別枠」で利用できる仕組みです。
有事の際の資金調達手段として覚えておくべき制度です。
「昔に入ったまま放置している」「言われるがままに加入した」という保険はありませんか?
税務・財務の視点から、以下のポイントを定期的にチェックしましょう。
特定の保険会社の商品に偏らず、
「企業防衛」と「財務体質の強化」の観点から、
中立的にアドバイスいたします。
※本記事は情報提供を目的としており、特定の商品を勧誘するものではありません。
※保険商品の詳細や契約内容については、各保険会社のパンフレットや約款をご確認ください。
※税務上の取扱いは、法改正により変更される場合があります。最新情報は顧問税理士等にご確認ください。