「今期は利益が出ているみたいだけど、税金はいくらくらいになる?」
社長が経理担当者や税理士へこう聞いたとき、
「決算を締めてみないと分かりません」
「まだ計算できません」
「申告のときにお知らせします」
という返事が返ってきていないでしょうか。
もちろん、決算が終わる前に税額を1円単位で確定することはできません。
しかし、毎月の会計処理が適切に行われ、会社の状況を把握できていれば、
決算前でも「現時点ではこのくらいの利益・税額になりそう」という見込みを立てることは可能です。
納税額が分かるのが決算直前では、資金準備も節税策の検討も後手に回ります。
第2話では、「今期はいくら税金が出る?」にすぐ答えられない会社に共通する問題と、
社長が決算前から確認しておきたい数字について解説します。
1.税金は「決算が終わってから考えるもの」ではありません
法人税などの税額は、最終的な決算内容をもとに計算します。
そのため、決算前の税額はあくまで見込額です。
しかし、だからといって決算日まで何も分からないわけではありません。
例えば、毎月の試算表が翌月の早い段階で完成し、
売上・仕入れ・人件費・経費などが適切に処理されていれば、
現在までの利益を把握できます。
さらに、決算までの売上や経費、賞与、設備投資などの予定を加えれば、
期末の利益をある程度予測できます。
その利益予測をもとに、法人税等や消費税の納税見込額を確認しておけば、
社長は納税資金を事前に準備できます。
「税額を確定する」のは決算後でも、「税額を予測する」のは決算前から行う。
この違いが重要です。
2.共通点① 毎月の会計処理が遅れている
納税予測ができない会社で最初に確認したいのが、
毎月の会計処理のスピードです。
例えば8月になっても5月や6月の帳簿が完成していなければ、
現在の利益がいくらなのか正確に把握できません。
当然、その先の決算利益や納税額も予測しにくくなります。
月次処理が遅れる原因には、次のようなものがあります。
- 領収書や請求書の提出が遅い
- 銀行口座やクレジットカードの処理がたまっている
- 売上計上が月ごとに整理されていない
- 会社と税理士事務所の資料のやり取りに時間がかかっている
- 税理士事務所からの確認事項が長期間止まっている
決算予測を早く行うためには、
まず毎月の数字を早く確定できる仕組みが必要です。
3.共通点② 試算表を作るだけで、決算予測をしていない
毎月試算表が届いているから安心、とは限りません。
試算表は基本的に「これまでに起きたこと」を表す資料です。
例えば、9月末までの試算表には、
原則として9月までの実績が表示されています。
しかし、3月決算の会社であれば、その後まだ半年あります。
社長が知りたいのは、
「9月までにいくら儲かったか」だけではなく、
「このままいくと3月の決算ではいくら利益が出て、税金はいくらになるのか」
ではないでしょうか。
そのためには、試算表に加えて、
残りの期間の売上・粗利益・人件費・経費などを予測する必要があります。
試算表を作成して終わりではなく、
そこから決算予測へつなげることが重要です。
4.共通点③ 決算までに発生する大きな支出を把握していない
決算予測では、単純に「現在の利益×12か月」で考えればよいわけではありません。
会社には、毎月同じように発生する経費だけでなく、
特定の時期に発生する大きな支出があります。
- 賞与
- 決算賞与
- 保険料
- 修繕費
- 広告宣伝費
- 設備投資
- 車両購入
- 退職金
- 年払いのシステム利用料や会費
こうした予定を把握せずに納税予測をすると、
実際の決算利益と大きくずれることがあります。
逆に言えば、社長と経理担当者、税理士が決算までの予定を共有していれば、
予測精度を高めることができます。
5.共通点④ 売掛金・在庫・減価償却などの決算調整を考えていない
決算時には、単純な入出金だけでは判断できない会計処理があります。
例えば、商品を大量に仕入れていても、
期末に在庫として残っていれば、その全額が当期の経費になるとは限りません。
また、高額な機械や車両などを購入した場合も、
原則として購入額の全額がその期の経費になるのではなく、
減価償却によって一定期間にわたり費用化します。
ほかにも、未払費用、前払費用、売掛金、買掛金など、
決算時に確認すべき項目があります。
こうした項目まで考慮しなければ、
「通帳を見る限りお金を使ったから利益は減るだろう」と思っていたのに、
想定より利益が大きくなり、税額も増えたということが起こります。
6.共通点⑤ 法人税だけを見て、消費税を忘れている
納税資金を考えるときに注意したいのが消費税です。
法人税等は基本的に所得をもとに計算しますが、
消費税は別の仕組みで計算されます。
そのため、会社の利益が少ない、あるいは赤字であっても、
消費税の納税が発生する場合があります。
また、売上とともに入金された消費税相当額を日々の運転資金として使っていると、
申告時にまとまった納税額が必要になり、
資金繰りが急に苦しくなることがあります。
納税予測では、法人税等と消費税を分けて確認することが大切です。
消費税の納税額が大きい会社では、中間申告・中間納付が必要になることもあります。
年間の納税スケジュールも含めて資金を準備しておきましょう。
※中間納付にも注意しましょう。
前期の納税額などによっては、期中に「中間納付(法人税・消費税)」が必要となる場合があります。
「税金は決算後にまとめて払うもの」と考えていると、期中の納付で資金繰りが想定外に厳しくなることがあります。
決算時の確定納税額だけでなく、年間を通じた納税スケジュール全体を把握しておくことが大切です。
7.税額を早めに知る最大のメリットは「資金を準備できること」
決算前に納税見込額を確認する最大のメリットは、
節税できることだけではありません。
むしろ重要なのは、
納税に必要なお金を前もって準備できることです。
例えば、決算3か月前の時点で、
法人税等と消費税を合わせて500万円程度の納税が見込まれると分かっていれば、
会社はその500万円を意識して資金繰りを考えられます。
設備投資を少し先に延ばす、
借入れを検討する、
売掛金の回収を早める、
納税資金を別口座に確保するなど、
時間があれば選択肢は増えます。
一方、申告期限の直前に「500万円必要です」と言われても、
会社ができることは限られます。
8.「税金が高いから何か買おう」は正しいのでしょうか?
