経理担当者が「この税理士事務所、もう限界…」と思う瞬間⑩
決算や申告の時期になると連絡が来る。税務署から問い合わせがあれば対応してくれる。しかし、それ以外の時期はほとんど連絡がなく、会社から相談しなければ状況を確認してもらえない。このような税理士事務所との関係に、不安を感じている経理担当者は少なくありません。
特に税務調査の連絡が入ったとき、急に税理士事務所とのやり取りが増えると、経理担当者はこう感じます。
「なぜ問題が起きる前に確認してくれなかったのだろう」
「この処理について、普段から相談できていればよかった」
「過去の資料を今から集め直すのは大変だ」
「税理士事務所は、申告が終わればそれでよいのだろうか」
税務調査への対応は、税理士にとって重要な仕事です。しかし、本当に会社に寄り添う税理士事務所は、調査の連絡が来てから動くだけではありません。
日頃から会社の経理処理や資料保存の状況を確認し、将来問題になりそうな点を早めに整えておくことが大切です。
今回は、税務調査や決算のときだけ連絡が来る税理士事務所に経理担当者が不安を感じる理由と、普段から相談できる税理士事務所との違いを解説します。
1.税務調査の連絡が来てからでは、準備できないことがある
税務調査の連絡を受けると、会社は過去の帳簿、請求書、契約書、領収書、預金資料などを確認することになります。
しかし、数年前の取引について、その時の事情を正確に思い出すことは簡単ではありません。
担当者が退職していたり、取引先との契約内容が変わっていたり、資料の保存場所が分からなくなっていることもあります。
税務調査の直前になってから説明を考えるのではなく、取引が発生した時点で処理内容と根拠を整理しておくことが重要です。
例えば、役員や関係会社との取引、多額の修繕費、外注費、交際費、在庫、貸倒れなどは、後から質問を受けやすい項目です。
日頃から税理士へ相談し、必要な資料や判断根拠を残しておけば、税務調査があった場合も落ち着いて説明できます。
2.申告書を作るだけでは見えにくい問題がある
決算書や申告書が正しく作成されていても、日々の経理処理や資料管理に問題がないとは限りません。
例えば、会計ソフトには正しい金額が入力されていても、領収書や請求書との対応関係が分かりにくいことがあります。
摘要欄が「支払い」「会議費」など簡単な記載だけでは、数年後に取引内容を説明できないかもしれません。
また、契約書を作成していない、稟議や社内承認の記録がない、請求書の保存方法が統一されていないといった問題は、申告書の数字だけを確認しても見つかりにくいものです。
普段から相談できる税理士事務所は、数字だけでなく、その数字を裏付ける資料や社内の処理方法にも目を向けます。
3.経理担当者が困るのは「今さら言われても直せない」こと
税務調査の前や決算直前になって、税理士から次のような指摘を受けることがあります。
- この支出は交際費として整理すべきだった
- 契約書を作っておいた方がよかった
- 役員への支払いは事前に相談してほしかった
- 棚卸しの記録をもっと詳しく残す必要がある
- 外注先との関係を確認した方がよい
- 領収書だけでなく取引内容が分かる資料も必要だった
これらの指摘が正しくても、取引から時間が経過していれば、経理担当者だけでは対応できないことがあります。
契約書を後から作ることはできても、取引当時の合意内容を正確に再現できるとは限りません。退職した担当者へ確認することも難しいでしょう。
経理担当者が望んでいるのは、問題が起きた後の指摘ではなく、問題が起きる前の助言です。
4.普段からの確認が税務調査への備えになる
税務調査への備えというと、調査の連絡が来てから資料を準備することだと思われがちです。
しかし、本当の備えは毎月の経理処理の中にあります。
例えば、次のような確認を継続することが大切です。
- 請求書や領収書が取引ごとに保存されているか
- 摘要欄に取引先、内容、目的が記載されているか
- 役員や親族との取引に根拠資料があるか
- 交際費や会議費の相手先、参加者、目的が記録されているか
