〜令和9年度税制改正で見直しが予想される非上場株式評価にも注意〜
中小企業の経営者にとって、自社株は会社の将来、相続、事業承継に大きく関わる重要な財産です。
しかし、非上場会社の株式は市場で売買されることがないため、
意識的に評価額を算定しなければ、現在の株価を把握しにくいという特徴があります。
「うちは上場していないから株価は関係ない」
「家族経営だから問題ない」
「まだ事業承継は先の話」
と思っていても、相続や贈与、後継者への株式移転の場面で、
想定以上に高い評価額となるケースがあります。
さらに、国税庁では令和8年4月から、
取引相場のない株式、いわゆる非上場株式の相続税評価について、
評価制度の見直しに向けた有識者会議が開催されています。
今後の税制改正によっては、自社株評価や事業承継対策に影響が出る可能性があります。
※本記事は、令和8年5月1日現在の情報をもとに作成しています。
今後の税制改正、通達改正、国税庁資料の公表内容により取扱いが変更される可能性があります。
実際の対策は、最新情報を確認したうえで検討してください。
1.自社株評価とは何か
自社株評価とは、非上場会社の株式について、税務上の評価額を算定することをいいます。
上場株式であれば市場価格がありますが、中小企業の株式は通常、市場で自由に売買されていません。
そのため、相続税や贈与税の計算では、
国税庁の財産評価基本通達に基づいて評価する必要があります。
非上場株式の評価方法には、会社規模や株主の立場などに応じて、
類似業種比準方式、純資産価額方式、配当還元方式などがあります。
特に同族会社のオーナー株式では、
会社の利益、純資産、配当、保有資産の含み益、会社規模などが評価に影響します。
そのため、自社株の評価額は「なんとなくこのくらいだろう」と感覚で判断できるものではありません。
決算書、財産内容、会社規模、株主構成などを確認したうえで、
専門的に計算する必要があります。
2.なぜ自社株評価が重要なのか
自社株評価は、単に税務上の計算をするだけのものではありません。
会社の将来、相続税対策、事業承継、後継者への株式移転、M&Aなどに直結する重要な経営課題です。
会社が順調に成長し、利益を蓄積していくことは、経営上は理想的な姿です。
しかし、税務の視点では、利益の蓄積や純資産の増加により、
自社株評価額が高くなることがあります。
自社株評価が高いまま相続が発生すると、
後継者や相続人に大きな相続税負担が生じる可能性があります。
また、後継者へ安く株式を譲渡したつもりでも、
税務上の評価額との差額が贈与とみなされ、贈与税の問題が生じることもあります。
自社株評価は、会社の「現在地」を把握し、将来の承継対策を考えるための第一歩です。
3.業績が良い会社ほど、自社株評価は高くなりやすい
一般的に、社歴が長く、黒字経営を続け、内部留保が厚くなっている会社ほど、
自社株評価額は高くなる傾向があります。
また、土地、有価証券、投資不動産など、含み益のある資産を会社で保有している場合、
想定以上に株価が高くなることがあります。
次のような会社は、自社株評価を一度確認しておくことをおすすめします。
- 創業から長く、利益を積み重ねている会社
- ここ数年、業績が好調な会社
- 純資産の部が大きくなっている会社
- 土地や有価証券など、含み益のある資産を保有している会社
- 社長や会長が会社の株式の大半を保有している会社
- 事業承継やM&Aを考え始めている会社
「最近は赤字だから株価は低いはず」と思っていても、
過去の利益蓄積や資産内容によっては、評価額が高いままになっていることがあります。
4.自社株評価を把握しないまま放置するリスク
自社株評価を把握しないままにしていると、
相続や事業承継の場面で大きなリスクが生じることがあります。
相続税の負担が想定以上に重くなる
社長が所有している自社株は、相続が発生した場合、相続財産に含まれます。
自社株評価額が高ければ、相続税の課税価格も大きくなります。
非上場株式は市場で簡単に売却できないため、
相続税を納めるための現金を準備しにくいという問題もあります。
会社を承継した後継者が、納税資金の負担を抱えながら経営を始めることになれば、
事業承継後の資金繰りにも影響します。
安く譲渡したつもりが贈与とみなされる可能性がある
自社株の評価額を確認せずに、後継者へ安価または無償で株式を移転した場合、
税務上は評価額との差額が贈与と判断される可能性があります。
その場合、後継者に多額の贈与税が発生することがあります。
株式を移す前には、必ず税務上の評価額を確認しておくことが重要です。
事業承継の選択肢が狭くなる
自社株評価が高くなってから慌てて対策を始めても、
有効な手段が限られてしまうことがあります。
計画的な贈与、役員退職金、生命保険、持株会社、事業承継税制などは、
早い段階から検討することで選択肢が広がります。
5.国税庁で非上場株式評価の見直しが検討されています
国税庁は令和8年4月、
取引相場のない株式、つまり非上場株式の相続税評価について、
適正な評価制度の在り方を検討するため、
「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議」を設置しました。
背景には、令和6年11月の会計検査院検査報告において、
非上場株式の評価制度について見直しを検討すべきとの指摘があったことがあります。
主な検討課題として、次のような点が挙げられています。
- 類似業種比準方式と純資産価額方式の間で評価額に乖離が生じていること
