〜事業承継・採用・会社存続のために〜
第4話では、黒字化できる会社が実践している月次決算、原価管理、価格転嫁、
不採算取引の見直し、資金繰り表の活用について解説しました。
最終回となる第5話では、黒字化を「今期の利益」だけでなく、
会社の未来を守るための投資として考えます。
黒字会社は、事業承継、採用、賃上げ、金融機関対応、企業防衛の面で選択肢が広がります。
黒字は、経営者・従業員・家族・取引先を守り、会社を次の世代へつなぐ力になります。
1.黒字化は「会社を続ける力」です
黒字とは、単に税金を払うための利益ではありません。
黒字は、会社が自力で事業を続けるための体力です。
黒字を積み重ねることで、会社には内部留保が生まれます。
内部留保がある会社は、急な売上減少、取引先の倒産、設備故障、人材採用、災害、経営者の病気など、
予期しない事態にも対応しやすくなります。
反対に、赤字が続き、手元資金や自己資本が減っていくと、
少しの環境変化でも資金繰りが苦しくなります。
黒字化は、会社を守るための最も基本的な企業防衛です。
2.黒字会社は事業承継しやすい
事業承継では、後継者が「この会社を引き継ぎたい」と思える状態にしておくことが大切です。
黒字で資金繰りが安定している会社は、後継者にとっても引き継ぎやすい会社です。
中小企業庁は、事業承継について、経営者の高齢化や廃業による雇用・技術の喪失を防ぎ、
世代交代を契機とした成長を進めるために重要な取組であると説明しています。
事業承継ガイドラインでも、早期の取組や計画的な承継準備の重要性が示されています。
後継者にとって不安なのは、赤字、借入過多、資金繰り不安、属人的な経営、先行き不透明な事業です。
反対に、月次決算が整い、利益が出ており、資金繰りと経営計画が見える会社は、
後継者や金融機関に説明しやすくなります。
3.自社株評価と黒字化の関係にも注意が必要です
非上場会社の事業承継では、自社株の評価が重要になります。
黒字化により会社の純資産や利益が増えると、自社株評価に影響する場合があります。
そのため、黒字化と事業承継対策は、早めに並行して考えることが大切です。
ただし、自社株評価が上がることを恐れて、あえて会社を赤字にするのは本末転倒です。
会社の価値が高まることは、事業の継続力や信用力が高まっている証拠でもあります。
大切なのは、黒字化によって会社の体力を高めながら、
株式の移転方法、役員退職金、持株会社、種類株式、事業承継税制などを含めて、
計画的に承継対策を進めることです。
4.事業承継税制は、早めの準備が重要です
法人版事業承継税制は、一定の要件を満たす非上場会社の株式等を後継者が相続または贈与により取得した場合に、
贈与税・相続税の納税が猶予され、一定の場合には免除される制度です。
国税庁も、法人版事業承継税制について、非上場株式等に係る相続税や贈与税の納税猶予・免除制度として案内しています。
また、中小企業庁は、法人版事業承継税制の特例措置を受けるためには、
特例承継計画の提出が必要であり、計画には後継者の氏名、事業承継の予定時期、
承継時までの経営見通しや承継後5年間の事業計画等を記載する必要があると説明しています。
特例承継計画は、認定経営革新等支援機関による指導および助言を受けて作成する必要があります。
事業承継税制は要件が細かく、適用後の報告や継続要件もあるため、
「いつか考える」のではなく、早い段階から準備を始めることが重要です。
5.黒字会社は採用できる会社になります
人手不足の時代において、採用力は会社の将来を左右します。
求職者は、給与、賞与、福利厚生、教育体制、職場環境、会社の将来性を見ています。
黒字で利益が出ている会社は、賃上げ、賞与、教育、働きやすい環境づくりに投資しやすくなります。
反対に、赤字が続いている会社では、賃金水準を上げたくても原資がなく、
採用や人材定着で不利になりやすくなります。
黒字化は、単に経営者のためだけではありません。
従業員に安心して働いてもらい、若い人材に選ばれる会社になるための土台でもあります。
6.賃上げできる会社になるには利益が必要です
賃上げは、従業員の生活を守り、人材確保・定着を進めるために重要です。
しかし、賃上げは一度実施すれば毎年の固定的な人件費に影響します。
一時的な資金だけで行うのではなく、継続できる利益構造が必要です。
そのためには、売上を増やすだけでなく、粗利益率、労働生産性、一人当たり粗利益を確認し、
賃上げ原資を継続的に確保できるかを見極める必要があります。
価格転嫁、原価管理、不採算取引の見直し、部門別管理、月次決算は、
賃上げできる会社になるための実務的な取組です。
黒字化は、従業員へ利益を還元するための前提になります。
7.社長の精神的余裕も、黒字化が支えます
資金繰りに追われる経営は、社長の心身に大きな負担をかけます。
毎月の支払い、借入返済、税金、社会保険料、人件費をどう工面するかに追われていると、
将来のことを考える余裕がなくなります。
黒字化し、月次決算と資金繰り表で先の見通しが立つようになると、
