中小企業にとって、売掛金の管理は資金繰りや経営の安定に直結する重要な課題です。しかし、「これまでの付き合いがあるから」と情に流され、支払い遅延への対策を後回しにしてしまうケースも少なくありません。この記事では、売掛金の管理と回収のポイントを解説し、巡回監査で社長と一緒に確認すべき事項をご紹介します。売掛金の適切な管理を通じて、経営の健全化を目指しましょう!
売掛金の未回収は、企業にとって単なる金額以上の大きな影響を及ぼします。商品やサービスを提供する際、原材料費や人件費などのコストはすでに支払われているため、売掛金が回収できないとその分の負担が企業に重くのしかかります。
具体例: 営業利益率5%の商品で、50万円の売掛金が回収できなかった場合、直接的な損失は50万円ですが、この損失を補うには1,000万円(50万円 ÷ 5%)の売上を新たに上げる必要があります。売掛金の未回収は、企業の資金繰りを圧迫し、成長の足かせとなるのです。
売掛金の管理と確実な回収は、持続可能な経営の基盤を築くために不可欠です。巡回監査の際には、未回収の売掛金の状況を社長と確認し、早めに対策を講じることが重要です。
売掛金の管理を効果的に行い、回収を確実にするための実践的なポイントを以下にまとめました。
「月末締め」といっても、得意先ごとに「翌月末払い」「翌々月末払い」など取引条件が異なる場合があります。請求の締日、支払期日、送料や振込手数料の負担など、取引条件を明確にし、得意先と認識の齟齬がないようにしましょう。条件が曖昧だと、支払い遅延の原因になりかねません。
売上計上の遅れや請求書発行の遅延、誤ったクレーム対応などが、売掛金の回収遅延を引き起こすことがあります。これを防ぐには、以下の対策が有効です。
事務的なミスを減らすことで、回収遅延のリスクを最小限に抑えられます。
支払いが遅れている得意先には、営業担当者が直接出向き、遅延の理由を確認し、支払日の確約を得ることが重要です。この対応は、企業としての売掛金回収への姿勢を明確にするものでもあります。
長期間未回収の売掛金は、消滅時効(5年)に注意が必要です。ただし、民法上の「時効の更新」や「時効の完成猶予」の手続きを活用することで、時効の進行を防ぐことができます。
時効に近づく売掛金がある場合、早めに専門家に相談し、適切な手続きを進めましょう。
売掛金の回収が困難になった場合、決算時に貸倒損失または貸倒引当金として計上します。「中小企業の会計に関する基本要領」(2012年2月1日、中小企業の会計に関する検討会)では、以下の通り定められています。
適切な会計処理を行うことで、財務状況を正確に把握し、税務上のリスクを軽減できます。巡回監査時には、売掛金の状況を確認し、必要に応じて貸倒引当金の設定を検討しましょう。
売掛金の管理は、単なる事務作業ではなく、企業の資金繰りと成長を支える重要な経営課題です。巡回監査を活用して、社長と一緒に売掛金の現状を確認し、取引条件の明確化、事務ミスの改善、支払遅延への積極的な対応、時効への注意を徹底しましょう。また、貸倒損失や貸倒引当金の適切な会計処理を行うことで、財務の健全性を保つことができます。
当事務所では、巡回監査を通じて売掛金管理のサポートを行っています。売掛金の回収や会計処理でお悩みの方は、ぜひお気軽にご相談ください。貴社の経営をより強固なものにするために、全力でサポートいたします!