経理担当者が「この税理士事務所、もう限界…」と思う瞬間⑨
質問をすれば答えてくれる。申告書も期限内に作ってくれる。税務署から連絡があれば対応してくれる。それでも、経理担当者が税理士事務所との関係に物足りなさを感じることがあります。
それは、会社から質問しない限り、税理士事務所から何の提案もないときです。
「それは聞かれなかったので説明していません」
「会社から相談がなかったので対応していません」
「申告には問題ありません」
税務申告だけを考えれば、間違いではないのかもしれません。しかし、経理担当者や社長が本当に求めているのは、申告書を作ることだけではありません。
納税額が増えそうなら早めに知らせてほしい。資金が不足しそうなら事前に対策を考えたい。使える制度や改善できる業務があるなら提案してほしい。そう考えるのは自然なことです。
今回は、「聞けば答えるだけ」の税理士事務所に経理担当者が限界を感じる理由と、会社に寄り添う提案型の税理士事務所を見極めるポイントを解説します。
1.経理担当者は、何を質問すればよいか分からない
税理士事務所から「分からないことがあれば何でも聞いてください」と言われることがあります。
一見すると親切な言葉ですが、経理担当者や社長が、税務や会計に関するすべての論点を把握しているわけではありません。
知らない制度について質問することはできません。将来起こるかもしれない税務上の問題も、専門知識がなければ予測できません。
例えば、設備投資を検討している会社があっても、購入時期や資金調達方法によって税務・資金繰りへの影響が変わることを知らなければ、税理士へ相談するタイミングを逃してしまいます。
だからこそ税理士事務所には、会社から質問されるのを待つだけではなく、会社の状況を見ながら「今、この点を確認した方がよいのではありませんか」と声をかける姿勢が求められます。
2.「申告に問題がない」と「経営に役立っている」は別の話
税務申告が正確に行われていることは、税理士事務所として重要な役割です。
しかし、申告書に誤りがないことと、会社が税理士を経営に活用できていることは同じではありません。
決算が終わった後に税額を伝えられても、会社は納税資金を準備するしかありません。利益が出ることを数か月前に把握できていれば、納税準備や必要な投資について落ち着いて検討できた可能性があります。
売掛金が増え続けていても、申告書を作るだけなら問題にならないことがあります。しかし、入金が遅れれば資金繰りに影響します。
会計上・税務上の処理が正しくても、経営上の問題が放置されていることはあります。
信頼できる税理士事務所は、申告の正確性を守りながら、数字から見える経営課題にも目を向けます。
3.提案がない税理士事務所で起こりやすいこと
税理士事務所から提案がない状態が続くと、会社ではさまざまな機会損失が起こります。
- 納税見込みを把握できず、決算直前に慌てる
- 資金繰りの悪化に気づくのが遅れる
- 設備投資や採用の判断が感覚頼みになる
- 利用できる制度を検討しないまま期限を迎える
- 経理業務の非効率な方法を何年も続ける
- 金融機関へ相談する時期が遅れる
- 事業承継や相続対策を先送りする
これらは、税理士から一方的に答えを出せる問題ではありません。
ただし、税理士事務所が早めに論点を示し、会社と一緒に検討することで、選択肢を増やすことはできます。
提案とは、会社に特定の方法を押しつけることではありません。会社が判断できるように、必要な情報と選択肢を適切な時期に示すことです。
4.本当に必要なのは「節税提案」だけではない
「提案してくれる税理士」と聞くと、節税策をたくさん教えてくれる税理士を想像するかもしれません。
もちろん、適切な税務対策を検討することは大切です。しかし、会社にとって有益な提案は節税だけではありません。
例えば、次のような提案も重要です。
- 月次決算を早めるための資料提出方法の見直し
- 請求書や領収書の電子化・クラウドツール(共有ストレージや会計ソフト連携等)を活用した共有方法の改善
- 売上や粗利益率の目標設定
- 数か月先までの資金繰り表の作成
- 借入返済を含めた資金計画の確認
- 納税額の早期予測と納税資金の準備
- 経営計画や予算と実績の比較
- 金融機関へ説明する資料の整備
税金を一時的に減らしても、必要のない支出を増やせば会社の現金は減ります。
目先の節税だけではなく、利益、資金繰り、業務効率、将来の成長を含めて考えることが、本当の意味で会社に役立つ提案です。
5.良い提案には「タイミング」がある
同じ提案でも、伝える時期が遅ければ実行できないことがあります。
決算日を過ぎてから「設備投資を検討してもよかったですね」と言われても、過去には戻れません。
資金が不足してから金融機関へ相談するより、資金繰り表で不足の可能性が見えた段階で相談した方が、準備できる資料も選択肢も増えます。
従業員を採用した後に人件費負担を計算するのではなく、採用前に必要売上高や資金への影響を確認する方が安心です。
税理士事務所の提案力は、提案内容だけでなく、会社が判断し実行できる時期に伝えられるかどうかで決まります。
そのためには、年に一度の決算時だけではなく、毎月または定期的に会社の数字と予定を確認する機会が必要です。
6.提案型の税理士は、会社の予定を聞いている
税理士が会社に合った提案をするためには、過去の数字を見るだけでは足りません。
今後の予定や社長の考えを把握する必要があります。
例えば、定期的な面談で次のようなことを確認します。
- 今後、大きな設備投資を予定しているか
- 従業員の採用や賃上げを検討しているか
- 新しい店舗や事業を始める予定があるか
- 借入や借換えを考えているか
- 役員報酬を見直す予定があるか
- 後継者や事業承継について考えているか
- 社長個人の相続や資産について不安があるか
会社の未来を知らなければ、税理士事務所は適切な時期に提案できません。
