本格的な台風シーズンが到来 知っておくと安心!雑損控除
〜災害・盗難・横領で住宅や家財に被害を受けたときの税金の取扱い〜
夏から秋にかけて、台風・集中豪雨・突風などによる被害が増えやすい時期になります。
自宅や家財が被害を受けた場合、生活の立て直しに加えて、修理費用や買替費用など大きな負担が発生することがあります。
そのようなとき、所得税・住民税の負担を軽減できる制度として「雑損控除」があります。
雑損控除は、災害・盗難・横領によって一定の資産に損害を受けた場合に、確定申告により所得控除を受けられる制度です。
この記事では、台風・豪雨・盗難被害などに備えて、雑損控除の対象、計算方法、必要書類、確定申告時の注意点を税理士事務所の視点から分かりやすく解説します。
※本記事は、令和8年6月時点の公表情報等をもとに作成しています。
実際の申告にあたっては、国税庁・自治体・税務署等の最新情報をご確認ください。
1.雑損控除とは
雑損控除とは、災害・盗難・横領によって、住宅や家財などの資産に損害を受けた場合に、一定の金額を所得から差し引くことができる所得控除です。
たとえば、次のような被害があった場合に、雑損控除の対象となる可能性があります。
- 台風や豪雨により自宅が浸水した
- 強風で屋根や外壁が破損した
- 落雷・火災・地震などにより住宅や家財が損害を受けた
- 空き巣に入られて家財を盗まれた
- 横領により財産上の損害を受けた
雑損控除は、所得税だけでなく、住民税にも影響します。
被害を受けた年分の確定申告を行うことで、所得税の還付や住民税の軽減につながる可能性があります。
2.対象になる原因は「災害・盗難・横領」
雑損控除の対象となる主な原因は、次の3つです。
- 災害
- 盗難
- 横領
災害には、震災、風水害、冷害、雪害、落雷、火災などが含まれます。
台風や集中豪雨による浸水被害、土砂災害、強風による建物被害なども、雑損控除の対象となる可能性があります。
また、空き巣などの盗難被害や、横領による損害も対象となることがあります。
一方で、詐欺や恐喝による被害は、雑損控除の対象になりません。
近年は特殊詐欺や投資詐欺などの被害も増えていますが、雑損控除の対象とはならない点に注意が必要です。
3.対象になる資産・ならない資産
雑損控除の対象となる資産は、本人または生計を一にする配偶者その他の親族が所有する、生活に通常必要な資産です。
代表的な対象資産には、次のようなものがあります。
- 自宅の建物
- 家財道具
- 自家用車
- 通勤・通学など生活に必要な資産
一方で、次のような資産は原則として雑損控除の対象になりません。
- 棚卸資産
- 事業用固定資産
- 別荘など生活に通常必要でない資産
- 1個または1組の価額が30万円を超える貴金属・書画・骨董など
たとえば、個人事業主が所有する事業用の機械や店舗設備が被害を受けた場合は、雑損控除ではなく、事業所得等の計算上、必要経費や損失として処理することになります。
4.雑損控除の金額の計算方法
雑損控除の金額は、次のいずれか多い方の金額になります。
① 差引損失額 − 総所得金額等 × 10%
② 差引損失額のうち災害関連支出の金額 − 5万円
ここでいう差引損失額とは、損害金額に災害関連支出を加え、保険金などで補てんされる金額を差し引いた金額をいいます。
差引損失額 = 損害金額 + 災害関連支出 − 保険金等による補てん額
災害関連支出には、災害により損壊した住宅や家財の取壊し費用、原状回復のための支出、土砂や障害物の除去費用などが含まれることがあります。
実際の計算では、被害額、修理費、保険金、所得金額などを確認して、どの金額を控除できるか判断する必要があります。
具体的な計算例
たとえば、次のようなケースで考えてみます。
- 給与所得者の総所得金額等:500万円
- 台風による自宅の損害・修繕費:100万円
- 火災保険からの補てん金:30万円
まず、差引損失額を計算します。
100万円(損害・修繕費) − 30万円(保険金) = 70万円
次に、雑損控除の2つの計算式に当てはめます。
- ① 70万円 −(500万円 × 10%)= 20万円
- ② 70万円 − 5万円 = 65万円
雑損控除は、①と②のいずれか多い方の金額を控除します。
このケースでは、65万円が所得控除の対象になります。
このように、災害関連支出が大きい場合には、
「総所得金額等の10%」を差し引く計算よりも、
「災害関連支出から5万円を差し引く」計算の方が有利になることがあります。
5.損害額が分からない場合はどうするか
災害や盗難の被害では、正確な損害額がすぐに分からないことがあります。
たとえば、住宅や家財の取得価額が分からない、古い家財の時価をどう見積もればよいか分からない、というケースも少なくありません。
このような場合、国税庁が示す合理的な計算方法に基づき、損害金額を算定できる場合があります。
ただし、自己判断で大まかに計算してしまうと、控除額が過大または過少になる可能性があります。
被害状況、修理見積書、保険金の支払通知書などをもとに、税理士や税務署へ確認しながら計算することをおすすめします。
6.災害減免法による軽減免除を選べる場合もあります
災害により住宅や家財に大きな被害を受けた場合、雑損控除とは別に、災害減免法による所得税の軽減免除を受けられることがあります。
災害減免法は、その年分の所得金額の合計額が1,000万円以下で、災害による住宅または家財の損害額がその価額の2分の1以上である場合などに、所得税が軽減または免除される制度です。
