「もっと売上を伸ばしたい」「新しい顧客を増やしたい」と考えたとき、
まず広告を出そうと思う経営者は少なくありません。
しかし、マーケティングは単なる広告活動ではありません。
本来の目的は、顧客に選ばれる仕組みをつくり、無理な値引きや強い売り込みをしなくても購入につながる状態を整えることです。
経営資源が限られる中小企業だからこそ、
広告費を増やす前に「誰に」「どのような価値を」「どのように届けるのか」を整理する必要があります。
この記事では、添付資料で紹介されている
「ニーズとウォンツ」「STP」「マーケティングの4P」をもとに、
中小企業が売れる仕組みをつくるための基本を分かりやすく解説します。
1.マーケティングは広告活動だけではありません
「マーケティング」と聞くと、
チラシ、SNS、Web広告、テレビCMなどを思い浮かべる方が多いかもしれません。
もちろん広告もマーケティング活動の一部ですが、
広告を出すこと自体が目的ではありません。
マーケティングの目的は、
顧客が自社の商品やサービスを必要と感じ、
他社ではなく自社を選び、購入するまでの流れを整えることです。
例えば、売上が伸び悩んでいる会社が、
すぐに広告費を増やしたとしても、
次の点が曖昧であれば効果は出にくくなります。
- どのような顧客を対象にしているのか
- 顧客が抱えている困りごとは何か
- 自社の商品がどのように役立つのか
- 競合と比べた強みは何か
- 価格は顧客に受け入れられる水準か
- どの販売方法が顧客に合っているか
広告を始める前に、
まず顧客と自社の価値を整理することが、
売れる仕組みづくりの出発点です。
2.最初に考えるべきは「ニーズ」と「ウォンツ」
マーケティングでは、顧客が求めているものを考える際に、
「ニーズ」と「ウォンツ」を区別します。
ニーズとは
ニーズとは、顧客が満たしたい基本的な欲求や不足している状態のことです。
例えば、暑い日に長時間歩き続けて喉が渇いた人には、
「水分を補給したい」というニーズがあります。
ウォンツとは
ウォンツとは、そのニーズを満たすために、
顧客が具体的に欲しいと思う商品や方法のことです。
同じ「水分を補給したい」というニーズでも、
人によって具体的なウォンツは異なります。
- 水を飲みたい
- スポーツドリンクが欲しい
- 炭酸飲料を飲みたい
- 温かいお茶が欲しい
企業が提供すべきなのは、
商品そのものではなく、
顧客のニーズを満たす価値です。
例えば、印刷会社であれば、
顧客は「パンフレットを作りたい」のではなく、
「自社の商品を分かりやすく伝えて受注を増やしたい」と考えているかもしれません。
自社の商品やサービスを売る前に、
顧客が何を実現したいのかを考えることが重要です。
3.自社の「本当の顧客」は誰か
売上を増やしたいと考えると、
「できるだけ多くの人に買ってもらいたい」と思いがちです。
しかし、すべての顧客に合わせようとすると、
商品や広告の内容がぼやけ、
誰にも強く響かないものになる可能性があります。
例えば、商品の主な顧客が20代女性であるにもかかわらず、
広告の色や表現、販売方法が中高年男性向けになっていれば、
顧客に選ばれにくくなります。
まず、現在の顧客を振り返り、
次のような項目を整理してみましょう。
- 年齢・性別
- 居住地域
- 職業・業種
- 生活スタイル
- 購入理由
- 価格に対する考え方
- どこで自社を知ったか
- どの商品を繰り返し購入しているか
顧客像が明確になれば、
商品開発、広告、販売場所、価格などの判断がしやすくなります。
4.STPで顧客と市場を整理する
顧客を中心に考える代表的な方法として、
「STP」という考え方があります。
STPは、次の3つの頭文字を取ったものです。
- S:Segmentation(セグメンテーション)―市場を分ける
- T:Targeting(ターゲティング)―狙う顧客を決める
- P:Positioning(ポジショニング)―選ばれる理由をつくる
