給料の支払いや原材料の購入、新設備の導入をする際などに必要な「キャッシュ」。
そのキャッシュが増えているか、減っているか、いくらあるかを簡単に把握できる「キャッシュ・フロー計算書」の見方を解説します。
会社の経営にとってキャッシュ (現金・預金) は、人間の体でいう血液に相当します。人が貧血になれば倒れてしまうように、会社のキャッシュが少なくなれば企業活動は停滞し、倒産ということにもなりかねません。
会社のキャッシュを増やしていくことは、 会社の経営を安定させるとともに、将来への 投資を自己資金で行えるなど、経営の自由度 が増すことにもつながります。 キャッシュが生み出されているかを確認するためには、キャッシュ・フロー計算書を見てみましょう。
下表はキャッシュ・フロー計算書のサンプルです。キャッシュ・フロー計算書では、定期間のキャッシュ・フローが次の3つに分類されます。
そして、それぞれの活動でキャッシュがどれだけ増減し、 最終的にどれだけ残ったのかが表示されます。
Ⅰ 営業活動によるキャッシュ・フロー | |
1.税引き前当期純利益 | ✕✕✕✕✕✕ |
2.減価償却費 | ✕✕✕✕✕✕ |
3.棚卸資産の増加/減少 | ✕✕✕✕✕✕ |
4.売掛金・受取手形の増加/減少 | ✕✕✕✕✕✕ |
5.買掛金・支払手形の増加/減少 | ✕✕✕✕✕✕ |
Ⅱ 投資活動によるキャッシュ・フロー | |
1.固定資産の取得/売却 | ✕✕✕✕✕✕ |
2.有価証券の取得/売却 | ✕✕✕✕✕✕ |
Ⅲ 財務活動によるキャッシュ・フロー | |
1.借入金の調達/返済 | ✕✕✕✕✕✕ |
合計 (現金及び現金同等物の当期増減) | ✕✕✕✕✕✕ |
現金及び現金同等物の期首残高 | ✕✕✕✕✕✕ |
現金及び現金同等物の期末残高 | ✕✕✕✕✕✕ |
会社のキャッシュを増やすためには、減価償却前の当期純利益がプラスであることが最低条件になります。これがマイナスの場合、経費の使い過ぎで貧血状態を引き起こしています。支出の中身を吟味しましょう。
キャッシュの循環を良くするためには、売掛金の回収はできるだけ早く、買掛金の支払いはできるだけ遅くすることが大切。売掛金を回収してから買掛金を支払うサイクルを確立できれば、どれだけ売上を伸ばしていってもキャッシュ不足には陥りません。反対に、買掛金の支払いが先行するサイクルでは、たちまちキャッシュ不足を招いてしまいます。
また、在庫と売掛金はキャッシュが滞留しやすいところです。特に在庫は昨今の原価高の影響で増える傾向にありますが、管理を徹底し、キャッシュの滞留を最小限に食い止めましょう。
将来の収益の確保のためには、固定資産等の設備投資も不可欠です。設備投資にはキャッシュの社外流失を伴いますので、自社ではどの程度までの先行投資が可能なのかを慎重に見極めましょう。
会社で保有している資産に遊休資産や投資有価証券があれば、売却することでキャッ シュの増加が見込めます。
不要不急の投資によるキャッシュの社外流 失がないようにしましょう。
財務活動によるキャッシュ・フローの中心は、金融機関からの借入れになります。
金融機関からの借入れは、大きく設備資金融資と運転資金融資に分けられます。
設備資金融資は、「Ⅱ 投資活動によるキャッシュ・フロー」の不足分を補うために受けますが、固定資産等の購入資金として出ていくため、社内に残りません。返済期間が固定資産の減価償却期間よりも短いと、キャッ シュ不足を招いてしまうおそれがあります。
運転資金融資は、営業活動の回収・支払サイクルのギャップを埋めるため、あるいは一時的な在庫増加の資金捻出のために受けます。最終的には、「Ⅰ 営業活動によるキャッシュ・フロー」をプラスにして返済原資を確保しなければなりません。 回収・支払サイクルの改善に着手できなかったり、慢性的な赤字が続いていたりする場合、借入金を返済する原資を新たな借入金でまかなう「借金依存体質」から抜け出すことができなくなります。
自社のキャッシュ・フロー計算書を見なが ら、あらためて最近の経営状況を思い返し、今期、来期の資金計画に活かしてみましょう。