【経理のホンネ⑥】電子帳簿保存法・インボイス制度…相談しても答えが返ってこない
経理担当者が「この税理士事務所、もう限界…」と思う瞬間⑥
電子帳簿保存法やインボイス制度について税理士事務所へ質問したものの、なかなか具体的な回答が返ってこない。そのような経験はないでしょうか。
「この請求書はデータのまま保存すればよいのですか?」
「取引先がインボイス登録をしていない場合、どう処理すればよいですか?」
「メールで届いた領収書を印刷して保存するだけでは駄目ですか?」
「この経費は帳簿だけで仕入税額控除できますか?」
経理担当者が知りたいのは、制度の一般的な説明だけではありません。
自社の取引や現在の経理方法に照らして、具体的に何をすればよいのかという答えです。
ところが、「国税庁のホームページを確認してください」「制度が複雑なので一概には言えません」と言われるだけでは、経理担当者は判断できません。
制度への対応が曖昧なままでは、経理処理が止まり、資料がたまり、決算時にまとめて修正が必要になることもあります。
今回は、電子帳簿保存法やインボイス制度について相談しても答えが返ってこないときに、経理担当者が確認すべきこと、会社への影響、信頼できる税理士事務所の対応について解説します。
1.経理担当者が欲しいのは「制度の説明」ではなく「自社での対応方法」
電子帳簿保存法やインボイス制度については、国税庁のホームページやパンフレットにも多くの情報が掲載されています。
しかし、制度の説明を読んだだけで、自社の処理方法まで判断できるとは限りません。
例えば、経理担当者が知りたいのは次のような内容です。
- メールで届いた請求書を、どこへ保存すればよいか
- 紙で受け取った領収書をスキャンする必要があるか
- インターネット通販の購入履歴をどのように保存するか
- クレジットカード明細だけで経費処理できるか
- インボイス登録番号を毎回確認する必要があるか
- 免税事業者からの仕入れをどのように入力するか
- 従業員の立替経費をどのように処理するか
これらは、会社の取引内容、会計ソフト、資料の受け取り方、社内の担当人数などによって、適切な方法が異なります。
税理士事務所には、制度を説明するだけでなく、自社の実務に落とし込んだ対応方法を一緒に考える役割が求められます。
2.電子帳簿保存法で経理担当者が迷いやすいポイント
電子帳簿保存法には、大きく分けて、電子帳簿・電子書類の保存、スキャナ保存、電子取引データの保存という区分があります。
特に実務で迷いやすいのが、メール、クラウドサービス、インターネット通販などを通じて受け取った請求書や領収書などの電子取引データです。
電子で受け取った資料は、電子データでの保存を検討する
メールに添付されたPDFの請求書や、Webサイトからダウンロードした領収書などは、電子取引によって受け取ったデータに該当することがあります。
「印刷した紙だけをファイルに綴じておけばよい」と考えていると、必要な保存方法を満たせない可能性があります。
経理担当者は、電子データをどこに保存するのか、どのようなファイル名にするのか、誰が保存を確認するのかまで決めておく必要があります。
保存場所が複数あると確認が難しくなる
請求書がメール、通販サイト、チャット、共有クラウドなど複数の場所に散らばっていると、後から検索するのが難しくなります。
経理担当者個人のメールボックスだけに保存されている場合は、担当者が休んだときや退職したときに確認できなくなるおそれもあります。
会社の規模に合った方法を選ぶ必要がある
高度なシステムを導入すれば、必ずうまくいくわけではありません。
取引件数が少ない会社であれば、共有フォルダとファイル名のルールを整えることで対応できる場合があります。一方、取引件数が多い会社では、証憑保存機能を備えた会計システムなどの活用を検討した方が効率的です。
大切なのは、制度に合わせるだけでなく、会社が継続して運用できる仕組みを作ることです。
3.インボイス制度で経理担当者が迷いやすいポイント
インボイス制度では、仕入税額控除を受けるために、原則として一定事項が記載された帳簿と適格請求書などの保存が必要になります。
適格請求書には、登録番号、取引年月日、取引内容、税率ごとに区分した金額、適用税率、消費税額などの記載が求められます。
ただし、実際の経理では次のような判断が必要です。
- 受け取った請求書がインボイスの要件を満たしているか
- 登録番号に誤りがないか
- 8%と10%の取引が正しく区分されているか
- 請求書がない取引をどのように処理するか
- 免税事業者等からの仕入れに経過措置(仕入税額相当額の80%控除・50%控除)を適用するか
- 少額な課税仕入れに関する特例を利用できるか
- 返品、値引き、立替金などをどのように処理するか
