経理担当者が「この税理士事務所、もう限界…」と思う瞬間⑦
税理士事務所とのやり取りが、資料の提出と試算表の受け取りだけになっていないでしょうか。
「資料は毎月送っているけれど、担当者とはほとんど話さない」
「試算表は届くが、数字の説明はない」
「社長と税理士が話すのは、決算の直前だけ」
「経理上の疑問を相談する機会がない」
会計データが作成され、税務申告が期限内に提出されていれば、最低限の税務業務は行われているように見えます。
しかし、会社にとって本当に大切なのは、過去の数字をまとめることだけではありません。その数字を早く確認し、将来の経営判断に生かすことです。
税理士事務所による定期的な訪問や面談がなければ、売上の変化、利益率の低下、資金繰りの悪化、設備投資のタイミングなど、経営上の重要な変化を見逃してしまう可能性があります。
今回は、月次訪問や巡回監査がなぜ必要なのか、経理担当者と社長にどのようなメリットがあるのか、税理士事務所との関わり方を見直す際のポイントについて解説します。
1.月次訪問は「資料を回収する日」ではありません
月次訪問というと、税理士事務所の担当者が会社へ来て、領収書や請求書を確認する日というイメージを持つ方もいるかもしれません。
しかし、本来の月次訪問には、資料の確認以上の役割があります。
- 入力された会計データの確認
- 売上や利益の推移の確認
- 現預金や借入金の状況の確認
- 未処理取引や不明点の解消
- 税務上の注意点の共有
- 今後の売上、投資、採用予定の確認
- 社長や経理担当者からの相談対応
つまり、月次訪問は、過去の会計処理を確認するだけでなく、会社の現在地を確認し、次に何をすべきかを話し合う機会です。
資料を預かって帰るだけ、試算表をメールで送るだけでは、会社の経営に十分役立つ月次対応とはいえません。
2.巡回監査とは何をするものなのか
巡回監査とは、税理士事務所の担当者が会社を定期的に訪問し、会計帳簿や証拠書類、入力内容などを確認する業務です。
単に数字が合っているかを見るだけではありません。
取引が正しい勘定科目で処理されているか、売上や仕入れの計上時期に問題がないか、現預金残高が実際の残高と一致しているか、未処理の取引が残っていないかなどを確認します。
また、会社側で会計入力を行っている場合には、経理担当者が迷った処理や誤りやすい取引について、その場で確認・助言を受けることができます。
巡回監査の目的は、経理担当者の間違いを探すことではありません。
毎月の数字をできるだけ早く正確に確定し、社長が安心して経営判断に使える状態にすることです。
3.月次決算が早い会社ほど、問題にも早く気づける
月次決算とは、毎月の売上、仕入れ、経費、利益、資産、負債などを整理し、その月までの会社の状況を確定することです。
月次決算が早ければ、会社の変化にも早く気づけます。
- 売上は増えているのに利益が減っている
- 特定の経費が急に増えている
- 売掛金の回収が遅れている
- 在庫が増えすぎている
- 借入金の返済負担が重くなっている
- 現預金が予想以上に減っている
このような変化を翌月や翌々月に把握できれば、値上げ、経費の見直し、回収条件の変更、金融機関への相談など、早めに対策できます。
一方、決算直前まで数字が確定しない会社では、問題に気づいた時点ですでに選択肢が少なくなっていることがあります。
月次決算の目的は、きれいな試算表を作ることではありません。経営上の問題を早期に発見し、対策を取れる時間を確保することです。
4.試算表は「受け取るもの」ではなく「使うもの」
毎月試算表を受け取っていても、その内容を十分に活用できていない会社は少なくありません。
経理担当者が印刷してファイルへ綴じ、社長はほとんど見ていない。その状態では、試算表は税務申告のための資料になってしまいます。
試算表を見る際には、単月の数字だけでなく、次のような比較が重要です。
- 前年同月との比較
- 前月との比較
- 年間計画との比較
- 同業他社や業界水準との比較
- 部門別・商品別の比較
例えば、売上が前年より増えていても、粗利益率が下がっていれば、値引きの増加や仕入価格の上昇が起きている可能性があります。
利益が出ていても、売掛金や在庫が増えて現金が減っていれば、資金繰りには注意が必要です。
数字の意味を説明し、会社の行動につなげるところまで支援してこそ、月次試算表は経営に役立つ資料になります。