- 外注費と給与の区分に問題がないか
- 在庫や仕掛品の確認方法が毎期統一されているか
- 売上の計上時期に誤りがないか
- 電子取引データ(メール添付のPDF領収書やWeb請求書など)が、電子帳簿保存法の要件を満たし、検索できる状態で保存されているか
毎月または定期的にこれらを確認していれば、資料の不足や処理上の問題を早い段階で修正できます。
税務調査のためだけではなく、経理業務の正確性と引き継ぎのしやすさを高めることにもつながります。
5.税務調査で問われるのは、数字だけではない
税務調査では、帳簿に記載された金額だけでなく、その取引が実際にどのような内容だったのか確認されることがあります。
例えば、交際費であれば、誰と、何の目的で支出したのかが重要です。外注費であれば、誰にどのような業務を依頼し、どのような契約や成果物があったのかを確認されることがあります。
修繕費で処理した支出についても、単なる修理なのか、資産価値を高める工事なのかによって税務上の扱いが変わる可能性があります。
数字が合っていても、取引内容を説明する資料が不足していれば、経理担当者や社長の記憶だけに頼ることになります。
普段から税理士へ相談し、どの資料を残すべきか確認しておくことが重要です。
6.連絡が少ないことと、負担が少ないことは同じではない
税理士からの連絡が少なければ、経理担当者の手間も少ないように感じるかもしれません。
しかし、確認を先送りした結果、決算時や税務調査時に大量の資料を集め、過去の取引を調べ直すことになれば、かえって負担が大きくなります。
毎月少しずつ確認すれば短時間で済むことでも、1年分、数年分をまとめて確認するのは大変です。
また、処理の誤りが早く見つかれば、その後の月から正しい方法へ変更できます。発見が遅れると、同じ誤りを長期間繰り返してしまいます。
経理担当者にとって本当に負担が少ないのは、連絡がない状態ではなく、必要な確認が適切な時期に行われる状態です。
7.普段から相談できる税理士は、質問のハードルが低い
税理士へ相談したいことがあっても、「こんなことを聞いてよいのだろうか」「忙しそうなので決算まで待とう」と考えてしまう経理担当者もいます。
しかし、小さな疑問を放置すると、後から大きな問題になることがあります。
普段から相談しやすい税理士事務所には、次のような特徴があります。
- 電話やメールへの回答方法が明確になっている
- 質問に対して、理由を含めて分かりやすく説明する
- 不明な点を責めるのではなく、一緒に整理する
- 定期面談で会社側の疑問を確認する
- 担当者だけで判断できない場合の確認体制がある
- 相談すべき事項を税理士側から示してくれる
日頃からコミュニケーションが取れていれば、経理担当者も早い段階で相談できます。
税理士側も会社の事情を把握しやすくなり、より具体的な助言が可能になります。
8.「税務調査に強い」の意味を確認する
税理士事務所の案内で「税務調査に強い」という表現を目にすることがあります。
税務調査当日に適切に対応できることは大切です。しかし、それだけでなく、日頃から調査で確認されやすい項目を意識し、会社の処理体制を整えることも重要です。
税務調査への本当の強さには、次の二つの面があります。
- 調査の連絡を受けた後、資料準備や当日の対応を適切に行うこと
- 調査の有無にかかわらず、日頃から説明できる帳簿と資料を整えること
調査時だけ税理士が前面に出ても、会社側に必要な資料が残っていなければ、対応には限界があります。
普段の経理体制まで一緒に考えてくれるかどうかを確認しましょう。
9.現在の税理士事務所へ確認したいこと
普段の連絡や確認が少ないと感じる場合は、現在の税理士事務所へ希望する支援内容を伝えてみましょう。
- 毎月または定期的に帳簿を確認してもらえますか
- 税務上注意すべき取引を事前に教えてもらえますか
- 領収書や契約書の保存方法を相談できますか
- 役員や関係会社との取引を事前に確認してもらえますか
- 税務調査で確認されやすい項目を説明してもらえますか