インボイス制度には、帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる一定の取引や、一定規模以下の事業者に関する経過措置などもあります。
そのため、「登録番号がないからすべて控除できない」「少額だから何も確認しなくてよい」と一律に判断するのは適切ではありません。
取引の内容と会社の状況を確認した上で、一つずつ処理方法を決める必要があります。
4.回答が遅いことで、経理業務はどのように止まるのか
税理士事務所から回答が返ってこないと、経理担当者は判断を保留することになります。
例えば、次のような状態です。
- 仕訳を確定できない
- 消費税区分を決められない
- 請求書の再発行を依頼すべきか分からない
- 取引先への確認が遅れる
- 証憑の保存方法を決められない
- 月次決算を締められない
未処理の資料が少しずつたまり、決算直前になってまとめて確認すると、過去の取引内容を思い出せなくなっていることもあります。
担当者が退職した後では、当時の事情を確認できない場合もあります。
早い段階で一つの処理方法を決め、同じ種類の取引に継続して適用することが、経理の正確性と効率を高めます。
5.「分からないので保留」が会社に与える影響
制度への対応が曖昧でも、すぐに会社の売上が減るわけではありません。そのため、社長からは問題が見えにくいことがあります。
しかし、実際には次のような影響が生じます。
月次試算表の完成が遅れる
消費税区分や証憑の確認が終わらなければ、月次処理を締められません。試算表の完成が遅れると、経営判断も遅くなります。
決算時の修正作業が増える
毎月判断すべき事項を先送りすると、決算時に大量の再確認が必要になります。経理担当者だけでなく、社長や現場担当者にも確認作業が発生します。
仕入税額控除に影響する可能性がある
必要な帳簿や請求書等が適切に保存されていなければ、消費税の仕入税額控除に影響する可能性があります。
取引先への対応が遅れる
請求書の記載内容に不備がある場合、早めに取引先へ確認すれば修正してもらえることがあります。確認が数か月後になると、取引先側でも対応に時間がかかります。
経理担当者が制度対応を一人で抱え込む
自分で調べても確信が持てず、処理を間違えた場合の責任だけを感じる状態は、経理担当者にとって大きな負担です。
6.税理士事務所へ質問するときは、具体的な事例を示す
制度に関する相談では、質問の仕方を少し工夫すると、回答を得やすくなることがあります。
「インボイス制度について教えてください」という大きな質問ではなく、実際の資料や取引内容を示して確認します。
質問例① 電子取引データの保存
「毎月、取引先から請求書がメールのPDFで届きます。現在は担当者のメールに残し、印刷したものを紙で保存しています。当社では、どのような方法で電子データを保存すればよいでしょうか。」
質問例② インボイスの確認
「添付した請求書には登録番号がありますが、税率ごとの金額が記載されていません。この請求書で仕入税額控除を受けられるか確認してください。不足があれば、取引先に何を追記してもらえばよいでしょうか。」
質問例③ 免税事業者からの仕入れ
「この取引先は適格請求書発行事業者ではありません。年間の取引予定額は約〇〇万円です。現在利用できる経過措置と、会計ソフトでの入力方法を教えてください。」
資料、金額、取引内容、現在の処理方法をセットで伝えることで、税理士事務所も具体的な回答をしやすくなります。
7.信頼できる税理士事務所は、どのように回答するのか
税制は複雑であり、税理士であっても、その場ですべての質問へ即答できるとは限りません。
重要なのは、すぐ答えられないときの対応です。
信頼できる税理士事務所では、次のような対応が期待できます。
- 質問の内容と取引の事実関係を確認する
- 不足している資料を具体的に案内する
- いつまでに回答するかを伝える
- 制度の説明だけでなく、自社での処理方法を示す
- 会計ソフトへの入力方法まで案内する
- 同じ取引が続く場合の社内ルールを提案する
- 回答内容をメールや文書で残す
- 制度改正があったときに必要な対応を案内する
「確認して後日回答します」という対応自体が悪いわけではありません。むしろ、曖昧な記憶で即答するより、根拠を確認した上で回答する方が安全です。
ただし、回答期限が示されないまま放置されたり、何度催促しても返事がなかったりする場合は、税理士事務所の対応体制に問題があると考えられます。
8.会社ごとの「経理処理ルール」を作ることが大切
電子帳簿保存法やインボイス制度への対応は、個別の質問に答えるだけでは十分ではありません。
同じ種類の取引が発生するたびに毎回迷わないように、会社ごとの経理処理ルールを作ることが重要です。
例えば、次のような内容を整理します。
- 電子請求書の保存場所
- フォルダの作り方
- ファイル名の付け方
- 保存担当者と確認担当者
- インボイスの確認項目
