配偶者控除・扶養控除はいくらまで?令和8年の「年収ライン」を整理|令和8年(2026年)年末調整【第4話】
年末調整の時期になると、経理・総務担当者が従業員からよく聞かれるのが、
「妻はいくらまで働いても大丈夫ですか?」
「大学生の子どもがアルバイトをしていますが、扶養から外れませんか?」
といった「年収の壁」「扶養の年収ライン」についての質問です。
令和8年(2026年)分の所得税では、給与所得控除の最低保障額や扶養親族等の所得要件が見直されるため、前年までの年収ラインをそのまま使うことはできません。
特に重要なのが、扶養親族や同一生計配偶者について、合計所得金額の要件が58万円以下から62万円以下へ引き上げられることです。給与収入だけの場合、令和8年・令和9年分では年収136万円以下が一つの目安になります。
今回はシリーズ第4話として、配偶者控除・扶養控除・特定親族特別控除について、令和8年分の年収ラインを整理します。
1.まず注意したいのは「年収」と「所得」は違うということ
扶養控除や配偶者控除の要件を確認するとき、税法では「年収」ではなく「合計所得金額」で判定するものが多くあります。
例えば給与だけを受け取っている人の場合、
給与収入 - 給与所得控除 = 給与所得
となります。
令和8年・令和9年分については、給与所得控除の最低保障額が特例により74万円となります。
そのため、給与収入136万円の場合は、
136万円 - 74万円 = 62万円
となり、扶養親族や同一生計配偶者の「合計所得金額62万円以下」という要件に収まることになります。
ニュースやインターネットでは「年収○○万円」と説明されることが多いですが、実務では所得要件から逆算した給与収入の目安であることを理解しておきましょう。
2.扶養親族の所得要件は「62万円以下」に引き上げ
令和8年度税制改正により、所得税の扶養親族の合計所得金額要件は、
58万円以下 → 62万円以下
へ引き上げられます。
収入が給与だけの場合、令和8年・令和9年分では給与収入136万円以下が目安です。
| 区分 | 令和7年分 | 令和8年・令和9年分 |
|---|---|---|
| 扶養親族の合計所得金額要件 | 58万円以下 | 62万円以下 |
| 給与収入だけの場合の目安 | 123万円以下 | 136万円以下 |
ただし、扶養親族に該当すれば必ず扶養控除を受けられるわけではありません。
所得税の扶養控除は、原則としてその年の12月31日現在で16歳以上の扶養親族が対象です。16歳未満の子どもについては、所得税の扶養控除そのものはありません。
3.配偶者についても「136万円以下」が一つの目安
配偶者についても、同一生計配偶者の合計所得金額要件が令和8年分から62万円以下へ引き上げられます。
配偶者の収入が給与だけで、令和8年・令和9年分の給与所得控除の最低保障額74万円が適用される場合には、給与収入136万円以下が一つの目安となります。
ただし、実際に納税者本人が配偶者控除を受けるためには、配偶者側の所得要件だけでなく、納税者本人の合計所得金額などの要件もあります。
そのため、
「配偶者の年収が136万円以下なら、誰でも必ず配偶者控除を受けられる」
という意味ではありません。
4.136万円を超えたら、すぐに配偶者の控除がゼロになるわけではありません
配偶者の給与収入が136万円を少し超えたからといって、納税者本人が受けられる所得控除が直ちにゼロになるとは限りません。
一定の要件を満たす場合には、配偶者特別控除を受けられる可能性があります。
配偶者特別控除は、配偶者の合計所得金額が増えるにつれて控除額が段階的に減少していく仕組みです。
したがって、「136万円を1円でも超えたら大損」という単純な仕組みではありません。
年末調整では、配偶者の年間給与収入の見込みから給与所得を計算し、配偶者控除または配偶者特別控除のどちらに該当するのか、さらに納税者本人の所得要件も含めて確認します。
5.大学生年代の子どもは「特定親族特別控除」も確認
大学生年代の子どもがアルバイトをしている家庭では、特に注意が必要です。
令和7年度税制改正により、19歳以上23歳未満の親族については、扶養控除の所得要件を超えた場合でも、一定の所得範囲で「特定親族特別控除」を受けられる制度が設けられています。