ただし、雑損控除と災害減免法は併用できません。どちらか有利な方法を選択する必要があります。
所得金額、被害額、保険金の有無などによって有利不利が変わるため、大きな災害被害を受けた場合は、早めに税理士へ相談しましょう。
7.雑損控除を受けるには確定申告が必要です
雑損控除を受けるためには、原則として確定申告が必要です。
年末調整だけでは雑損控除を受けることはできません。
給与所得者の方でも、台風・豪雨・火災・盗難などにより住宅や家財に損害を受けた場合は、確定申告を行うことで所得税の還付や住民税の軽減につながる可能性があります。
また、雑損控除の金額がその年の所得金額から控除しきれない場合、翌年以後に繰り越して控除できることがあります。
災害による損失については、一定の場合、繰越控除の期間が通常より長くなるケースもあります。
被害を受けた年だけでなく、翌年以降の申告にも影響する可能性があるため、申告書や関係書類は大切に保管しておきましょう。
8.確定申告に必要な主な書類
雑損控除を受ける場合は、被害状況や支出内容を説明できる資料を準備しておくことが重要です。
主な必要書類は次のとおりです。
- 罹災証明書・被災証明書
- 警察署が発行する盗難届の受理番号・証明書類
- 被害を受けた資産や取得価額、取得時期が分かる資料
- 被害状況が分かる写真・動画
- 修理費、撤去費、取壊し費用などの請求書・領収書
- 保険金・損害賠償金などの支払通知書
- 災害関連支出の内容と金額が分かる資料
- 確定申告に必要な源泉徴収票、控除証明書など
特に、被害状況の写真は重要です。
災害発生直後は片付けを急ぎたくなりますが、片付ける前に、スマートフォンなどで被害の様子を撮影しておきましょう。
住宅の被害、家財の破損、浸水の高さ、屋根・外壁の損傷、盗難被害の状況などを記録しておくと、後日の申告や保険請求の際に役立ちます。
9.ケース別:雑損控除を使える?使えない?
雑損控除は、被害の原因や資産の種類によって適用可否が異なります。
代表的なケースを確認しておきましょう。
ケース1:自宅がシロアリ被害にあった場合
シロアリ被害が災害による異常な災害に該当する場合や、被害の状況によっては雑損控除の対象となる可能性があります。
一方で、通常の維持管理や予防目的の費用は対象外となることがあります。
実際の適用可否は、被害の原因や支出内容を確認する必要があります。
ケース2:空き巣に入られた場合
空き巣による盗難被害は、雑損控除の対象となる可能性があります。
警察への届出、盗難届の受理番号、被害品の内容、保険金の有無などを確認しましょう。
ケース3:店舗の商品が災害で被害を受けた場合
個人事業主の店舗商品や事業用資産が被害を受けた場合、原則として雑損控除ではなく、事業所得等の計算上、必要経費や損失として処理します。
事業用資産と生活用資産を区分して確認することが大切です。
ケース4:特殊詐欺にだまされた場合
詐欺や恐喝による被害は、雑損控除の対象にはなりません。
近年は特殊詐欺や投資詐欺の相談も増えていますが、雑損控除の対象は災害・盗難・横領による損害であり、詐欺被害は対象外です。
10.保険金を受け取った場合は控除額に注意
災害や盗難の被害により、火災保険、家財保険、自動車保険などから保険金を受け取る場合があります。
雑損控除の計算では、保険金などにより補てんされる金額を差し引く必要があります。
たとえば、修理費用や損害額が大きくても、保険金で補てんされた部分については、雑損控除の対象にはなりません。
確定申告の際には、保険会社から届く支払通知書や保険金額が分かる資料を必ず保管しておきましょう。
11.税理士事務所ができるサポート
当事務所では、災害・盗難・横領などにより被害を受けた方の確定申告について、雑損控除の適用可否や必要書類の確認をサポートしています。
- 雑損控除の対象になるかどうかの確認
- 災害減免法との有利不利の確認
- 損害額・災害関連支出・保険金の整理
- 確定申告書の作成サポート
- 給与所得者の還付申告サポート
- 住民税への影響確認
- 個人事業主の事業用資産被害の処理確認
- 必要書類・写真・領収書等の整理
災害や盗難の直後は、生活の立て直しが優先になります。
しかし、後で雑損控除を受けるためには、被害状況や支出内容を記録しておくことが非常に重要です。
申告が必要か分からない場合でも、お気軽にご相談ください。
12.まとめ|被害にあったら「写真・領収書・証明書」を残しましょう
台風・豪雨・火災・盗難などにより住宅や家財に損害を受けた場合、雑損控除により所得税・住民税の負担を軽減できる可能性があります。
雑損控除を受けるには、確定申告が必要です。
また、損害額、災害関連支出、保険金などを整理し、被害状況を説明できる資料を残しておく必要があります。
被害にあった場合は、片付ける前に写真を撮る、修理費や撤去費の領収書を保管する、罹災証明書や警察への届出を確認するなど、できることから進めておきましょう。
雑損控除は、制度を知らなければ使えない控除です。
災害や盗難で損害を受けた場合は、確定申告前に税理士へ相談することをおすすめします。
雑損控除・災害被害の確定申告でお困りの方へ
澤田匡央税理士事務所では、災害・盗難・横領などによる被害を受けた方の確定申告、雑損控除、災害減免法の適用確認をサポートしています。
「台風で自宅が被害を受けた」
「空き巣に入られた」
「保険金を受け取ったが、確定申告が必要か分からない」
という方は、お気軽にご相談ください。
参考情報