- 登録番号がない請求書の処理方法
- 少額経費や立替経費の処理方法
- 不明な取引を税理士事務所へ質問する方法
例えば、GoogleドライブやDropboxなどの共有クラウドストレージに「電子取引」「紙資料スキャン」「確認待ち」などのフォルダを作り、年月ごとに整理する方法も考えられます。
ただし、共有設定、閲覧権限、ファイルの削除ルール、バックアップなども併せて決めておく必要があります。
会社と税理士事務所が同じルールを共有できれば、資料の行方不明や重複提出を防ぎ、質問への回答も早くなります。
9.経理担当者から社長へ伝えるときのポイント
制度への対応について税理士事務所から回答がない場合、経理担当者だけで抱え込まず、社長へ状況を共有しましょう。
ただし、「税理士事務所が何も教えてくれません」と感情的に伝えるより、業務への影響を具体的に説明する方が理解されやすくなります。
社長への伝え方の例
「電子帳簿保存法とインボイス制度に関する処理方法について、税理士事務所へ複数回確認していますが、具体的な回答がない状態です。そのため、一部の経費処理を確定できず、月次試算表の完成にも影響しています。回答期限と今後の運用方法を税理士事務所へ改めて確認したいと考えています。」
さらに、質問した日、質問内容、催促した回数、未処理件数などを整理して伝えると、問題の大きさが分かりやすくなります。
10.改善されない場合は、税理士事務所の見直しも選択肢
税理士事務所へ具体的に相談し、回答期限も確認したにもかかわらず、状況が改善しない場合は、今後の契約を見直すことも選択肢になります。
特に、次の状態が続いていないか確認してください。
- 制度に関する質問へ具体的な回答がない
- 国税庁のホームページを見るように言われるだけである
- 担当者によって回答が異なる
- 回答期限を伝えても守られない
- 会計ソフトでの処理方法を案内してもらえない
- 制度改正について事前の案内がない
- 決算時になって過去の処理をまとめて修正される
電子帳簿保存法やインボイス制度は、会社の日常的な経理処理に関わる制度です。
毎月の実務を相談できない税理士事務所では、経理担当者の負担が増え、会社の数字も正確かつ迅速に把握しにくくなります。
税理士を変更するかどうかをすぐ決める必要はありません。まずは、別の税理士事務所へ現在の運用方法や悩みを相談し、どのような支援を受けられるのか確認する方法もあります。
11.税理士事務所からのワンポイントアドバイス
電子帳簿保存法やインボイス制度は、「制度を知っていること」と「会社で継続して運用できること」が別の問題です。
国税庁の資料を読んで制度を理解しても、保存場所、ファイル名、担当者、確認手順が決まっていなければ、実務は安定しません。
また、会社ごとに取引内容や経理体制が異なるため、他社の方法をそのまま採用できるとは限りません。
良い税理士事務所は、制度の説明だけで終わらず、会社の実情を確認し、無理なく継続できる処理方法を一緒に作ります。
「この資料はどう保存するのか」「この請求書はどう入力するのか」と迷う状態が続いている場合は、個別処理だけでなく、会社全体の経理ルールを見直す機会にしてみましょう。
電子帳簿保存法・インボイス制度への対応にお困りではありませんか?
澤田匡央税理士事務所では、制度の一般的な説明だけでなく、会社の取引内容や現在の経理方法を確認した上で、実務に合った対応方法をご提案します。
「メールで届く請求書の保存方法が分からない」
「インボイスの確認方法を社内で統一したい」
「会計ソフトへの入力方法まで教えてほしい」
「税理士事務所へ質問しても具体的な回答がない」
「現在の税理士事務所との付き合い方を見直したい」
このようなお悩みがある場合は、お気軽にご相談ください。
経理担当者だけに負担が集中しないよう、資料保存と会計処理の流れを一緒に整理します。
まとめ
電子帳簿保存法やインボイス制度への対応について、税理士事務所から具体的な回答が得られなければ、経理担当者は処理を確定できず、月次決算や経営判断にも影響が生じます。
税理士事務所へ相談するときは、実際の資料、取引内容、金額、現在の処理方法を示し、自社ではどのように対応すべきかを具体的に確認しましょう。
すぐに回答できない場合でも、回答期限を示し、根拠を確認した上で実務上の処理方法まで案内してくれる税理士事務所であれば、安心して相談できます。
一方、質問を繰り返しても回答がなく、経理業務に支障が出ている場合は、経理担当者だけで抱え込まず、社長へ状況を共有し、税理士事務所との関係を見直すことも検討しましょう。
参考情報
制度の詳細や最新情報は、国税庁の公式情報も併せてご確認ください。
※本記事は一般的な情報を分かりやすく説明したものです。実際の税務処理は、会社の状況や取引内容によって異なるため、個別に税理士へご確認ください。







