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2026年10月02日 おやくだち

ホルムズ海峡には「公海」がないのに、なぜ津軽海峡には公海部分がある?

中東の重要航路であるホルムズ海峡は、最も狭い部分がイランとオマーンの領海に覆われています。一方、日本の津軽海峡では、日本が領海を通常の12海里ではなく3海里にとどめているため、中央部に日本の領海外となる海域が残っています。

なぜ日本は、自国の海峡なのに領海を海峡全体まで広げていないのでしょうか。この問題を調べると、国際航行の自由という政府の公式説明と、長年議論されてきた非核三原則と核搭載艦船の通航問題が出てきます。

1.ホルムズ海峡の最狭部には公海部分がない

ホルムズ海峡は、北側がイラン、南側がオマーンのムサンダム半島に面しています。最狭部は約21海里とされ、イランとオマーンがそれぞれ領海を設定しているため、最狭部は両国の領海で覆われています。

イメージ

イラン
【イラン領海】|中間線|【オマーン領海】
オマーン

最狭部では中央に公海を挟みません。

ただし、領海で覆われているから外国船が自由に通れない、という意味ではありません。ホルムズ海峡は国際航行に使用される海峡であり、通航に関する国際法上の制度が重要になります。

2.一方、津軽海峡では日本の領海が「3海里」

日本の領海は原則として基線から12海里ですが、「領海及び接続水域に関する法律」では、宗谷海峡、津軽海峡、対馬海峡東水道、対馬海峡西水道、大隅海峡の5海峡を「特定海域」とし、領海を3海里にとどめています。

津軽海峡のイメージ

北海道
【日本領海3海里】|【日本の領海外となる中央部分】|【日本領海3海里】
本州

一般には中央部が「公海部分」と説明されることがあります。厳密な海域区分を論じる場合には注意が必要ですが、ポイントは日本がそこを領海としていないことです。

3.なぜ、より狭い津軽海峡で領海を3海里にしている?

日本は1977年の領海法制定時、領海を原則12海里とする一方、5つの特定海域については3海里を維持しました。

政府の公式説明は明確です。海洋国家・先進工業国である日本にとって、国際交通の要衝で商船や大型タンカーなどの自由な航行を保障することが総合的国益の観点から重要だったため、と説明しています。

政府の公式説明

国際交通の要衝 → 商船・大型タンカー等の自由航行を確保 → 総合的国益 → 特定海域の領海を3海里に維持

したがって、政府の公式見解として「非核三原則のために3海里にした」と説明されているわけではありません。

4.それでも「非核三原則が関係している」と言われる理由

津軽海峡などの中央部を日本の領海外として残した背景については、以前から米国などの核搭載艦船と非核三原則との関係があったのではないかという指摘があります。

非核三原則は、核兵器を「持たず」「作らず」「持ち込ませず」という政策です。問題になるのは3番目の「持ち込ませず」です。

仮に津軽海峡全体が日本領海になれば、核兵器を搭載した外国軍艦が海峡を通航する際、日本領海を核搭載艦船が航行するという問題が生じます。

一方、中央部に日本の領海外となる航路が残っていれば、外国軍艦は日本領海に入らずに海峡を通過できることになります。

5.この問題は国会でも繰り返し議論されている

「核搭載艦船を通航させるためではないか」という見方は、単なるインターネット上の説ではなく、国会でも繰り返し取り上げられてきました。

2022年の衆議院予算委員会でも、津軽海峡などの領海を3海里にして中央部を日本領海外としているのは、核搭載艦が日本領海を通らずに航行できるようにするためではないか、という趣旨の質問が行われています。

2016年の国会審議でも、研究者や当時の外務省関係者らが非核三原則との関係を背景として指摘してきたことが議論されています。

6.しかし政府は「核搭載艦船のため」とは認めていない

ここは重要です。日本政府は、核搭載艦船を通すために津軽海峡の中央部を日本領海外にした、という説明を公式理由として採用していません。

2009年の外務大臣会見でも、特定海域を3海里としているのは外国船舶の自由な航行を保障するためであり、軍事的な観点ではないとの説明がされています。

整理すると

政府の公式説明 → 国際航行の自由・総合的国益

一方で長年指摘されてきた見方 → 非核三原則と核搭載艦船の通航への配慮も背景にあったのではないか

この2つを区別して理解することが大切です。

7.津軽海峡を領海で覆えば、外国船が通れなくなるわけではない

もう一つ注意したい点があります。仮に津軽海峡を日本の領海で覆ったとしても、直ちに外国船が一切通航できなくなるわけではありません。

領海には外国船舶の無害通航の制度があり、さらに国際航行に使用される海峡では国連海洋法条約上の通過通航制度が問題になります。

政府も、特定海域を国際海峡として通過通航制度の対象とする場合、上空通過の自由など制度上の論点が生じることを踏まえ、現在の3海里を維持する方が適切との判断を示してきました。

8.ホルムズ海峡と津軽海峡を比較すると

項目 ホルムズ海峡 津軽海峡
沿岸国 イラン・オマーン 日本
最狭部 約21海里 ホルムズ海峡より狭い部分がある
領海 最狭部は両国の領海で覆われる 日本は特定海域として3海里
中央部 最狭部に公海を挟まない 日本の領海外となる海域が残る
特徴 領海で覆われても国際航行制度が存在 日本自身が領海幅を例外的に抑えている

つまり、「海峡が狭ければ当然すべて領海になる」というわけではありません。沿岸国の国内法や海洋政策、安全保障政策、国際法上の通航制度などが関係します。

9.「非核三原則のため」と断定するのは正確ではない

記事などで「津軽海峡の中央部が公海なのは非核三原則のためである」と断定するのは避けた方が正確です。

より正確な表現

「政府は国際航行の自由確保を公式理由としている。一方、領海を3海里にとどめた背景には、非核三原則と核搭載艦船の通航問題への配慮があったのではないかという指摘が、研究者や国会審議などで長年なされている。」

事実として確認できることと、歴史的背景についての見方を分けて書くことが重要です。

税理士事務所からのワンポイント

今回は税金そのものの話ではありませんが、「制度はなぜこの形になっているのか?」という視点で調べると、法律の条文だけでは分からない歴史的背景が見えてくる例です。

税制についても同じで、「法律にそう書いてある」だけでなく、「なぜその制度が作られたのか」を知ると理解しやすくなることがあります。

まとめ

  1. ホルムズ海峡の最狭部はイランとオマーンの領海で覆われています。
  2. 津軽海峡では、日本が特定海域として領海を3海里にとどめています。
  3. その結果、中央部には日本の領海外となる海域があります。
  4. 政府の公式理由は、商船・大型タンカー等の自由航行を確保するという総合的国益です。
  5. 一方、非核三原則と核搭載艦船への配慮が背景にあったのではないかという指摘も長年存在します。
  6. 政府は、その安全保障上の理由を公式には認めていません。

したがって、「津軽海峡の特殊な領海設定と非核三原則との関係は長年指摘されているが、それは政府の公式説明とは区別して理解する」のが適切です。

参考情報

※本記事は2026年9月時点で確認できる法令、政府答弁、外務省・防衛省等の公表情報をもとに、一般向けに制度を簡略化して説明しています。「公海部分」という表現は一般的な説明として用いていますが、厳密な国際法上の海域区分には注意が必要です。日本政府は、特定海域を3海里としている公式理由として国際航行の自由確保と総合的国益を挙げており、非核三原則・核搭載艦船への配慮を公式理由とはしていません。



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