2025年10月号 | 税理士事務所通信
期末まであと2か月。経営計画に基づいた「総仕上げ」を実践し、黒字決算を目指しましょう。本記事では、居酒屋経営の事例をもとに、効果的な決算対策と業績改善のポイントを解説します。『事務所通信』2025年7月号「期の『折り返し』は業績改善のチャンス!(実践編2)」の続編として、具体的なアクションとその成果を紹介します。
11月決算の居酒屋を営む田中社長は、佐藤巡回監査士とともに9月までの業績を振り返り、期末の着地点を予測しています。残り2か月弱のラストスパートで、どのような戦略を立てればよいのでしょうか?
まずは、「365日変動損益計算書」を活用して、当期の実績、前年同期、計画との比較を行います。以下の表に、田中社長の居酒屋の業績を示します。
項目 | 計画比 | 前年比 |
売上高 | 107% | 112% |
仕入高 | 109% | 113% |
売上高は前年比112%、計画比107%と好調。仕入価格の高騰により仕入高は計画比109%ですが、売上増により限界利益(粗利益)は予算を上回っています。特に、上期で掲げた「1日2万円の売上アップ」を目指したカレーランチのテイクアウト施策が成功。30食限定のテイクアウトは毎日完売し、日替わり具材が顧客に好評でした。
田中社長の声:「暑い夏にカレーは好評で、毎日完売!日替わり具材が『今日は何カレー?』とリピーターを生みました。ただ、価格設定(並盛り500円、大盛り700円)は女性客が多いランチタイムにミスマッチでした。男性客向けの大盛りを想定していたんですが…。でも、ランチ客が夜も来店してくれるようになり、全体の売上アップにつながりました!」
カレーランチのテイクアウトは「独自商品・サービスの健闘」に加え、「リピート顧客の増加」という理想的な成果を生みました。昼の集客が夜の売上にもつながり、事業全体の好循環を生んでいます。佐藤監査士は「価格設定は改善の余地があるものの、素晴らしいチャレンジ」と評価します。
黒字決算が見込まれるため、納税額を予測します。事務所の試算では、消費税が予定納税差し引き後約90万円、法人税・住民税が約45万円の見込みです。田中社長は厨房機器のサブスクサービス(月額2万円)を契約し、経費計上による節税を検討。ただし、佐藤監査士は「納税は事業の成長の証。利益を出し、税金を払うことで資金繰りが安定し、経営の健全性が示されます」とアドバイスします。
ポイント:過度な節税は利益を圧縮し、資金繰りを悪化させるリスクがあります。事業の成長を目指す「前向きな決算対策」を優先しましょう。
事業の成長と従業員のモチベーション向上につながる決算対策を以下にまとめます。
田中社長は来期に向けて、カレーランチをイートインでも提供する計画です。ドリンクとミニサラダをセットにした新価格(並盛り770円、大盛り990円)を設定し、常連客からの要望に応えます。また、主婦パートや学生アルバイトのシフトを増やし、繁忙期の12月も万全の体制を整えます。佐藤監査士は「昼と夜の採算管理やシフト調整が重要」と助言し、経営計画の数字を基にした具体的なアクションを推奨します。
経営計画は、毎月の実績と照らし合わせることで真価を発揮します。期末の「総仕上げ」では、業績の振り返りと前向きな決算対策を組み合わせ、黒字決算と内部留保の蓄積を目指しましょう。田中社長の事例のように、具体的な施策と迅速な行動が事業成長の鍵です。税理士事務所として、皆様の経営をサポートし、決算を成功に導くお手伝いをいたします。