「領収書さえ残しておけば経費にできる」と考えてしまう方は少なくありません。
しかし、実際には領収書の有無だけで経費になるかどうかが決まるわけではありません。
その支出が事業に関係しているか、内容が確認できるか、帳簿と整合しているかが大切です。
また、近年は紙の領収書だけでなく、メール添付のPDFやECサイトの購入履歴など、
電子取引データの保存ルールも重要になっています。
この記事では、領収書やレシートの基本的な考え方と、電子保存のポイントを整理して解説します。
1.領収書があれば、必ず経費にできるわけではありません
経費として認められるかどうかは、単に領収書があるかではなく、
その支出が事業のために必要なものかで判断されます。
たとえば、売上を得るために直接要した費用や、業務上必要な販売費・一般管理費などは必要経費になり得ますが、
私的な支出は領収書があっても経費にはなりません。
そのため、税務調査でも確認されるのは「領収書があるか」だけではなく、
日付、金額、取引先、支出内容、業務との関係が説明できるかどうかです。
2.レシートでもよい? 宛名がないとだめ?
実務では、手書きの領収書だけでなく、レシート、利用明細、請求書なども取引の証拠書類になります。
特に日付・金額・購入先・内容が具体的に記載されているレシートは、内容確認がしやすい書類です。
ただし、「宛名がなくても問題ない」と一律にはいえません。
通常の経費証憑としては、取引内容や事業関連性が確認できれば、宛名がない書類でも直ちに否認されるとは限りません。
一方で、消費税のインボイス制度では、原則として適格請求書には
「書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称」、すなわち宛名の記載が必要です。
もっとも、小売業、飲食店業、タクシー業など、不特定かつ多数の者に販売等を行う一定の事業では、
適格簡易請求書を交付することができ、この場合は宛名の記載が省略できます。
そのため、コンビニ、飲食店、スーパーなどのレシートでは、宛名がなくてもインボイスとして取り扱えるケースがあります。
また、3万円未満の公共交通機関による旅客の運送については、
インボイスの交付義務が免除される特例があります。
そのため、電車やバスなど一定の交通費では、通常の請求書や領収書とは異なる扱いになる場合があります。
なお、交際費や会議費、出張旅費などは、書類だけでは事業関連性が分かりにくいことがあります。
その場合は、次のような補足を残しておくと安心です。
- 会議・会食の相手先
- 参加人数
- 目的
- 出張先・訪問先
- 業務との関係
3.領収書がもらえなかった場合はどうする?
自動販売機、慶弔費、交通費の一部など、領収書を受け取りにくい支出もあります。
そのような場合は、何も残さないのではなく、出金伝票や精算書を作成して記録を残すことが重要です。
最低限、次の事項は記録しておきましょう。
- 支払日
- 支払先
- 金額
- 支払内容
- 業務との関係
また、クレジットカード払いであれば、利用明細だけでなく、可能であれば購入内容が分かる書類もあわせて保管しておくと、
後日の確認がしやすくなります。
4.電子で受け取った領収書や請求書は、紙に印刷するだけでは足りません
メール添付のPDF、ECサイトの購入画面、クラウドサービス上の請求書データなど、
取引情報を電子的に授受した場合、そのデータは電子取引データとして扱われます。
これらは、紙に印刷して保存するだけでは足りず、電子データのまま保存することが必要です。
このルールは、法人だけでなく個人事業者にも適用されます。
5.電子取引データ保存の基本ルール
電子取引データを保存する場合は、主に次のポイントを押さえる必要があります。
(1)改ざん防止の措置をとる
次のいずれかの対応が必要です。
- タイムスタンプが付与されたデータを受領する
- 受領したデータにタイムスタンプを付与する
- 訂正・削除の履歴が残る、または訂正・削除ができないシステムで保存する
- 改ざん防止のための事務処理規程を定め、運用し、備え付ける
(2)画面や出力環境を備える
保存したデータを確認できるよう、ディスプレイやプリンタ、操作説明書等を備えておく必要があります。
(3)検索できるようにする
原則として、「日付」「金額」「取引先」の3項目で検索できる必要があります。
さらに、次のいずれかの要件が求められます。
- 日付または金額で範囲指定検索ができること
- 2つ以上の項目を組み合わせて検索できること
- 税務調査等でデータのダウンロードの求めに応じられること
なお、基準期間(2年前・2期前)の売上高が5,000万円以下である場合などは、
ダウンロードの求めに応じられる状態であれば、検索要件の一部が不要となる取扱いがあります。
6.領収書や請求書の保存期間は?
法人の場合
法人は、帳簿や領収書、請求書、契約書などの書類を、
原則として確定申告書の提出期限の翌日から7年間保存する必要があります。
なお、青色申告書を提出した事業年度で欠損金額が生じた事業年度や、
青色申告書を提出しなかった事業年度で災害損失金額が生じた事業年度については、
保存期間は10年間となります。
個人事業者の場合
個人事業者は、帳簿や書類について保存義務があります。
一般的に、書類は5年間、帳簿は7年間とされる取扱いがあります。
また、消費税の課税事業者が保存すべき請求書等や、適格請求書発行事業者として交付した写し等については、
7年間の保存が必要です。
7.社内で決めておきたい実務ルール
領収書の管理を担当者任せにすると、紛失や入力漏れ、公私混同の原因になります。
そのため、社内では次のようなルールを決めておくことをおすすめします。
- 領収書・レシートは受領後すぐに提出する
- 用途不明の支出には、メモを添付する
- 会食や打合せの費用は、参加者・目的を記録する
- 電子で受け取った請求書・領収書は、所定の保存場所へ速やかに格納する
- 個人立替や仮払精算の締切日を決める
- クレジットカード利用分は、明細と証憑を対応づけて保管する
- インボイスの保存が必要な取引では、登録番号・記載事項・取引内容を確認する
小さなルールでも徹底すると、記帳の精度が上がり、月次試算表の信頼性向上や税務調査への備えにつながります。
8.会計ソフトを活用すると、電子保存はよりスムーズになります
電子取引への対応は、手作業だけで続けようとすると、保存漏れや検索性の不足が起こりやすくなります。
そのため、電子帳簿保存法に対応した会計ソフトや証憑保存機能を活用すると、
保存・検索・仕訳連携をまとめて行いやすくなります。
たとえば、TKCのFXシリーズでは、電子取引データの保存機能や証憑と仕訳の紐付け機能が案内されており、
JIIMAの認証制度に関する情報も公表されています。
自社に合った仕組みを選ぶことで、法令対応と経理効率化を両立しやすくなります。
まとめ
領収書は大切な証拠書類ですが、「領収書がある=自動的に経費になる」わけではありません。
大切なのは、事業との関係が説明でき、帳簿と証憑が整っていることです。
また、電子で受け取った請求書や領収書は、電子帳簿保存法に沿って適切に保存しなければなりません。
さらに、消費税の仕入税額控除を考える場面では、インボイス制度に沿った記載事項の確認も重要です。
日々の管理方法を見直し、紙・電子の両方についてルールを整備することが、正しい経理と安心経営の第一歩です。
領収書の整理方法や電子保存の運用ルールづくりでお困りの際は、顧問税理士に早めに相談することをおすすめします。
参考資料
- 国税庁「電子帳簿等保存制度特設サイト」
- 国税庁「インボイス制度について」
- 国税庁「適格請求書の記載事項」
- 国税庁「適格請求書の交付義務が免除される取引」
- 国税庁「No.5930 帳簿書類等の保存期間」







