家族経営の会社では、役員報酬は損金扱いになるので、節税対策として親族を非常勤役員として役員報酬を支払っているケースが数多く見受けられます。
税務調査で問題になるのが非常勤役員報酬が適正であるかどうかです。
法人税法施行令 第七十条には、過大な役員給与の額が規定されています。
適正な役員報酬額とは、「当該役員の職務の内容、その内国法人の収益及びその使用人に対する給与の支給の状況、その内国法人と同種の事業を営む法人でその事業規模が類似するものの役員に対する給与の支給の状況等に照らし、当該役員の職務に対する対価として相当である」額というように規定されています。
具体的には、どれくらいの金額が適当なのでしょうか?
国税に関する法律に基づく処分についての審査請求に対する裁決を行う「国税不服審判所」の「公表裁決事例」を見るのがわかりやすいかと思います。
パチンコホールを営む同族会社の非常勤役員の報酬が過大であるという裁決です。同社の収益の状況は、次表の通り。
区分 | 売上高 | 売上総利益 |
---|---|---|
平成4年7月期 | 4,089,868,320 | 623,355,874 |
平成5年7月期 | 4,729,063,180 | 624,667,257 |
平成6年7月期 | 4,382,334,160 | 681,708,840 |
3名(Hさん、Jさん、Kさん)の非常勤役員の報酬が争点となりました。
裁決の結果、以下の表に示すように過大報酬と認め、類似法人でHらと職務内容が類似すると認められる非常勤の取締役に対する役員報酬の平均額は平成4年7月期1,220,000円、平成5年7月期1,160,000円及び平成6年7月期1,800,000円と判断しました。
事業年度 | 氏名 | 支給額((1)) | 相当額((2)) | 過大報酬額 ((1)-(2)) |
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平成4年7月期 | H | 7,140,000 | 1,220,000 | 5,920,000 |
J | 3,264,000 | 1,220,000 | 2,044,000 | |
K | 4,080,000 | 1,220,000 | 2,860,000 | |
平成5年7月期 | H | 9,340,000 | 1,160,000 | 8,180,000 |
J | 6,564,000 | 1,160,000 | 5,404,000 | |
K | 7,380,000 | 1,160,000 | 6,220,000 | |
平成6年7月期 | H | 9,540,000 | 1,800,000 | 7,740,000 |
J | 6,864,000 | 1,800,000 | 5,064,000 | |
K | 7,689,000 | 1,800,000 | 5,889,000 |
建設業の代表取締役の母親が非常勤役員に就任し、その過大報酬が争点です。
類似法人として、近隣税務署管内で住宅リフォームを手掛け、かつ、各事業年度の売上金額を基準として当該売上金額の0.5倍以上2倍以内の売上金額を有し、非常勤取締役がいる青色申告法人について、平成15年1月期は10社、平成16年1月期は6社(以下、これらの法人を「本件類似法人」という。)を選定して役員報酬を調査しています。
その結果、適正な役員報酬は次表と裁決されました。
事業年度 | 本件役員報酬額 | 本件適正報酬額 | 差引損金不算入額 |
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平成15年1月期 | 33,000,000円 | 1,187,000円 | 31,813,000円 |
平成16年1月期 | 36,000,000円 | 1,860,000円 | 34,140,000円 |