- 電子データの保存方法について相談できますか
- 社長を交えた定期面談を行えますか
- 質問への回答期限や連絡方法は決まっていますか
顧問契約の内容によっては、年に一度の決算・申告のみで、月次確認や随時相談が含まれていない場合があります。
まず契約内容を確認し、必要な支援を追加できるか、料金が変わるかを相談することが大切です。
10.信頼できる税理士事務所を見極めるポイント
税務調査の有無にかかわらず、会社を継続的に支援してくれる税理士事務所かどうかは、次の点から確認できます。
- 毎月または定期的な確認の流れが決まっている
- 試算表の数字だけでなく、資料の保存状況も確認する
- 問題が起きやすい取引を事前に説明する
- 会社の業種や取引内容を理解しようとする
- 小さな質問にも分かりやすく回答する
- 税務調査時の対応範囲と料金が明確である
- 担当者が不在でも相談内容を共有できる体制がある
- 過去の処理だけでなく、今後の改善策も提案する
面談の回数が多いだけでなく、確認内容が会社の実情に合っているかが重要です。
形式的に数字を読み上げるだけではなく、具体的な取引や資料管理まで相談できるかを見てみましょう。
11.経理担当者から社長へ伝えるときの例
税理士との関係を見直したいと社長へ伝えるときは、「連絡が少ない」という不満だけでなく、会社に生じているリスクや負担を具体的に説明すると伝わりやすくなります。
社長への伝え方の例
「決算や税務署から連絡があったときには対応してもらえていますが、普段の経理処理や資料の保存方法について確認する機会がほとんどありません。問題が見つかってから過去の資料を集め直すのは負担が大きいため、毎月または定期的に処理内容を確認し、注意点を早めに教えてもらえる体制が必要だと思います。」
過去に資料探しで時間がかかった事例や、決算直前に修正が集中した事例があれば、それも添えると改善の必要性を共有しやすくなります。
12.税理士事務所からのワンポイントアドバイス
税務調査に備えるために、特別な資料を大量に作る必要があるとは限りません。
大切なのは、第三者が見ても、いつ、誰と、どのような目的で行った取引なのか分かる状態にしておくことです。
経理処理をするときは、次の三つを意識しましょう。
- 数字の根拠となる請求書、領収書、契約書などを保存する
- 取引の相手先、内容、目的を帳簿や資料に記録する
- 判断に迷う取引は、実行前または処理前に税理士へ相談する
この積み重ねが、税務調査への備えだけでなく、経理担当者の交代時や金融機関への説明にも役立ちます。
税務調査のときだけでなく、普段から相談できる税理士をお探しの方へ
澤田匡央税理士事務所では、決算や申告のときだけではなく、日頃の会計処理や資料管理についても継続的に確認することを大切にしています。
毎月の数字を確認しながら、税務上注意が必要な取引、資料の保存方法、納税見込み、資金繰りなどを分かりやすくご説明します。
「税務調査の連絡が来てから慌てたくない」
「処理に迷ったとき、すぐに相談できる税理士がほしい」
「決算直前の修正作業を減らしたい」
「領収書や契約書の保存方法を見直したい」
「日頃から会社の状況を把握してくれる税理士を探している」
このようなお悩みがある場合は、お気軽にご相談ください。
まとめ
税務調査の連絡が来たときに対応してくれることは重要です。しかし、会社にとって本当に安心できるのは、調査のときだけではなく、普段から相談できる税理士事務所です。
日頃から帳簿、証拠資料、取引内容を確認していれば、問題を早い段階で見つけ、修正できます。
経理担当者も、数年分の資料を後から集め直したり、過去の取引を記憶だけで説明したりする負担を減らせます。
現在の税理士事務所との連絡が決算や税務調査のときだけになっている場合は、月次確認、随時相談、資料管理への助言など、希望する支援内容を具体的に伝えてみましょう。
それでも状況が改善されない場合は、問題が起きた後に対応するだけでなく、日頃から問題を予防し、安心して相談できる税理士事務所への変更を検討することも一つの方法です。







