経理担当者が「この税理士事務所、もう限界…」と思う瞬間⑧
毎月の試算表は届く。決算書も作ってもらえる。税務申告も期限内に終わっている。それでも、経理担当者が税理士事務所に強い不満を感じることがあります。
それは、数字を見せるだけで、その意味を説明してくれないときです。
「今月は利益が出ていますね」
「売上は前年より増えています」
「経費が少し多いです」
「このままだと税金が出そうです」
この程度の説明だけでは、社長も経理担当者も、次に何をすればよいのか分かりません。
本当に知りたいのは、なぜ利益が増減したのか、資金繰りに問題はないのか、今後どのような対策が必要なのかということです。
今回は、「数字を説明してくれない税理士事務所」の問題点と、会社の経営に役立つ数字の説明とは何かを解説します。
1.試算表を渡すだけでは、経営支援とはいえない
試算表は、一定期間の売上、仕入れ、経費、利益、資産、負債などをまとめた重要な資料です。
しかし、数字が並んだ資料を渡すだけでは、十分とはいえません。
会計や財務に慣れていない社長にとっては、試算表を見ても、どこに注目すべきか分からないことがあります。
経理担当者であっても、日々の入力内容は分かっていても、会社全体の収益構造や資金の流れまで説明するのは簡単ではありません。
税理士事務所には、数字を作成するだけでなく、数字の背景を整理し、会社が判断できる言葉に置き換える役割が求められます。
2.「利益が出ています」で終わってはいけない理由
利益が出ていることは、会社にとって良いことです。
しかし、「利益が出ています」という説明だけでは不十分です。
確認すべきなのは、例えば次のような点です。
- 売上が増えたことで利益が出たのか
- 粗利益率が改善したのか
- 一時的な経費の減少によるものか
- 役員報酬や人件費の計上漏れがないか
- 未計上の仕入れや外注費が残っていないか
- 売掛金が増え、現金が不足していないか
帳簿上は利益が出ていても、預金残高が減っていることがあります。
例えば、売上を計上していても入金が数か月先であれば、利益と現金は一致しません。また、借入金の元金返済は経費にならないため、利益が出ていても資金が減ることがあります。
だからこそ、税理士事務所は「利益が出ています」で終わらず、その利益がどのように生まれ、現金の動きとどう違うのかまで説明する必要があります。
3.経理担当者が本当に知りたいのは「数字の理由」
経理担当者は毎月、請求書、領収書、預金明細、給与資料などを集め、会計処理を行っています。
そのため、単に「経費が増えています」と言われても、ある程度は自分で分かっています。
本当に知りたいのは、次のようなことです。
- なぜ前年より利益率が下がったのか
- どの経費が利益を圧迫しているのか
- 売上がいくらあれば黒字になるのか
- 今の人件費水準は会社にとって適正か
- このまま設備投資をしても資金は足りるか
- 決算までにどの程度の納税が見込まれるか
数字の増減を指摘するだけでなく、その原因を一緒に考え、会社が取るべき行動を示してもらえると、経理担当者も社長へ説明しやすくなります。
4.前年との比較だけでは見えないことがある
数字を説明する際、前年同月との比較は有効です。
しかし、前年より売上が増えた、経費が減ったという比較だけでは、会社の本当の状態が見えない場合があります。
例えば、次のような比較も重要です。
- 年間計画や予算との比較
- 前月までの推移との比較
- 粗利益率や営業利益率の推移
- 部門別、商品別、得意先別の採算
- 借入返済額を含めた資金の動き
- 数か月先の資金繰り予測
売上が前年を上回っていても、会社が立てた目標を大きく下回っているかもしれません。
また、全体では黒字でも、一部の部門や商品が赤字になっていることがあります。
試算表を「前年より良いか悪いか」だけで見るのではなく、会社の目標や経営課題と結びつけて確認することが大切です。
5.数字の説明がないと、社長の判断が感覚頼みになる
中小企業の社長は、現場の状況や顧客の反応をよく理解しています。
その経験や感覚は、経営に欠かせないものです。
一方で、数字による裏付けがなければ、投資や採用、値上げなどの重要な判断を誤る可能性があります。
例えば、最近忙しくなったという感覚だけで従業員を増やしても、採用後の人件費を支える利益がなければ資金繰りが厳しくなります。
新しい機械を購入したいと考えても、今後の借入返済や納税を含めた資金残高を確認しなければ、手元資金が不足するかもしれません。
税理士事務所が数字を分かりやすく説明することで、社長は経験や感覚に数字の裏付けを加えて判断できるようになります。
6.「分かりやすい説明」とは、専門用語を減らすこと
税理士事務所から説明を受けても、専門用語ばかりで理解できないことがあります。
「売上総利益率が低下しています」
「固定比率が高くなっています」
「自己資本比率を改善する必要があります」
これらの言葉は間違いではありませんが、説明がなければ社長や経理担当者には伝わりません。
例えば、次のように会社の実情に置き換える必要があります。
専門用語だけの説明
「粗利益率が前年より3ポイント低下しています」
行動につながる説明
「売上は増えていますが、仕入価格の上昇を販売価格へ十分反映できていないため、商品を売るほど以前より利益が残りにくくなっています。主要商品の販売価格と仕入価格を確認しましょう。」
分かりやすい説明とは、数字を簡単に言い換えるだけではありません。
その数字が会社にどのような影響を与え、何を確認すべきかまで伝えることです。
