経理担当者が「この税理士事務所、もう限界…」と思う瞬間⑤
税理士事務所から、以前提出したはずの資料をもう一度求められた経験はないでしょうか。
「その資料は先月メールで送りました」
「同じ請求書を、別の担当者にも提出しました」
「前回の訪問時に、紙で渡したはずです」
一度だけであれば、行き違いや確認漏れということもあります。しかし、同じことが何度も続くと、経理担当者の負担は確実に増えていきます。
資料を探し直し、送信履歴を確認し、再度添付し、状況を説明する。一つひとつは小さな作業でも、積み重なると本来の経理業務を圧迫します。
さらに問題なのは、こうした資料管理の不備が、月次決算の遅れ、申告内容の確認不足、経営判断の遅れにつながる可能性があることです。
今回は、税理士事務所から同じ資料を繰り返し求められる原因と、会社側でできる対策、そして税理士事務所を見直す際の判断ポイントについて解説します。
1.「前にも送りました」が経理担当者を疲れさせる理由
経理担当者は、日々多くの業務を同時に進めています。
- 売上・仕入の入力
- 請求書の発行と確認
- 入出金の管理
- 給与計算
- 経費精算
- 金融機関への対応
- 税理士事務所への資料提出
その中で、すでに提出した資料を再び探して送る作業は、経理担当者にとって「本来必要のなかった仕事」です。
資料そのものを再送するだけなら数分で終わることもあります。しかし実際には、いつ送ったのか、誰に送ったのか、メールか紙かクラウドか、どのファイルが最新版なのかまで確認しなければなりません。
この確認を毎回行っていると、経理担当者は「こちらの管理が悪いのでは」と不安になったり、「また説明しなければならないのか」と精神的な負担を感じたりします。そして何より、税理士事務所に対する信頼が少しずつ失われていきます。
2.同じ資料を何度も求める税理士事務所の共通点
① 資料の受領ルールが決まっていない
ある月はメール、別の月は紙で手渡し、急ぎの資料はチャット、一部はクラウドストレージというように提出経路が複数あるにもかかわらず、税理士事務所側で保存ルールが統一されていないと、資料を見つけられない状態が起こりやすくなります。
問題は複数の方法を使うこと自体ではありません。どの方法で受け取っても、事務所内で一元管理できる仕組みがあるかどうかが重要です。
② 担当者ごとに資料を管理している
担当者個人のメールボックスやパソコン内だけで資料を保管していると、担当者が不在のときや担当変更があったときに資料を確認できません。
税理士事務所の資料は、担当者個人ではなく、事務所全体で共有・確認できる状態にしておく必要があります。
③ 受領した資料を確認した記録がない
資料を受け取っても、受領日や確認状況を記録していなければ、後から「受け取っていたかどうか」が分からなくなります。
- 提出済み資料の一覧
- 受領日
- 保存場所
- 不足資料
- 確認済み・未確認の区分
記録がなければ、担当者は念のため再依頼するしかなく、その負担は結果として会社側に移されます。
④ 依頼内容が曖昧である
「売上の資料を送ってください」「銀行関係のものをお願いします」といった曖昧な依頼では、会社側が何を提出すべきか判断できません。
資料依頼では、対象期間、資料名、必要なページや明細、提出期限、提出方法まで具体的に伝えることが必要です。
⑤ 事務所内の引き継ぎが不十分である
担当者の変更や退職があったとき、過去の経緯や資料の保存場所が引き継がれていないと、同じ資料の再提出が起こります。
会社側からすれば、担当者が変わったのは税理士事務所側の事情です。そのたびに資料を出し直し、説明し直すことが当然になってはいけません。
3.資料の再提出は、会社の時間と人件費を奪っている
同じ資料を再送する作業は、表面上は数分程度に見えるかもしれません。
- 過去の提出履歴を確認する
- 保存場所から資料を探す
- 最新版かどうか確認する
- メールやクラウドへ添付する
- 再送理由を説明する
- 受領確認を行う
これが月に数回、年間を通じて繰り返されれば、決して小さな負担ではありません。資料探しの途中で本来の業務が中断されるため、単純な作業時間以上に生産性が下がります。
税理士事務所の資料管理が不十分であることによって、会社側が余分な人件費を負担している状態ともいえます。
4.資料管理の不備は、月次決算の遅れにもつながる
資料を見つけられない、受領状況が分からない、不足資料の確認が遅れる。こうした状態が続くと、月次の会計処理は予定どおり進みません。
試算表の完成が遅れれば、社長が会社の状況を把握する時期も遅くなります。
- 売上が計画どおりか
- 利益が確保できているか
- 資金繰りに問題がないか
- 経費が増えすぎていないか
- 納税資金を準備できているか
「同じ資料をもう一度送ってください」という小さなやり取りが、最終的には会社の経営判断を遅らせる原因になり得るのです。
5.経理担当者だけの問題として抱え込まない
税理士事務所との資料のやり取りに問題があっても、経理担当者が一人で対応しているケースは少なくありません。
「社長に言うほどのことではない」「税理士事務所と揉めたくない」「自分がもう一度送れば済む」と考えて我慢しているうちに、同じ問題が何年も続いてしまいます。
しかし、資料の再提出が繰り返されている場合は、単なる事務上の不便ではなく、会社全体の業務効率に関わる問題です。