① セグメンテーション―市場を分ける
市場にいる顧客を、
年齢、性別、地域、業種、生活スタイル、価値観などで分けます。
法人向けの商品であれば、
会社規模、業種、地域、従業員数、経営課題などで分けることもできます。
② ターゲティング―狙う顧客を決める
分けた顧客層の中から、
自社が最も価値を提供しやすく、
利益も確保しやすい顧客を選びます。
中小企業では、経営資源が限られているため、
対象を絞ることが特に重要です。
③ ポジショニング―選ばれる理由をつくる
ターゲット顧客から見たときに、
競合ではなく自社を選ぶ理由を明確にします。
例えば、同じ税理士事務所でも、
「低価格」「相続に強い」「IT活用に強い」「毎月訪問」「経営支援」など、
選ばれる理由は異なります。
自社がどの分野で一番になれるのか、
顧客からどのように覚えてもらいたいのかを考えます。
5.STPを考える具体例
例えば、地域の飲食店向けにWebサイト制作を提供している会社を考えてみます。
セグメンテーション
- 飲食店、美容室、小売店、建設業など業種別に分ける
- 創業直後、成長期、老舗企業など経営段階で分ける
- Web集客に積極的かどうかで分ける
ターゲティング
「地域密着で営業している飲食店のうち、
SNSは使っているが、自社サイトからの予約が少ない店舗」
を主な顧客として選びます。
ポジショニング
「きれいなホームページを作る会社」ではなく、
「地域の飲食店に特化し、予約につながるWebサイトとSNS連携を支援する会社」
として打ち出します。
このように整理すると、
誰に何を伝えるべきかが明確になり、
広告の内容も具体的になります。
6.マーケティングの4Pで販売方法を整理する
顧客と自社の立ち位置を整理した後は、
どのように商品を提供するかを考えます。
代表的な考え方が「マーケティングの4P」です。
- Product(製品)―何を売るか
- Price(価格)―いくらで売るか
- Place(流通)―どこで売るか
- Promotion(販売促進)―どう知らせ、購入を促すか
Product―何を売るか
顧客のニーズを満たす商品やサービスになっているかを考えます。
商品そのものだけでなく、
保証、アフターサービス、使いやすさ、納期、相談対応なども
顧客にとっての価値に含まれます。
Price―いくらで売るか
価格は、原価に利益を加えるだけで決めるものではありません。
顧客が感じる価値、競合価格、自社の強み、販売量なども踏まえて決めます。
安くすれば必ず売れるわけではなく、
安すぎることで品質に不安を持たれる場合もあります。
Place―どこで売るか
店舗、訪問営業、代理店、自社Webサイト、ECモール、SNSなど、
顧客が購入しやすい場所や方法を考えます。
どれほど良い商品でも、
顧客が見つけにくく、購入しにくければ売上にはつながりません。
Promotion―どう知らせるか
広告、営業、SNS、口コミ、メール、イベントなど、
顧客へ価値を伝える方法を考えます。
大切なのは、単に目立つことではなく、
ターゲット顧客が抱える問題と、
自社の商品がどのように役立つかを具体的に伝えることです。
7.多くの企業が「広告」から始めて失敗する理由
マーケティングの4Pのうち、
広告や販促にあたるPromotionは一番分かりやすいため、
最初に取り組まれがちです。
しかし、顧客や商品、価格、販売方法を整理しないまま広告を出しても、
費用ばかりかかり、期待した成果が出ないことがあります。
例えば、次のような状態です。
- 誰に向けた広告か分からない
- 競合との違いが伝わらない
- 問い合わせ後の営業体制が整っていない
- 価格とサービス内容が顧客の期待に合っていない
- 広告ページから申込みまでの流れが分かりにくい
広告費を増やす前に、
STPと4Pを確認し、
売れるための土台を整えることが必要です。
8.自社の価値を一言で説明できますか
