〜利益が残る会社の共通点〜
第3話では、黒字会社が銀行からどのように見られるのか、
そして数字が銀行との交渉材料になることを解説しました。
では、実際に黒字化できる会社は、日々どのような経営をしているのでしょうか。
「忙しいのに利益が出ない」
「売上は増えているのにお金が残らない」
という会社には、必ず原因があります。
第4話では、黒字化できる会社に共通する実践ポイントを、
月次決算、原価管理、価格転嫁、不採算取引の見直し、資金繰り表の活用という視点から解説します。
1.黒字化できる会社は、毎月数字を見ています
黒字化できる会社は、年に1回の決算だけで経営判断をしていません。
毎月、試算表を確認し、売上、粗利益、固定費、借入返済、資金繰りをチェックしています。
中小企業庁は「中小企業の会計に関する基本要領」について、
自社の経営状況をタイムリーに把握し、経営力や資金調達力の強化に活用することをすすめています。
決算書や試算表は、税務申告のためだけではなく、経営判断のための資料です。
黒字化の第一歩は、毎月の数字を見て、
「どこで利益が出ているのか」
「どこで利益が減っているのか」
を把握することです。
2.翌月10日までに月次決算を確定する
月次決算は、早く確認できなければ意味が薄くなります。
3か月前、半年以上前の数字を見ても、すでに状況が変わっていることが多いためです。
目標としては、翌月10日までに前月の月次決算を確定することをおすすめします。
早く数字が出れば、利益率の低下、経費の増加、資金繰り悪化にすぐ気づくことができます。
ただし、いきなり翌月10日確定を目指すのが難しい会社もあります。
その場合は、まず請求書・領収書・通帳データ・カード明細を毎月決まった日までに整理することから始めましょう。
当事務所では、自計化、会計ソフト入力、証憑整理、月次処理の流れづくりを支援しています。
「何から始めればよいか分からない」という会社でも、段階的に月次決算のスピードを上げることが可能です。
3.原価管理を徹底している
売上が増えているのに利益が残らない会社では、原価管理が不十分なことがあります。
仕入価格、外注費、材料ロス、作業時間、運送費などが増えているのに、
販売価格へ反映できていないケースです。
黒字化できる会社は、売上だけでなく、売上総利益率を確認しています。
売上総利益率が下がっている場合、原価上昇、値引き、ロス、不採算取引などの原因を確認する必要があります。
特に、原材料費や外注費が上がっている局面では、
「以前と同じ価格で売っているだけで利益が減る」ということが起こります。
価格を変えていないから安心なのではなく、利益率が維持できているかを確認することが重要です。
4.価格転嫁・値上げを数字で説明している
黒字化できる会社は、コスト上昇を自社だけで抱え込みません。
原材料費、物流費、エネルギー費、人件費が上がった場合には、
取引先に対して価格改定を相談しています。
中小企業庁は、価格交渉・価格転嫁の支援ツールを公開しており、
商品別・取引先別の収支状況やコスト構造の変化を可視化できるツールも案内しています。
価格交渉は、感覚ではなく数字で行うことが重要です。
- 原材料費・仕入単価の上昇資料
- 人件費・最低賃金上昇の影響額
- 物流費・エネルギー費の増加額
- 商品別・取引先別の粗利益率
- 価格改定しない場合の利益減少額
- 値上げ後の利益改善見込み
適正な利益を確保できなければ、品質維持、納期対応、従業員の賃上げも難しくなります。
黒字化できる会社は、継続的な取引のために必要な価格交渉を行っています。
5.「どの商品で儲かっているか」を確認している
会社全体では黒字でも、商品別・部門別・取引先別に見ると、
実は利益が出ているものと出ていないものが分かれていることがあります。
たとえば、売上金額が大きい取引先でも、値引きが多く、納期対応が重く、
外注費や人件費がかかっている場合には、実際には利益がほとんど残っていないことがあります。
- 商品別に粗利益率を確認する
- 取引先別に利益額を確認する
- 部門別に売上・原価・人件費を確認する
- 値引きや返品が多い取引を確認する
- 手間がかかる割に利益が少ない仕事を確認する
- 一人当たりの粗利益を確認する
特に、人手不足や賃上げが課題となる時代には、一人当たりの粗利益が重要です。
これは、従業員一人がどれだけの付加価値を生み出しているかを見る指標であり、労働生産性の確認にもつながります。
賃上げを継続するには、単に売上を増やすだけでなく、
一人当たりの粗利益を高めることが必要です。
これは、第5話で扱う「黒字化は未来への投資」というテーマにもつながります。
6.不採算取引を見直している
黒字化できる会社は、すべての売上を同じようには扱いません。
売上が大きくても、利益が残らない取引は見直しの対象になります。
- 価格改定を依頼する
- 納期・仕様・対応範囲を見直す
- 小ロット対応や急ぎ対応に追加料金を設定する
- 作業工程を見直して効率化する
- 利益が出ない取引から段階的に撤退する
長年の取引先との関係を急に断つ必要はありません。
しかし、会社全体の利益を守るためには、
採算が合わない取引をそのまま続けないことも重要です。
7.損益分岐点を把握している
黒字化できる会社は、どれだけ売上を上げれば黒字になるのかを把握しています。