令和8年度改正後は、特定親族の合計所得金額が62万円超123万円以下の場合が対象範囲となります。
給与収入だけの場合、令和8年・令和9年分では136万円超197万円以下が目安です。
| 19歳以上23歳未満の親族 | 合計所得金額 | 給与収入だけの場合の目安 |
|---|---|---|
| 扶養親族の所得要件内 | 62万円以下 | 136万円以下 |
| 特定親族特別控除の対象範囲 | 62万円超123万円以下 | 136万円超197万円以下 |
つまり、大学生年代の子どものアルバイト収入が136万円を超えた場合でも、すぐに親側の控除が完全になくなるとは限りません。
ただし、特定親族特別控除の控除額は親族の所得金額によって段階的に変わります。
6.「扶養控除」と「特定親族特別控除」は違います
ここは年末調整で混乱しやすいところです。
19歳以上23歳未満の親族で、合計所得金額が62万円以下であれば、要件を満たす場合には扶養控除の対象となります。
一方、合計所得金額が62万円を超えて扶養親族の所得要件から外れても、123万円以下であれば、一定の場合に特定親族特別控除の対象となります。
したがって、
- まず扶養親族に該当するか確認する
- 扶養親族の所得要件を超えている場合は、特定親族特別控除を確認する
という順番で考えると整理しやすくなります。
7.子どもの年収が増えると控除額はどう変わる?
特定親族特別控除では、親族の合計所得金額に応じて控除額が段階的に変わります。
そのため、「197万円以下なら、ずっと同じ控除額」というわけではありません。
子どものアルバイト収入が増えていく場合には、親側の所得税への影響も確認しておくことが大切です。
特に大学生年代の子どもが夏休みや年末に勤務時間を増やす場合、年の途中の予想より年間給与が多くなることがあります。
年末調整書類へ記載した所得見積額と実際の年間所得に大きな差が出ないよう、年末が近づいた段階で改めて確認しましょう。
8.「税法上の扶養」と「社会保険の扶養」は別制度です
従業員からの質問で最も注意したいのが、この違いです。
今回説明している136万円などの数字は、主として所得税の扶養控除や配偶者控除等を判定するための税法上の基準です。
一方、健康保険や厚生年金などの社会保険には、別の加入要件や被扶養者の認定基準があります。
そのため、
「税金の扶養に入っている=社会保険でも必ず扶養に入れる」
とは限りません。
また、所得税・住民税・社会保険では、それぞれ制度の目的も判定方法も異なります。
「いくらまで働いて大丈夫ですか?」という質問を受けた場合は、まず何についての“扶養”を知りたいのかを確認することが重要です。
9.「178万円」と「136万円」は何が違う?
第3話では、一定の給与所得者について、給与所得控除74万円と基礎控除104万円を合わせた178万円が、所得税の負担開始水準の目安になることを説明しました。
一方、今回の136万円は、扶養親族や同一生計配偶者について、合計所得金額62万円以下という要件を給与収入に置き換えた目安です。
| 金額 | 主な意味 |
|---|---|
| 178万円 | 一定の給与所得者本人についての所得税の負担開始水準の目安 |
| 136万円 | 扶養親族・同一生計配偶者等についての所得要件を、給与収入だけの場合に置き換えた目安 |
この2つは目的が違います。
「本人に所得税がかかるか」と「家族の扶養控除等の対象になるか」は別の判定であることを覚えておきましょう。
10.年収ラインを一覧で整理すると
令和8年・令和9年分について、給与収入だけの場合の主な目安を整理すると次のようになります。
| 対象・制度 | 所得要件等 | 給与収入だけの場合の主な目安 |
|---|---|---|
| 扶養親族 | 合計所得金額62万円以下 | 136万円以下 |
| 同一生計配偶者 | 合計所得金額62万円以下 | 136万円以下 |
| 特定親族特別控除の対象となる特定親族 | 合計所得金額62万円超123万円以下 | 136万円超197万円以下 |
| 一定の給与所得者本人の所得税負担開始水準 | 給与所得控除+基礎控除 | 178万円が一つの目安 |
ただし、この表は制度を理解しやすくするための目安です。