商品開発や販売戦略を考える際は、
「顧客に対して、自社はどのような価値を提供する会社なのか」
を一言で表すことが有効です。
例えば、次のような形です。
「当社は、〇〇に悩む△△の顧客に対して、
□□という方法で、◇◇という価値を提供する会社です。」
税理士事務所であれば、
「地域の中小企業に対して、毎月の数字を早く確定し、
経営判断と資金繰りに役立つ支援を提供する」
といった表現が考えられます。
この一文が明確になれば、
ホームページ、営業資料、SNS、採用活動などの表現にも一貫性が生まれます。
9.数字で検証し、改善を続ける
マーケティングは、考えて終わりではありません。
実際に施策を行い、
結果を数字で確認しながら改善します。
例えば、次の数字を確認します。
- 問い合わせ件数
- 成約率
- 顧客1件を獲得するための広告費
- 客単価
- リピート率
- 商品別・顧客別の粗利益
- Webサイトの閲覧数や問い合わせ率
売上だけでなく、
どの顧客、商品、広告が利益につながっているかを確認することが重要です。
広告費を増やして売上が伸びても、
利益が減っていれば施策の見直しが必要です。
会計データとマーケティングの数字を結びつけることで、
より正確な経営判断ができます。
10.中小企業が最初に取り組みたい5つのステップ
- 現在の顧客を分析する
売上や利益への貢献が高い顧客の共通点を確認します。 - 顧客のニーズを整理する
商品そのものではなく、顧客が解決したい問題を考えます。 - ターゲットを決める
自社が価値を提供しやすい顧客層へ絞ります。 - 自社の価値を一言で表す
競合ではなく自社を選ぶ理由を整理します。 - 4Pを見直して実行・検証する
商品、価格、販売方法、販促を整え、数字で効果を確認します。
最初から完璧な戦略を作る必要はありません。
小さく試し、結果を確認し、
顧客の反応を見ながら改善することが大切です。
11.税理士事務所からのワンポイントアドバイス
マーケティング施策は、
売上を増やすことだけでなく、
利益と資金繰りへの影響まで確認する必要があります。
新しい広告や商品開発を行う前には、
次の点を数字で確認しましょう。
- 追加で必要になる費用
- 何件売れれば費用を回収できるか
- 粗利益はいくら残るか
- 入金までにどの程度の期間がかかるか
- 人員や設備を増やす必要があるか
- 手元資金で実行できるか
売上が増えても、
値引きや広告費、人件費が増えすぎれば利益は残りません。
会計データを活用し、
商品別・顧客別・施策別の採算を確認することで、
持続的に売れる仕組みをつくることができます。
売上だけでなく、利益が残る仕組みを一緒に考えませんか
澤田匡央税理士事務所では、
毎月の会計データをもとに、
売上、粗利益、固定費、資金繰りなどを確認し、
中小企業の経営改善を支援しています。
「売上は増えているのに利益が残らない」
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このようなお悩みがある場合は、お気軽にご相談ください。
まとめ
マーケティングとは、
単に広告を出すことではなく、
顧客に選ばれる仕組みをつくることです。
まず、顧客のニーズとウォンツを把握し、
STPによって狙う顧客と自社の立ち位置を整理します。
そのうえで、
商品、価格、販売方法、販促という4Pを組み合わせ、
顧客に価値を届けます。
中小企業は、すべての顧客を狙うのではなく、
自社の強みが最も生きる顧客へ集中することが重要です。
施策を実行した後は、
売上だけでなく利益や資金繰りまで確認し、
小さな改善を積み重ねていきましょう。
参考資料
本記事は、澤田匡央税理士事務所の事務所通信9月号の内容をもとに、
中小企業の経営者向けに再構成したものです。
※本記事はマーケティングの基本的な考え方を紹介するものです。
実際の戦略は、業種、地域、顧客構成、競合状況、経営資源などにより異なります。