-
類似業種比準方式による価額を適用する割合が高い規模の大きな会社ほど、
株式の評価額が相対的に低く算定されること - 配当還元方式の還元率が、近年の金利水準と比べて相対的に高い率となっているおそれがあること
- 異なる規模の会社間の公平性や社会経済の変化を踏まえた評価制度の在り方
今後、有識者会議での議論を経て、
令和9年度税制改正において見直しが行われる可能性があります。
特に比較的規模の大きな会社では、自社株評価額が上がる方向で影響を受ける可能性があるため注意が必要です。
6.評価方法が見直されると、どのような影響があるか
現時点では、具体的な改正内容は確定していません。
しかし、国税庁の有識者会議で議論されている内容を見ると、
非上場株式の評価額がこれまでより高くなる会社が出る可能性があります。
たとえば、類似業種比準方式を多く使える会社では、
純資産価額方式に比べて評価額が低くなるケースがあります。
そのため、今後の見直しによって、類似業種比準方式の適用割合や会社規模区分の考え方が変われば、
株価が上昇する可能性があります。
また、配当還元方式の還元率が見直される場合、
少数株主が保有する株式の評価にも影響が出る可能性があります。
いずれにしても、制度改正後に初めて自社株評価を行うのではなく、
まずは現行制度で自社株評価額を把握し、
改正による影響を見積もれる状態にしておくことが大切です。
7.年に1度、決算後に自社株評価を確認しましょう
自社株評価は、一度計算すれば終わりではありません。
会社の利益、純資産、資産内容、配当、類似業種の株価などにより、
評価額は毎年変動します。
そのため、年に1度、決算終了後に自社株評価を確認することをおすすめします。
特に、次のような会社は早めの確認が必要です。
- これまで一度も自社株評価をしたことがない
- 前回の評価から5年以上経っている
- 後継者への株式移転を検討している
- 社長の年齢が60歳を超えている
- 純資産や内部留保が大きくなっている
- 不動産や有価証券など含み益のある資産を保有している
- 令和9年度税制改正による影響が気になる
毎年の決算とあわせて自社株評価を確認しておけば、
株価の上昇傾向を早めに把握し、計画的な贈与や承継対策を進めやすくなります。
8.自社株評価後に検討したい主な対策
自社株評価を行った結果、評価額が高くなっている場合には、
早めに株価対策や納税資金対策を検討することが重要です。
- 後継者への計画的な株式贈与
- 役員退職金の活用
- 生命保険を活用した納税資金準備
- 事業承継税制の活用
- 持株会社や資産整理の検討
- 少数株主対策
- M&Aや親族外承継の検討
- 遺言書や民事信託など相続対策との連携
ただし、自社株対策は、単に評価額を下げればよいというものではありません。
会社の経営権、後継者の資金力、相続人間のバランス、金融機関対応、
将来の経営方針などを総合的に考える必要があります。
9.事業承継税制の期限にも注意
自社株評価が高い会社では、法人版事業承継税制の活用を検討することがあります。
この制度は、一定の要件を満たす非上場会社の株式等について、
後継者が贈与または相続により取得した場合に、
贈与税・相続税の納税が猶予される制度です。
特例措置を利用するためには、特例承継計画を都道府県へ提出し、
認定経営革新等支援機関の指導および助言を受ける必要があります。
法人版の特例承継計画については、提出期限が設けられているため、
検討中の会社は早めに準備することが重要です。
事業承継税制は有効な制度ですが、要件が細かく、
適用後の報告や継続要件もあります。
利用するかどうかは、自社株評価、後継者の状況、会社の将来方針を踏まえて慎重に判断しましょう。
10.税理士事務所ができる支援
当事務所では、自社株評価を起点として、
会社の将来を見据えた事業承継・相続対策を支援しています。
- 非上場株式の自社株評価
- 評価方法見直しによる影響確認
- 株価上昇要因の分析
- 相続税・贈与税の概算確認
- 後継者への株式移転シミュレーション
- 役員退職金の検討
- 生命保険を活用した納税資金対策
- 事業承継税制の適用可否の検討
- 特例承継計画の作成支援
- 認定経営革新等支援機関としての助言
- M&Aや親族外承継を見据えた相談
自社株評価は、会社の過去と未来をつなぐ重要な経営資料です。
まずは現在の株価を把握するところから、将来の準備を始めましょう。
11.まとめ|自社株評価は、早めの確認が重要です
非上場会社の自社株は、市場価格がないため、
定期的に評価を行わなければ現在の評価額を把握しにくい財産です。
自社株評価額が高くなっている場合、
相続税や贈与税の負担、後継者の納税資金、事業承継税制の活用可否など、
早めに検討すべき課題が多くあります。
また、国税庁では非上場株式の評価方法の見直しに向けた議論が進められており、
今後の制度改正によって、自社株評価に影響が出る可能性があります。
「一度も自社株評価をしたことがない」
「事業承継を考え始めたい」
「令和9年度税制改正の影響が気になる」
という経営者の方は、早めにご相談ください。
自社株評価は、会社の未来を考える第一歩です。
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「自社株の評価額を知りたい」
「後継者に株式を移したい」
「令和9年度税制改正の影響を確認したい」
という方は、まずはお気軽にご相談ください。