配偶者特別控除の適用や控除額、納税者本人の所得制限、給与以外の所得がある場合などは、個別に確認する必要があります。
11.会社の経理・総務担当者が注意したいポイント
令和8年分の年末調整では、前年の扶養情報をそのまま使うのではなく、従業員へ改正内容を案内したうえで最新の状況を確認することが大切です。
特に次の点を確認しておきましょう。
- 配偶者や扶養親族の令和8年中の所得見積額
- 給与収入だけか、給与以外の所得もあるか
- 扶養親族の年齢
- 19歳以上23歳未満の親族がいるか
- 特定親族特別控除の対象にならないか
- 年の途中で就職・退職・収入増加などがなかったか
- 令和8年分の最新様式を使用しているか
国税庁では令和8年分の扶養控除等申告書や、基礎控除申告書兼配偶者控除等申告書兼特定親族特別控除申告書等を公表しています。
年末調整ソフトを利用する会社についても、令和8年度税制改正へのアップデート状況を確認しておきましょう。
12.従業員への案内では「○万円まで大丈夫」と言い切らない
会社の担当者が従業員から年収について相談された際には、単純に、
「136万円までなら大丈夫です」
「178万円までなら大丈夫です」
と答えるのは避けた方がよいでしょう。
例えば、同じ「扶養」という言葉でも、
- 所得税の扶養控除
- 配偶者控除・配偶者特別控除
- 特定親族特別控除
- 住民税
- 健康保険の被扶養者
- 勤務先の家族手当・扶養手当
では、それぞれ条件が異なります。
従業員には「何の制度について確認したいのか」を聞いたうえで説明することが、誤解を防ぐポイントです。
13.税理士からのワンポイントアドバイス
令和8年分の年末調整では、「扶養の年収ラインが変わった」ことだけでなく、「大学生年代の子どもについては特定親族特別控除という別の仕組みがある」ことも押さえておきたいポイントです。
特に、19歳以上23歳未満の子どもがアルバイトをしている家庭では、「136万円を超えたから親の控除が全部なくなる」と早合点しないようにしましょう。
また、配偶者についても、136万円を超えたら直ちに控除がゼロになるとは限らず、配偶者特別控除の検討が必要です。
年収の数字だけを見るのではなく、「誰の税金について」「どの控除を判定しているのか」を整理すると、複雑な年収ラインも理解しやすくなります。
14.まとめ|令和8年分は「136万円」を一つの目安に
令和8年分の配偶者控除・扶養控除等について、まず押さえておきたいポイントは次のとおりです。
- 扶養親族・同一生計配偶者の合計所得金額要件は62万円以下へ引上げ
- 給与収入だけの場合、令和8年・令和9年分は136万円以下が一つの目安
- 配偶者は136万円を超えても、一定の場合は配偶者特別控除を検討
- 19歳以上23歳未満の親族は、136万円超197万円以下でも特定親族特別控除の対象となる可能性がある
- 178万円は本人の所得税負担開始水準の話であり、扶養の136万円とは意味が違う
- 税法上の扶養と社会保険上の扶養は別制度
年末調整では、前年の年収ラインをそのまま当てはめず、令和8年分の新しい所得要件に基づいて確認することが大切です。
次回の第5話では、「年末調整で会社へ提出する書類は?令和8年分の必要書類と注意点」を取り上げます。
令和8年(2026年)年末調整を税理士がわかりやすく解説
- 第1話|令和8年の年末調整は何が変わる?税制改正のポイントを解説
- 第2話|そもそも年末調整とは?会社員の所得税が精算される仕組み
- 第3話|令和8年分の給与所得控除・基礎控除はどう変わる?
- 第4話|配偶者控除・扶養控除はいくらまで?令和8年の「年収ライン」を整理
- 第5話|年末調整で会社へ提出する書類は?令和8年分の必要書類と注意点
- 第6話|「年収の壁」はどう変わった?178万円・社会保険106万円などを整理
参考情報
※本記事は令和8年8月時点で公表されている国税庁・財務省の情報を基に、令和8年分の年末調整に関係する配偶者控除・扶養控除等の一般的な内容を分かりやすく解説したものです。給与以外の所得がある場合、納税者本人の所得金額、親族の年齢や居住状況などにより取扱いが異なる場合があります。具体的な税務判断については税理士等の専門家へご確認ください。







