金融機関がいま注目している中小企業の「経営の透明性」。それは、健全な経営努力を継続し、その結果を表している自社の財務データを定期的に開示することです。金融機関と中小企業との共通言語である「決算書」を開示して、金融機関と積極的にコミュニケーションをとりましょう。
中小企業にとってお金の「入り口」は、①取引先からの売上の入金 ②金融機関からの借入——の大きく2つに分けられます。両者とうまくコミュニケーションをとり、時に膝詰めで交渉することは、重要な「社長の仕事」 の1つといえます。
ところが、「取引先とはうまく話せるけど、金融機関と話をするのは苦手」「金融機関に何を話せば良いかわからない」といった方もおられるでしよう。
そうした中、金融機関と話をするときの重要なコミュニケーションツールが、日々きちんとつけられた帳簿(仕訳)を基に作成された「決算書」です。金融機関にとっては、融資したお金がその企業の事業活動に正しく使われ、滞りなく毎月きちんと返済されることが何よりも大事。だからこそ、そのための判断材料が、中小企業の決算書からきちんと読み取れるかどうかが大切になるのです。
金融機関は、「資産の実態はあるか」「粉飾が行われていないか」という視点から、決算書の中で特に次のような点を見ています。
売掛金:回収が困難なものはないか(倒産・破産した取引先からの売掛金が含まれていないか)、売上債権の回転期間
在庫(棚卸資産):在庫金額は適正か(架空のものはないか・商品価値のないものは 含まれていないか)、棚卸資産の回転期間
固定資産:存在しない固定資産が帳簿に載っていないか、過剰投資されていないか、減価償却は正しく行われているか
仮払金・貸付金:不自然に多額の残高が ないか(資金の社外流出の可能性はない か)
このように、金融機関がチェックするポイントは、いずれも「良い会社」になるための大前提である、日々の健全な経営努力と正しい経理処理の積み重ねである——ということがおわかりいただけるでしよう。
つまり、自社の健全な経営努力と正しい経理処理の賜物である決算書こそが、金融機関と話をするための共通言語となるのです。 せっかくの決算書を、ぜひ金融機関とのコミュニケーションに役立てましよう。