また、複雑な数字の羅列ではなく、売上や利益、預金残高、粗利益率などの推移をグラフや図表で視覚的にひと目で分かる資料として説明してくれるかどうかも、信頼できる税理士事務所を見極める大切なポイントです。数字が苦手な経営者でも状況を直感的に把握できるため、社長と経理担当者が同じ認識で経営判断を進めやすくなります。
7.良い説明は「次の行動」まで示してくれる
数字の説明を受けた後に、会社が何をすべきか分からなければ、経営改善にはつながりません。
例えば、次のような提案が考えられます。
- 粗利益率が低下しているため、商品別の価格を見直す
- 売掛金の回収が遅れているため、得意先別の入金状況を確認する
- 人件費が増えているため、必要売上高を計算する
- 資金が減少しているため、3か月から半年先の資金繰り表を作る
- 利益が計画を上回っているため、納税見込みを早めに確認する
- 設備投資を予定しているため、融資の相談時期を検討する
税理士事務所が会社の状況に合わせて具体的な行動を示せば、社長も経理担当者も次に何をすべきか理解できます。
8.経理担当者が説明不足を補い続けるのは限界がある
税理士事務所から十分な説明がない場合、経理担当者が試算表を読み解き、社長へ説明している会社もあります。
しかし、経理担当者が会計入力、資料整理、支払い、請求、給与計算などを担当しながら、経営分析まで一人で行うのは大きな負担です。
税務上の判断が必要な内容や、同業他社との比較、金融機関への説明など、経理担当者だけでは対応が難しいこともあります。
さらに、経理担当者の説明と税理士事務所の見解が違えば、社内で混乱が生じます。
数字の説明は、経理担当者だけに任せるのではなく、税理士事務所が専門家として責任を持って行うべき業務です。
9.現在の税理士事務所に確認したいこと
数字の説明が不足していると感じた場合、まず現在の税理士事務所へ希望を伝えてみましょう。
- 毎月の試算表について説明を受けられるか
- 前年や計画との比較をしてもらえるか
- 利益だけでなく資金繰りも確認してもらえるか
- 納税見込みを早めに教えてもらえるか
- 社長を交えた面談に対応してもらえるか
- 設備投資や採用について相談できるか
- 経営計画や予算作成を支援してもらえるか
契約内容によっては、試算表の作成のみで、経営分析や面談が含まれていない場合があります。
必要な支援を追加できるのか、料金はいくらかかるのかを確認することが大切です。
10.信頼できる税理士は、会社に合わせて説明する
信頼できる税理士事務所は、すべての会社へ同じ説明をするのではありません。
会社の業種、規模、成長段階、経営課題に合わせて、見るべき数字を変えます。
売上拡大を目指す会社であれば、利益率や人員配置を確認します。
資金繰りに不安がある会社であれば、預金残高、借入返済、売掛金の回収状況を重点的に確認します。
事業承継を考えている会社であれば、利益だけでなく自社株評価や役員退職金、後継者への引継ぎも検討します。
大切なのは、数字を説明すること自体ではなく、その会社にとって重要な数字を選び、経営判断につなげることです。
11.経理担当者から社長へ伝えるときの例
税理士事務所の説明不足を社長へ伝える際は、単なる不満ではなく、会社への影響として説明すると伝わりやすくなります。
社長への伝え方の例
「毎月試算表は届いていますが、数字が増減した理由や今後の資金繰りについて説明を受ける機会がありません。私から分かる範囲では説明していますが、設備投資や採用、納税見込みなど専門的な判断が必要な内容は、税理士事務所から直接説明してもらう体制が必要だと思います。」
試算表の完成時期、面談の有無、質問への回答状況など、具体的な事実を添えると、改善の必要性を理解してもらいやすくなります。
12.税理士事務所からのワンポイントアドバイス
試算表や決算書は、税務署へ提出するためだけの書類ではありません。
会社が現在地を知り、次の行動を決めるための経営資料です。
税理士事務所から数字の説明を受けるときは、「良かった」「悪かった」だけで終わらせず、次の3点を確認してみましょう。
- なぜこの数字になったのか
- このまま進むと今後どうなるのか
- 会社は次に何をすべきか
この3点が明確になれば、試算表は過去を報告する資料から、未来を考える資料へ変わります。
数字を「見せるだけ」ではなく、分かる言葉でご説明します
澤田匡央税理士事務所では、試算表や決算書を作成してお渡しするだけでなく、数字の変化とその理由を分かりやすくご説明することを大切にしています。
利益、資金繰り、納税見込み、設備投資、採用など、会社が今後判断すべき事項を社長や経理担当者と一緒に確認します。
「試算表を受け取っても、どこを見ればよいか分からない」
「数字の説明がなく、経理担当者が社長へ説明している」
「利益は出ているのに、預金が増えない理由を知りたい」
「納税や資金繰りを早めに把握したい」
「現在の税理士事務所との付き合い方を見直したい」
このようなお悩みがある場合は、お気軽にご相談ください。
まとめ
数字を説明してくれない税理士事務所では、試算表や決算書が会社の経営に十分活用されません。
会社が本当に必要としているのは、数字の増減だけではなく、その理由、今後の見通し、取るべき行動についての説明です。
利益と現金の違い、売上と粗利益率の関係、納税見込み、将来の資金繰りなどを分かりやすく説明してもらえれば、社長はより安心して経営判断を行えます。
現在の税理士事務所から十分な説明を受けられていない場合は、まず希望する支援内容を具体的に伝えてみましょう。
それでも改善されない場合は、会社の数字を一緒に考え、未来の行動につなげてくれる税理士事務所への変更を検討することも一つの方法です。







