「相続の特別寄与分はいくらか?」という問い合わせがあります。
相続人以外の者の寄与に関する裁判例が参考になるかと思います。
被相続人A(昭和51年7月6日死亡)は,農業に従事していたが,昭和25年頃から,農作業はAの子であるBに任せ,花売りの行商に従事するようになった。しかし,昭和44年頃,高血圧と心臓病が悪化したことから,花売りの行商をやめ,以後はBに扶養されていた。昭和48年末頃からは,上記持病に老衰も加わって,寝たきりの状態となった。近隣には入院できる病院はなく,また,Aも入院を嫌ったため,自宅療養し,Bの妻Cが専らその付添看護を行っていた。Cは,Aの病状が進行した昭和49年3月頃からは,垂れ流しの大小便の世話のため,30分以上の外出をすることができなくなり,Aの発作の危険が増した昭和50年12月頃からは,昼夜,Aの側に付きっきりで看護した。そのため,Cは,慢性的な睡眠不足となり,Aの死後,長期間の看病疲れから自律神経失調症を患ったほどであった。
以上のようなCのAに対する献身的看護は,親族間の通常の扶助の範囲を超えるものがあり,そのため,Aは,療養費の負担を免れ,遺産を維持することができたと考えられるから,遺産の維持に特別の寄与貢献があったものと評価するのが相当であるところ,上記看護は,Bの妻として,Bと協力し合い,Bの補助者または代行者としてなされたものであるから,遺産分割に当たっては,Bの寄与分として考慮すべきである。
上記寄与分の価格は,相続開始時において,120万円と評価するのが相当である(昭和49年3月以降概ね28か月として,死亡直前の6か月を月9万円程度,その余の22か月を月3万円程度が通常の扶助を超える部分の評価とした。)。
出典:法務省ホームページ(https://www.moj.go.jp/content/001222143.pdf)を加工して作成