2026年は、子ども・子育て支援金制度の開始、在職老齢年金制度の見直し、
防衛特別法人税の創設、不動産の住所変更登記の義務化、
労働基準法制の見直し など、経営や人事・労務、税務に影響を与える制度改正が相次ぐ予定です。
本記事では、これらの制度改正の概要と、中小企業の経営者・人事担当者が今から準備しておきたい実務ポイントを、税理士の視点から分かりやすく整理しました。
子ども・子育て支援金制度は、少子化対策や子育て支援を目的として、
公的医療保険(健康保険・国民健康保険など)に上乗せして徴収される新たな拠出金
の仕組みです。2026年度から順次導入される予定で、会社員や自営業者、高齢者を含む幅広い世代が対象となります。
こども家庭庁の公表資料等によると、支援金は保育の受け皿整備や、児童手当の拡充などに充てられ、
子ども一人あたりでみると 総額100万円超規模の支援 になるとの試算も示されています。
一方で、現役世代を中心に 1人あたり月数百円程度の保険料負担増 が見込まれています。
子ども・子育て支援金は「税」ではなく保険料として徴収されますが、
企業にとっては 実質的に人件費(法定福利費)の増加 となります。
賃上げや人員増を検討している企業は、数年先までの総人件費を試算しておくことをおすすめします。
在職老齢年金制度は、厚生年金を受給しながら働く60歳以上の方について、
賃金と年金の合計額が一定額を超えると年金の一部が支給停止される仕組み です。
厚生労働省の資料等によると、2026年4月からは、
| 現行(2025年度まで) | 見直し後(2026年4月以降・予定) |
|---|---|
| 「賃金(総報酬月額相当額)」+「年金(基本月額)」が 月50万円を超えると超過分の半額を支給停止 |
同合計が月62万円を超える場合にのみ、 超過分の半額を支給停止 |
つまり、賃金と年金の合計が62万円以下であれば、年金は全額支給される 方向で見直しが進められています。
これにより、シニア世代が就労調整をせずに働きやすくなることが期待されています。
在職老齢年金の見直しは、
「いつまで・どの条件で高齢者に働いてもらうか」 という経営判断に直結します。
モデル賃金や人件費シミュレーションを行いながら、
社会保険・税金も含めたトータルのコストと手取りのバランスを確認しておきましょう。
防衛力強化のための財源確保策として、
「防衛特別法人税」 が創設されました。財務省の税制改正大綱および国税庁の案内によると、
概要は次の通りです。
そのため、実質的には中堅・大企業を中心に負担が生じる仕組み となっており、
多くの中小企業では税額が発生しないケースも想定されます。ただし、
税額が0円でも防衛特別法人税の申告書提出が必要 とされていますので注意が必要です。
防衛特別法人税は、法人実効税率をおおむね1%弱押し上げると試算されています。
黒字幅が大きい企業ほど影響も大きくなるため、
設備投資や役員報酬の見直しなど、中期的な税務戦略の再検討 が重要です。
法務省の特設ページ等によると、2026年4月1日から、
不動産の登記名義人について住所や氏名・名称が変わった場合、変更日から2年以内に変更登記を申請することが義務化されます。
登記情報が古いままだと、
融資や不動産売却の際に手続きが遅れる要因 となります。
会社名変更・本店移転・代表者変更などのタイミングでは、商業登記とあわせて不動産登記も必ず確認しましょう。
厚生労働省の「労働基準関係法制研究会」では、働き方の多様化や長時間労働是正などを踏まえ、
労働基準法等の見直しについて検討が行われ、報告書が公表されています。
これを受け、2026年以降、国会での法案審議・制度改正が順次進む見込みです。
現時点で具体化が進んでいる主な論点として、次のようなものが挙げられます。
労働法制の改正は、罰則や行政指導のリスクだけでなく、
採用力や離職率にも大きく影響します。制度改正をきっかけに、
「安心して長く働ける会社かどうか」 を見直す良い機会と捉え、
就業規則・賃金規程・評価制度をトータルで整備していきましょう。
2026年以降の制度改正は、企業にとって負担増となる側面もありますが、
見方を変えれば、人材活用の幅を広げ、自社の働き方やガバナンスを見直す好機 でもあります。
当事務所では、これらの制度改正を踏まえた経営計画の見直しや、人事・労務のご相談、
決算・申告実務のサポート を行っています。具体的な影響額を知りたい方や、
自社の状況に即した対応策を検討したい方は、どうぞお気軽にご相談ください。
※本記事は、2025年11月時点で公表されている情報(こども家庭庁・厚生労働省・財務省・国税庁・法務省 等の資料)をもとに作成しています。
その後の法令改正等により内容が変更される場合がありますので、最新情報は各省庁の公式サイト等でご確認ください。
※記載内容は一般的な解説であり、特定の企業・個人に対する税務・法務上のアドバイスを目的としたものではありません。具体的な取扱いについては、必ず専門家にご相談ください。