納税見込額を聞いて、
「そんなに税金を払うくらいなら何か買おう」
と考える社長もいます。
しかし、節税だけを目的に不要なものを購入するのはおすすめできません。
例えば100万円を経費として使ったからといって、
税金が100万円減るわけではありません。
会社からは100万円の現金が出ていきます。
税負担が減ったとしても、結果として手元資金が減る可能性があります。
重要なのは、
「税金を減らすこと」ではなく「税金を払った後に会社へいくらお金を残すか」
という視点です。
必要な設備投資、人材採用、広告、修繕などを前倒しすることが会社の成長につながるのであれば検討する価値があります。
しかし、「税金を払いたくないから使う」という判断は慎重に行いましょう。
9.社長はいつ納税予測を確認すればよい?
会社の業種や規模によって異なりますが、
決算直前に一度だけ確認するのではなく、
期中から定期的に確認することをおすすめします。
例えば3月決算の会社なら、次のようなイメージです。
- 期首~3か月: 前期実績を踏まえ、今期の計画を確認
- 半期: 上半期の実績から年間利益を予測
- 決算3か月前: 決算予測と納税見込額を具体的に確認
- 決算1~2か月前: 最終予測を行い、必要な対策を検討
業績の変動が大きい会社であれば、
毎月または数か月ごとに予測を更新した方がよいでしょう。
一度作った予測をそのまま使うのではなく、
実績に合わせて更新することがポイントです。
10.決算前に税理士へ聞いておきたい6つの質問
社長が税理士から試算表の説明を受けるときは、
次のような質問をしてみてください。
- このままいくと、今期の利益はいくらになりそうですか?
- 法人税等はいくらくらいになりそうですか?
- 消費税はいくらくらいになりそうですか?
- 納税後の預金残高はどのくらいになりそうですか?
- 今期中に予定している設備投資をしても資金は大丈夫ですか?
- 決算までに検討しておくべきことはありますか?
このような質問に対して、
現在の数字だけでなく今後の見込みまで含めて説明してもらえると、
社長は決算前に行動できます。
11.良い決算対策は「節税」だけではありません
決算対策というと、節税策を探すことだと思われがちです。
しかし、本来の決算対策にはもっと広い意味があります。
- 今期の利益を予測する
- 納税額を予測する
- 納税資金を準備する
- 設備投資の時期を検討する
- 借入れや返済計画を確認する
- 来期の経営計画につなげる
利益が出るのであれば、適切な税金を支払い、
会社に資金を残して自己資本を厚くすることも重要な経営判断です。
金融機関との関係を考えても、
単純に利益をできるだけ小さくすることが常に会社にとって最善とは限りません。
12.「申告のための会計」から「経営のための会計」へ
年に一度、決算が終わってから税額を知らされるだけでは、
会計データを経営に十分活用できているとは言いにくいでしょう。
毎月の数字を早くまとめ、
現在地を確認し、
決算までの利益と税額を予測する。
そして、その情報をもとに、
投資、採用、借入れ、返済、納税などを判断する。
これが「経営のための会計」です。
税金は決算後に突然発生するものではありません。
利益が積み上がっていく過程で、納税見込額も徐々に見えてきます。
社長がその数字を早く知ることができれば、
経営判断にも余裕が生まれます。
税理士事務所からのワンポイントアドバイス
「税金はいくらになりますか?」という質問に対して、
決算直前まで何も分からない状態が毎年続いているなら、
一度、会社の月次決算の流れを確認してみてください。
資料提出が遅いのか、
会計処理に時間がかかっているのか、
それとも試算表は完成しているのに決算予測を行っていないのか。
原因が分かれば改善できます。
納税額を早く知る目的は、税金を恐れることではなく、
会社が余裕を持って次の一手を考えられるようにすることです。
決算直前になって、突然税額を知らされていませんか?
澤田匡央税理士事務所では、
毎月の会計数字を確認しながら、
決算までの利益や納税額について早めに見通しを立てることを重視しています。
「今年はいくら税金が出そうか早めに知りたい」
「納税資金を準備しておきたい」
「設備投資をしてよいか相談したい」
「決算前に何を検討すべきか知りたい」
「数字を経営判断に使えるようにしたい」
このようなお悩みがある経営者の方は、お気軽にご相談ください。
まとめ
決算前に税額を1円単位で確定することはできませんが、
毎月の会計処理が適切に行われていれば、
利益や納税額の見込みを早めに把握することは可能です。
「今期はいくら税金が出る?」に答えられない背景には、
月次処理の遅れ、決算予測の不足、将来の支出予定の未把握などが隠れていることがあります。
社長が確認すべきなのは、
単なる現在の利益だけではありません。
決算時の利益はいくらになりそうか。
法人税等と消費税はいくらになりそうか。
そして、納税した後に会社へいくら現金が残るのか。
この3つを早めに確認できる体制をつくることが、
安心して経営判断を行うための重要な一歩です。