その代表的な指標が損益分岐点売上高です。
損益分岐点売上高とは、利益がちょうどゼロになる売上高のことです。
これを把握することで、
「最低限どれだけ売上が必要か」
「固定費を下げると必要売上がどう変わるか」
「粗利益率を上げると黒字化しやすくなるか」
を確認できます。
損益分岐点を考える際には、費用を変動費と固定費に分けることが重要です。
変動費とは、仕入・材料費・外注費など、売上に連動して増える費用です。
固定費とは、人件費、家賃、リース料、保険料など、売上に関わらず発生しやすい費用です。
変動費を下げるのか、固定費を見直すのか、粗利益率を高めるのかによって、
黒字化の打ち手は変わります。
「どの経費を削るべきか」を考える前に、まず費用の性質を分けて見ることが大切です。
売上目標を立てる場合にも、単に「前年より増やす」ではなく、
固定費、人件費、借入返済、必要利益を踏まえて、
黒字化に必要な売上を逆算することが重要です。
8.資金繰り表を作成している
黒字化できる会社は、損益だけでなく資金繰りも確認しています。
利益と現金は一致しません。
黒字でも、売掛金の回収遅れ、在庫増加、設備投資、借入返済によって資金繰りが苦しくなることがあります。
- 今後の入金予定
- 仕入・外注費・人件費・税金・借入返済などの支払予定
- 何月に資金が不足しそうか
- 追加借入や借換えが必要か
- 設備投資や賃上げを行う余力があるか
中小企業庁の早期経営改善計画策定支援でも、資金繰りの安定や収益力の改善が重要なテーマとされています。
黒字化を目指すうえで、資金繰り表は欠かせない経営資料です。
9.部門別管理で利益と生産性を見える化する
複数の店舗、事業部、商品群、担当者別の売上がある会社では、
会社全体の数字だけを見ていても、利益の出どころが分かりにくいことがあります。
そのような場合には、部門別管理が有効です。
部門別に売上、原価、人件費、広告費、利益を確認することで、
どの部門が会社を支えているのか、どの部門に改善が必要なのかが見えてきます。
- 伸ばすべき事業はどこか
- 改善が必要な店舗・部門はどこか
- 撤退・縮小を検討すべき事業はあるか
- 人員配置や広告費の配分は適切か
- 設備投資をどこに優先すべきか
- 一人当たりの粗利益は十分か
部門別管理では、単に部門ごとの利益を見るだけでなく、
一人当たりの粗利益や一人当たり売上高も確認すると効果的です。
労働生産性が高い部門は、賃上げや採用の原資を生み出しやすくなります。
黒字化できる会社は、会社全体の黒字だけでなく、
どこで利益が生まれ、どこで人の力が活きているのかを把握しています。
10.税理士事務所ができる黒字化の実践支援
黒字化には、数字を見て、原因を見つけ、具体的な行動へつなげることが必要です。
当事務所では、次のような支援を行っています。
- 翌月10日を目標とした月次決算体制づくり
- 請求書・領収書・通帳データの整理方法のサポート
- 自計化・会計ソフト入力の導入支援
- 試算表・資金繰り表の作成支援
- 売上総利益率・限界利益率の分析
- 商品別・取引先別・部門別の利益分析
- 一人当たり粗利益など労働生産性の確認
- 不採算取引の見える化
- 損益分岐点売上高の試算
- 価格改定・価格転嫁に必要な資料作成支援
- 借入返済と資金繰りの確認
- 経営改善計画・黒字化計画の作成支援
- 金融機関へ説明しやすい月次資料づくり
「忙しいのに利益が出ない」
「売上は増えているのにお金が残らない」
「翌月10日までの月次決算なんて無理だと思う」
という方も、まずは資料整理と入力体制づくりから始めれば大丈夫です。
当事務所では、会社の状況に合わせて、無理なく月次決算を早める仕組みづくりを支援します。
11.まとめ|黒字化は毎月の数字を見ることから始まります
黒字化できる会社は、感覚だけで経営していません。
毎月の試算表、原価管理、利益率、不採算取引、損益分岐点、資金繰り表を確認し、
具体的な改善行動につなげています。
売上が増えているのにお金が残らない会社は、
原価、固定費、借入返済、売掛金、在庫、不採算取引のどこかに原因があるかもしれません。
その原因を見つけるためには、月次決算と資金繰り表が不可欠です。
さらに、賃上げや採用を考えるなら、一人当たりの粗利益や労働生産性も確認する必要があります。
黒字化は、会社の利益を増やすだけでなく、従業員へ還元できる会社づくりにもつながります。
利益が残る会社づくりを支援します。
月次決算・資金繰り表・部門別管理・価格転嫁・黒字化支援については、当事務所へご相談ください。
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黒字化は、決算前だけの対策ではなく、毎月の数字を確認し、改善を積み重ねることで実現します。
当事務所では、月次決算・巡回監査を通じて、会社の利益体質づくりを支援しています。
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次回予告
第5話では、「黒字化は未来への投資」をテーマに、
事業承継、採用、賃上げ、会社存続のために黒字化がなぜ必要なのかを解説します。
黒字は、単に今期の決算を良くするためのものではありません。
会社の未来を守るための力です。