また、過去の数字である試算表を見るだけでなく、「今後3か月〜半年後に預金残高がどのように推移するか」という資金繰り表や資金繰り予測を税理士と一緒に確認しておくことも重要です。
資金ショートのリスクを早めに把握できれば、融資の相談や設備投資の時期の見直し、採用計画の調整など、余裕を持った経営判断ができます。試算表という「過去の数字」と、資金繰りという「未来の数字」の両方を確認できることが、伴走型の税理士事務所の大きな価値といえるでしょう。
5.月次訪問がないと、経理担当者が判断を抱え込みやすい
経理担当者は、日々さまざまな判断を求められます。
- この支出は修繕費か資産計上か
- この売上は今月に計上するのか
- この請求書の消費税区分は何か
- 社長個人の支出と会社経費をどう区分するか
- 未回収の売掛金をどう扱うか
- 新しい契約の会計処理をどうするか
定期的な面談がなければ、経理担当者は疑問をその都度メールや電話で質問しなければなりません。
質問するほどではないと考えて保留した結果、未処理が増え、後からまとめて修正することもあります。
毎月、確認事項をまとめて相談できる機会があれば、経理担当者は一人で判断を抱え込まずに済みます。
また、税理士事務所側も会社の取引内容や経理担当者の悩みを継続的に把握できるため、より具体的な助言がしやすくなります。
6.月次訪問は、社長と数字について話す貴重な機会
中小企業では、社長が営業、採用、現場対応、資金繰りなど多くの業務を担っています。
そのため、日常業務に追われ、会社の数字を落ち着いて確認する時間を取れないことがあります。
月次訪問があれば、毎月一度は社長が数字と向き合う時間を確保できます。
- 今月の売上と利益は計画どおりか
- 今後の受注見込みはどうか
- 資金繰りに不安はないか
- 設備投資を行う余力はあるか
- 採用や賃上げを実施できるか
- 納税資金をどのように準備するか
- 借入れや返済条件を見直す必要があるか
社長が頭の中で考えている予定や不安は、会計データだけを見ても分かりません。
数字と社長の考えを結びつけるためには、定期的な対話が必要です。
7.月次訪問によって見つかる「経営のチャンス」
月次訪問で見つかるのは、問題点だけではありません。数字を継続して確認することで、会社の成長につながる機会が見えてくることもあります。
設備投資のタイミング
利益、資金残高、借入返済額を確認することで、設備投資を行える時期や金額を検討しやすくなります。
採用や賃上げの判断
人件費を増やした場合に、どの程度の売上や粗利益が必要になるかを事前に確認できます。
価格改定の必要性
売上は増えているのに利益率が下がっている場合、仕入価格や人件費の上昇を販売価格へ十分反映できていない可能性があります。
資金調達の準備
資金が不足してから金融機関へ相談するのではなく、数か月先の資金繰りを予測して早めに準備できます。
節税策を検討する時間
利益見込みを早めに把握できれば、必要な設備投資、従業員への還元、役員報酬や保険の見直しなどを検討する時間が生まれます。
決算直前では実行できる対策が限られます。月次で数字を確認することにより、会社は多くの選択肢を持てるようになります。
8.訪問でなければ意味がないのか
月次面談は、必ずしも毎回対面でなければならないわけではありません。
会社の状況や距離、業務内容に応じて、オンライン面談を組み合わせる方法もあります。
重要なのは、訪問かオンラインかではなく、次の点が実現できているかです。
- 毎月の数字が早く確定している
- 会計処理の疑問が解消されている
- 経理担当者と税理士事務所が情報を共有している
- 社長が数字の説明を受けている
- 今後の経営課題を相談できている
資料をメールで送信し、完成した試算表が返ってくるだけでは、十分なコミュニケーションとはいえません。
対面訪問、オンライン面談、電話、共有クラウドなどを組み合わせながら、会社に合った月次対応を作ることが大切です。
9.会社側にも月次訪問を有効にする準備が必要
税理士事務所が毎月訪問していても、資料がそろっていなければ、十分な確認や経営相談はできません。
- 預金やクレジットカードの明細を早めにそろえる
- 請求書や領収書を月ごとに整理する
- 売掛金・買掛金の残高を確認する
- 不明な取引を一覧にしておく
- 社長への確認事項をまとめる
- 今後の投資や採用予定を共有する