社長への伝え方の例
「税理士事務所から、すでに提出した資料の再送依頼が繰り返しあります。確認と再送に毎月一定の時間がかかっており、月次処理にも影響しています。資料の提出方法や受領管理について、税理士事務所と一度相談したいと考えています。」
感情的な不満ではなく、時間、回数、業務への影響を整理して伝えることがポイントです。
6.会社側でもできる資料提出の改善策
提出方法をできるだけ統一する
原則として提出方法を一つに決め、例外がある場合だけ別の方法を使うようにすると整理しやすくなります。
例えば、GoogleドライブやDropboxなどの共有クラウドストレージ内に「〇〇年〇月提出用」という専用フォルダを作成し、そこへ直接資料を保存するルールにしておけば、メールの送り間違いや受領漏れを防ぎ、会社と税理士事務所の双方がいつでも最新の資料を確認できるようになります。
共有クラウドを活用する場合でも、「誰が閲覧・編集できるか」「提出後はファイル名を変更しない」といった運用ルールを決めておくことで、さらに管理しやすくなります。
ファイル名を統一する
- 2026年6月_普通預金明細_〇〇銀行.pdf
- 2026年6月_売上請求書一覧.xlsx
- 2026年6月_クレジットカード明細.pdf
提出資料の一覧を残す
| 提出日 | 資料名 | 対象期間 | 提出方法 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 7月5日 | 普通預金明細 | 6月分 | クラウド | 担当者へ連絡済み |
| 7月5日 | 売上請求書一覧 | 6月分 | クラウド | 提出済み |
受領確認を残す
重要な資料を提出したときは、税理士事務所から「受領しました」という連絡をもらうと安心です。双方が同じ画面で提出状況を確認できる仕組みがあれば、行き違いを減らせます。
7.信頼できる税理士事務所の資料管理とは
- 資料の提出方法が明確に決まっている
- 受領した資料を顧客別・月別に整理している
- 担当者以外も必要な資料を確認できる
- 不足資料が一覧で管理されている
- 再依頼の前に過去の提出状況を確認している
- 担当変更時にも資料と経緯が引き継がれる
- 会社側も提出状況を確認できる
大切なのは、最新のシステムを導入しているかどうかだけではありません。誰が見ても分かるルールと確認体制があるかどうかです。
8.税理士事務所へ改善を相談するときのポイント
相談時の伝え方の例
「同じ資料の再提出依頼がここ3か月で数回ありました。当社でも提出履歴を整理しますので、御事務所でも受領状況や保存場所を確認できる方法を決めていただけないでしょうか。今後は、提出資料の一覧を双方で確認できる形にしたいと考えています。」
改善の相談に対して、原因を確認してくれるか、具体的な改善策を示してくれるか、事務所全体の問題として考えてくれるか、その後実際に再発が減るかを確認しましょう。
9.改善されない場合は、税理士事務所の見直しも選択肢
- 同じ資料を何度も求められる
- 担当者によって依頼内容が異なる
- 提出済みの記録が残っていない
- 担当変更のたびに同じ説明が必要になる
- 資料不足を決算直前に指摘される
- 改善を求めても対応が変わらない
このような状態が重なっている場合は、税理士事務所との契約を一度見直してもよいでしょう。
税理士変更というと不安に感じるかもしれませんが、通常は新しい税理士事務所が必要資料を案内し、過去の申告書や会計データなどを確認しながら引き継ぎを進めます。
10.税理士事務所からのワンポイントアドバイス
税理士事務所と会社との間では、毎月多くの資料や情報がやり取りされるため、まれに確認漏れや行き違いが起こることはあります。一度の再依頼だけで、すぐに税理士事務所全体を判断する必要はありません。
ただし、同じ資料の再提出が繰り返され、経理担当者の負担や月次処理の遅れにつながっている場合は、個人のミスではなく仕組みの問題として考える必要があります。
良い税理士事務所は、会社に資料提出を求めるだけでなく、会社が提出しやすく、双方が確認しやすい仕組みを一緒に整えます。
税理士事務所との資料のやり取りにお困りではありませんか?
澤田匡央税理士事務所では、会社と税理士事務所との資料のやり取りを整理し、月次の会計処理を円滑に進めるための支援を行っています。
「提出した資料を何度も求められる」
「担当者が変わるたびに同じ説明が必要になる」
「月次の試算表がなかなか完成しない」
「現在の税理士事務所との付き合い方を見直したい」
このようなお悩みがある場合は、お気軽にご相談ください。現在の状況を伺い、税理士変更が必要かどうかも含めてご案内します。
まとめ
税理士事務所から同じ資料を何度も求められる背景には、資料の受領ルール、保存方法、担当者間の共有、引き継ぎなどの問題が隠れていることがあります。
経理担当者が再送を続けて対応しているだけでは、根本的な問題は解決しません。
まずは、会社側でも提出方法やファイル名、提出履歴を整理した上で、税理士事務所へ具体的な改善を相談してみましょう。それでも状況が改善されない場合は、経理担当者の負担軽減と会社の月次管理を正常化するために、税理士事務所の見直しを検討することも一つの選択肢です。