経営者は落ち着いて判断しやすくなります。
新規事業、設備投資、人材採用、事業承継、金融機関対応についても、
早めに準備しやすくなります。
黒字化は、社長の精神的な余裕を生み、
経営を「その場しのぎ」から「未来を見据えた経営」へ変える力があります。
8.企業防衛としての黒字化
中小企業では、経営者や幹部に万一のことがあった場合、
会社の資金繰りや事業継続に大きな影響が出ることがあります。
そのため、生命保険、退職金準備、借入金対策、緊急時資金、後継者育成など、
企業防衛の視点が欠かせません。
ただし、企業防衛には原資が必要です。
黒字化によって会社に利益と資金を残すことで、
万一の備えや将来投資を行いやすくなります。
「節税のために利益を消す」のではなく、
税金を払った後に資金を残し、会社を守るために使う。
これが、黒字化を前提とした企業防衛の考え方です。
9.内部留保は悪ではなく、会社を守る蓄えです
内部留保という言葉には、悪い印象を持たれることもあります。
しかし、中小企業にとって内部留保は、会社を守るための大切な蓄えです。
内部留保がある会社は、売上減少、設備故障、災害、取引先倒産、急な採用、賞与支給、納税などに対応しやすくなります。
また、金融機関から見ても、自己資本が厚く、資金繰りに余裕がある会社は安心材料になります。
もちろん、内部留保をためるだけではなく、必要に応じて設備投資、IT投資、人材育成、賃上げに活用することも重要です。
黒字化によって内部留保をつくり、その内部留保を未来への投資に使うことが、会社の成長につながります。
10.TKCシステムを活用し、未来を見える化する
黒字化を継続するには、月次決算と経営計画が欠かせません。
過去の決算書だけを見ていても、将来の資金繰りや利益見通しは分かりません。
TKCのFXクラウドシリーズでは、月次決算や部門別管理、取引先別管理などを通じて、
黒字決算に向けた経営改善のヒントを確認できます。
また、継続MASなどの経営計画システムを活用することで、
売上、利益、資金繰り、借入返済、設備投資の見通しを確認しやすくなります。
黒字化は、過去の数字を確認するだけでは実現しません。
月次決算で現状を把握し、経営計画で未来を描き、毎月の実績との差を確認することで、
改善行動につなげることができます。
11.黒字化支援は、会社の未来を一緒に考える支援です
当事務所では、単に決算書や申告書を作成するだけでなく、
会社が継続して黒字化し、金融機関や従業員、後継者から信頼される会社になるための支援を行っています。
具体的には、次のような支援が可能です。
- 月次決算支援
- 翌月10日を目標とした試算表作成体制づくり
- 資金繰り表の作成支援
- 経営計画・黒字化計画の作成支援
- 損益分岐点売上高の試算
- 部門別・商品別・取引先別の利益分析
- 価格転嫁・賃上げ原資の確認
- 銀行対策・金融機関向け説明資料の作成
- TKCモニタリング情報サービスの活用支援
- 記帳適時性証明書を活用した決算書の信頼性向上
- 事業承継税制・自社株対策の検討
- 企業防衛・退職金・万一の備えの相談
「利益は出ているはずなのにお金が残らない」
「後継者に会社を引き継げる状態にしたい」
「賃上げや採用に耐えられる会社にしたい」
「金融機関から評価される決算書を作りたい」
という方は、早めにご相談ください。
12.まとめ|黒字化は未来への投資です
黒字化は、単に今期の利益を出すことではありません。
会社を続ける力をつくり、従業員を守り、後継者に引き継げる会社にし、
金融機関や取引先から信頼される会社になるための取組です。
黒字会社は、事業承継しやすく、採用しやすく、賃上げしやすく、金融機関との交渉もしやすくなります。
そして、経営者自身にも精神的な余裕が生まれます。
5回にわたってお伝えしてきたように、黒字化は「税金を払うため」ではなく、
会社の未来を守るために必要です。
黒字化は、未来への投資です。
月次決算、経営計画、資金繰り支援、黒字化支援、銀行対策、TKC活用支援については、
当事務所へご相談ください。
経営支援・巡回監査のご相談はこちら
黒字化は、決算前だけの対策ではなく、毎月の数字を確認し、改善を積み重ねることで実現します。
当事務所では、月次決算・巡回監査を通じて、会社の利益体質づくりを支援しています。
「利益は出ているはずなのにお金が残らない」
「毎月の数字を経営に活かしたい」
「金融機関から評価される決算書を作りたい」
という方は、経営支援・巡回監査サービスをご覧ください。
連載まとめ
- 第1話|なぜ会社は黒字を目指すべきなのか?
- 第2話|赤字会社に起きる5つの危険
- 第3話|黒字会社は銀行からどう見られているのか?
- 第4話|黒字化できる会社は何をしているのか?
- 第5話|黒字化は“未来への投資”
この連載を通じて、黒字化を「税金が増えること」ではなく、
会社を守り、未来をつくるための経営課題として考えていただければ幸いです。