例えば、共有クラウド内に「〇〇年〇月・月次確認用」というフォルダを作り、必要資料と質問事項を保存する方法もあります。
税理士事務所と提出期限や確認方法を決めておけば、訪問日までに会計データを整えやすくなります。
月次訪問は、税理士事務所だけが行うものではありません。会社と税理士事務所が協力して、毎月の数字を確定する共同作業です。
10.経理担当者から社長へ提案するときの伝え方
現在の税理士事務所に月次訪問や定期面談がなくても、経理担当者から社長へ言い出しにくいことがあります。
「税理士への不満」として伝えるのではなく、会社にどのような影響があるかを説明すると、社長にも理解されやすくなります。
社長への伝え方の例
「現在は税理士事務所へ資料を送り、試算表を受け取るだけになっています。会計処理の確認事項がたまりやすく、試算表の内容について説明を受ける機会もありません。毎月または定期的に面談を設け、数字の確認と今後の予定を相談できる体制にした方が、経営判断にも役立つと考えています。」
さらに、現在の試算表の完成時期、未処理件数、質問への回答状況などを具体的に伝えると、改善の必要性が分かりやすくなります。
11.現在の税理士事務所へ確認したいこと
- 毎月の試算表は、いつまでに完成するのか
- 月次訪問やオンライン面談に対応できるか
- 試算表の内容を説明してもらえるか
- 経営計画や資金繰りの相談ができるか
- 経理処理の疑問を定期的に確認できるか
- 訪問や面談には追加料金が必要か
- 担当者だけでなく税理士本人とも相談できるか
現在の契約内容に月次訪問が含まれていない場合もあります。その場合は、契約内容を変更して面談回数を増やす方法もあります。
重要なのは、会社が求めている支援内容と、現在の契約内容が合っているかを確認することです。
12.信頼できる税理士事務所の月次対応
- 毎月の確認日と資料提出期限が決まっている
- 試算表が早い時期に完成する
- 会計処理の誤りや不明点をその月のうちに解消する
- 前年や計画との比較を説明する
- 利益だけでなく資金繰りも確認する
- 納税見込みを早めに伝える
- 設備投資や採用など今後の予定を確認する
- 社長と経理担当者の双方が相談できる
毎月訪問していても、資料を確認して短時間で帰るだけでは、会社が期待する支援につながらないことがあります。
訪問の回数だけでなく、何を確認し、どのような説明や提案を受けられるかが重要です。
13.税理士事務所からのワンポイントアドバイス
月次訪問や巡回監査の目的は、会社を監視することではありません。
毎月の会計データを早く正確に確定し、社長と経理担当者が安心して数字を使える状態にすることです。
経理担当者が正確な資料を準備し、税理士事務所がその内容を確認し、社長が数字を基に判断する。この流れが毎月続くことで、会社の経理と経営は少しずつ強くなります。
「決算が終わればよい」という関係から、「毎月の数字を経営に生かす」という関係へ変わることが大切です。
毎月の数字を、会社の経営に生かせていますか?
澤田匡央税理士事務所では、毎月の会計処理を確認するだけでなく、試算表の内容を分かりやすく説明し、会社の今後について社長や経理担当者と一緒に考えることを大切にしています。
「試算表は届くが、説明を受けたことがない」
「税理士事務所と話すのは決算時だけ」
「経理上の疑問を相談する機会がない」
「資金繰りや設備投資について相談したい」
「月次決算をもっと早く確定したい」
「現在の税理士事務所との付き合い方を見直したい」
このようなお悩みがある場合は、お気軽にご相談ください。現在の会計処理や税理士事務所とのやり取りを確認し、会社に合った月次対応をご提案します。
まとめ
月次訪問や巡回監査は、単に領収書や請求書を確認するためのものではありません。
毎月の数字を早く正確に確定し、経理担当者の疑問を解消し、社長が経営判断に使える情報を得るための大切な機会です。
定期的な面談がなければ、会計処理の疑問がたまり、試算表の完成が遅れ、売上や利益、資金繰りの変化に気づく時期も遅くなる可能性があります。
まずは現在の税理士事務所へ、月次訪問やオンライン面談、試算表の説明、経営相談に対応できるか確認してみましょう。
会社が必要としている支援を受けられない状態が続く場合は、経理担当者だけで抱え込まず、社長へ状況を共有し、税理士事務所との関係を見直すことも一つの選択肢です。







