相続財産の中に不動産が多い場合、「とりあえず共有にしておこう」と考えることがあります。
しかし、不動産の共有は将来の管理・売却・活用において大きな制約となる可能性があります。
一方で、近年の民法改正により、共有に関するルールも見直され、
一定の問題については解決手段が整備されつつあります。
この記事では、不動産共有の基本的なリスクとともに、
最新の制度を踏まえた実務上のポイントを解説します。
1.不動産共有が選ばれる理由
不動産は分割が難しく、相続人全員の意見が一致しない場合、
法定相続分で共有とするケースが見られます。
2.共有不動産の意思決定ルール
(1)変更行為
共有者全員の同意が必要です。
(2)管理行為
持分価格の過半数で決定されます。
(3)保存行為
各共有者が単独で行えます。
3.共有不動産の主なリスク
- 売却や活用の意思決定が難しい
- 修繕や費用負担でトラブルになりやすい
- 共有者が増えると管理が複雑化する
- 認知症や音信不通者がいると手続が進まない
4.所在不明共有者がいる場合の新しい対応方法
従来は、共有者の中に連絡が取れない人がいる場合、
不動産の売却や活用が事実上できなくなるケースがありました。
しかし、令和5年4月施行の改正民法により、
一定の要件のもとで裁判所の決定を得ることで、
所在不明共有者の同意がなくても、残りの共有者の同意により管理や処分が可能となる制度
が創設されています(民法251条2項・252条2項)。
これにより、共有の問題が完全に解消されたわけではありませんが、
以前に比べて実務上の対応手段は広がっています。
5.認知症・世代交代によるリスク
共有者の一人が意思能力を失うと、
成年後見制度の利用が必要になる場合があります。
また、次世代へ相続されることで共有者が増え、
管理がより困難になる傾向があります。
6.相続登記義務化と「相続人申告登記」
令和6年4月から、相続登記は義務化され、
相続を知った日から3年以内に申請が必要となりました。
ただし、遺産分割がまとまらない場合には、
直ちに正式な相続登記ができないこともあります。
そのような場合には、
「相続人申告登記」という制度を利用することで、
暫定的に義務を履行することが可能です。
これは、自分が相続人であることを法務局に申し出る手続であり、
過料の対象となるリスクを回避することができます。
7.共有を避けるための対策
- 単独所有に分ける
- 代償分割を活用する
- 売却して現金で分割する
- 生前に遺言で整理しておく
8.やむを得ず共有にする場合のポイント
- 管理者を決める
- 費用負担のルールを明確にする
- 将来の売却方針を決めておく
- 共有状態を長期化させない
9.まとめ
不動産の共有は一見公平ですが、
将来的な管理や処分において大きな制約となる可能性があります。
一方で、近年の制度改正により、
所在不明共有者への対応や相続登記の柔軟な対応手段も整備されています。
相続における不動産の取り扱いは、
税務だけでなく法務の視点も含めて総合的に検討することが重要です。
不安がある場合は、早めに専門家へご相談ください。