逆に、税理士事務所から予定を尋ねられることで、社長自身も将来の計画を整理しやすくなります。
7.経理担当者が感じる「こちらから言わないと動かない」疲れ
提案のない税理士事務所では、経理担当者が毎回、問題を発見し、質問内容を整理し、回答を催促しなければなりません。
税理士へ相談すべき事項かどうかを経理担当者が判断し、社長へ説明し、必要な資料を準備するという流れが続くと、大きな負担になります。
さらに、相談した結果が「特に問題ありません」の一言だけでは、経理担当者は本当に確認できているのか不安になります。
経理担当者が望んでいるのは、何でも税理士に任せることではありません。
専門家の視点から見落としを補い、必要な時に声をかけてもらえる関係です。
会社側と税理士事務所側の双方が情報を出し合い、一緒に課題を見つける体制が理想です。
8.提案と「過度な営業」は違う
税理士事務所からの提案に対して、「不要なサービスを売り込まれるのではないか」と不安に感じる方もいるでしょう。
しかし、会社に必要な提案と、税理士事務所の都合による営業は違います。
信頼できる提案には、次のような特徴があります。
- 提案する理由が会社の数字や状況に基づいている
- メリットだけでなく費用や注意点も説明する
- 複数の選択肢を示す
- 実行しない場合の影響も説明する
- 最終判断を会社に委ねる
- 税務だけでなく資金への影響も考慮する
反対に、会社の状況を確認せず、毎回同じ商品やサービスを勧めるだけでは、伴走支援とはいえません。
提案を受けたときは、「なぜ今、この提案が必要なのか」を確認するとよいでしょう。
9.現在の税理士事務所に確認したい質問
税理士事務所から提案がないと感じる場合は、まず希望する支援を具体的に伝えてみましょう。
- 決算前に利益と納税額の予測をしてもらえますか
- 毎月の数字から改善点を提案してもらえますか
- 資金繰り表の作成や確認に対応していますか
- 設備投資や採用の前に相談できますか
- 予算と実績の比較を支援してもらえますか
- 経理業務の効率化について相談できますか
- 金融機関へ提出する資料について相談できますか
- 社長を交えた定期面談を行えますか
顧問契約の範囲によっては、記帳や申告のみが契約内容となっており、経営相談や資金繰り支援が含まれていない場合もあります。
どこまで対応してもらえるのか、追加料金が必要かどうかも含めて確認することが大切です。
10.信頼できる税理士事務所を見極めるポイント
提案型の税理士事務所かどうかは、契約前の相談や面談でもある程度確認できます。
次の点を見てみましょう。
- 会社の業種や経営課題について丁寧に質問する
- 税金だけでなく資金繰りや利益にも関心を持つ
- 会社の将来予定を確認する
- 提案内容を分かりやすい言葉で説明する
- 数字やグラフを使って根拠を示す
- できることとできないことを明確にする
- 相談や面談の頻度が契約前に説明されている
何でも提案しますと約束する事務所より、どのような資料を使い、どの時期に、どのような相談へ対応するのかを具体的に説明する事務所の方が信頼できます。
11.経理担当者から社長へ伝えるときの例
税理士事務所への不満を社長へ伝えるときは、「提案がない」という感覚的な表現だけでなく、会社に生じている影響を具体的に伝えましょう。
社長への伝え方の例
「申告や決算の処理はしてもらえていますが、利益や納税額の予測、資金繰り、設備投資について、こちらから質問しない限り提案を受けることがありません。経理側で相談事項をすべて見つけるのは難しいため、定期的に会社の数字や予定を確認し、必要な論点を早めに示してもらえる体制が必要だと思います。」
納税予測が遅かった、相談の機会がなかった、同じ作業を非効率なまま続けているなど、具体例を添えると改善の必要性が伝わりやすくなります。
12.税理士事務所からのワンポイントアドバイス
税理士事務所から有益な提案を受けるためには、会社側から将来の予定を早めに伝えることも大切です。
設備の購入、採用、役員報酬の変更、新規事業、借入、不動産の取得や売却などは、実行後では選べる対策が限られる場合があります。
まだ決定していない段階でも、「検討していること」として税理士へ伝えておけば、必要な確認事項や注意点を早めに整理できます。
税理士にすべてを任せるのではなく、会社の予定を共有し、税理士事務所が専門家として論点や選択肢を示す。この双方向の関係が、提案を経営に生かすための基本です。
申告だけでなく、会社の未来を一緒に考える税理士をお探しの方へ
澤田匡央税理士事務所では、申告書や試算表を作成するだけでなく、会社の数字と今後の予定を確認し、必要な課題を早めに共有することを大切にしています。
利益と納税額の予測、資金繰り、設備投資、採用、融資、経理業務の改善など、会社ごとの状況に合わせて一緒に検討します。
「質問しない限り、税理士から何も言われない」
「決算後に税金を知らされ、毎年慌てている」
「資金繰りや融資について相談したい」
「経理業務をもっと効率化したい」
「会社の将来を一緒に考えてくれる税理士を探している」
このようなお悩みがある場合は、お気軽にご相談ください。
まとめ
質問すれば答えてくれる税理士であっても、会社から聞かない限り何の提案もない状態では、経理担当者や社長が重要な論点を見落とす可能性があります。
会社に役立つ提案とは、節税策を勧めることだけではありません。
納税予測、資金繰り、利益改善、設備投資、採用、融資、経理業務の効率化などについて、会社が判断できる材料を適切な時期に示すことです。
現在の税理士事務所に物足りなさを感じている場合は、希望する支援内容と面談頻度を具体的に伝え、対応可能か確認してみましょう。
それでも「聞かれたことに答えるだけ」の状態が変わらない場合は、会社の現在だけでなく未来にも関心を持ち、課題や選択肢を一緒に考えてくれる税理士事務所を検討することも大切です。







