従業員への食事支給は、福利厚生の充実や実質的な手取り感の向上につながる制度として注目されています。
令和8年度税制改正では、食事支給に係る所得税の非課税限度額が見直され、
実務への影響も大きいテーマとなっています。
ただし、食事支給はどのような形でも非課税になるわけではありません。
現物給与に該当するか、非課税要件を満たすか、消費税をどの税率で考えるかなど、
実際の運用では細かな確認が必要です。
この記事では、食事支給の基本的な考え方、現物給与の取扱い、消費税の実務上の注意点について、
税理士事務所のホームページ向けにわかりやすく整理します。
1.食事支給は「現物給与」として考えるのが出発点
会社が役員や従業員に食事を支給した場合、その経済的利益は原則として給与に該当します。
これは、金銭を渡していなくても、会社から経済的な利益を受けていると考えられるためです。
このような給与を一般に「現物給与」といいます。
現物給与には、食事支給のほか、社宅の貸与、制服の支給、一定の記念品の支給、
商品の値引販売などが含まれる場合があります。
もっとも、現物給与には金銭給与とは異なる性質があるため、
税法上は一定の要件を満たす場合に限って特別な非課税取扱いが認められています。
2.食事支給が非課税となるための基本要件
役員や従業員に支給する食事は、次の2つの要件をどちらも満たす場合には、
給与として課税されません。
非課税となる要件
- 役員や従業員が、食事価額の50%以上を負担していること
- 会社負担額が、1か月当たり7,500円以下であること
ここでいう会社負担額とは、
「食事の価額-役員や従業員が負担している金額」で計算する金額です。
どちらか一方でも満たさない場合には、
会社が負担した金額が給与として課税されることになります。
3.令和8年度税制改正で何が変わったのか
令和8年度税制改正により、食事支給に係る会社負担額の非課税限度額は、
従来の月額3,500円以下から、月額7,500円以下へ引き上げられました。
この見直しは、長引く物価上昇を背景としたもので、
令和8年4月1日以後に支給する食事から適用される予定です。
改正前と改正後
- 改正前:会社負担額 月額3,500円以下
- 改正後:会社負担額 月額7,500円以下
あわせて、深夜勤務に伴う夜食の現物支給に代えて金銭を支給する場合の非課税限度額も、
1回300円以下から650円以下へ引き上げられています。
4.食事価額の判定では「消費税を含めない」点に注意
実務上、特に注意したいのが消費税の取扱いです。
非課税限度額である「月額7,500円以下」に該当するかどうかの判定は、
消費税および地方消費税の額を除いた金額で行います。
つまり、税込金額ではなく税抜金額で判定する点が重要です。
また、その計算結果に10円未満の端数が生じた場合には、切り捨てる取扱いとされています。
食事支給制度を設計する際に税込ベースで考えてしまうと、
判定を誤って給与課税になるリスクがあるため注意が必要です。
5.支給方法によって消費税率が異なることがある
食事支給の実務では、「食事そのものの税務」と「消費税率」の両方を確認する必要があります。
なぜなら、同じ“弁当”でも提供方法によって適用税率が変わる場合があるからです。
消費税率の考え方の例
- 弁当を単に購入して支給する場合:軽減税率の対象となることがある
- 配膳などの役務提供を伴うケータリング:標準税率の対象となる
- 食堂での食事提供:標準税率の対象となる
このように、支給方法によって消費税率が異なるため、
食事価額の判定や仕入税額控除の検討に影響する場合があります。
6.現金支給は原則として食事支給の非課税にはならない
実務で誤解が多いのが、「昼食代として現金を渡す」ケースです。
食事支給の非課税取扱いは、原則として食事の現物支給を前提としています。
そのため、単に現金で一律の食事補助を支給する場合には、
原則として給与として課税されます。
仕出し弁当、社員食堂、提携店舗で使える食券や電子チケットなど、
実質的に食事として提供される仕組みかどうかが重要です。
7.他の現物給与の取扱いもあわせて確認したい
食事支給以外にも、現物給与として問題になりやすい項目があります。
たとえば、制服等の支給、社宅の貸与、永年勤続記念品、創業記念品、
自社商品の値引販売などです。
これらも、一定の要件を満たす場合には課税されない取扱いがありますが、
条件を外れると給与課税となる可能性があります。
福利厚生費として処理している支出であっても、
税務上は現物給与に該当しないかを確認することが大切です。
8.実務でのチェックポイント
食事支給制度の導入や見直しを行う場合には、次の点を確認しておくと安心です。
実務で確認したい項目
- 従業員負担額が食事価額の50%以上になっているか
- 会社負担額が月額7,500円以下か(税抜判定)
- 現金支給になっていないか
- 支給方法に応じた消費税率を確認しているか
- 給与課税・源泉徴収事務への影響を整理しているか
特に、食事支給は福利厚生として導入しやすい一方で、
要件を外れると給与課税や源泉徴収漏れにつながるため、
制度設計と日々の運用の両面から確認しておきたいテーマです。
9.まとめ
食事支給は、福利厚生の充実や従業員満足度の向上につながる制度ですが、
税務上は現物給与としての取扱いを正しく理解しておく必要があります。
令和8年度税制改正により非課税限度額は見直されましたが、
依然として
従業員負担50%以上、
会社負担月額7,500円以下、
税抜判定
などの要件確認が重要です。
食事支給制度をうまく活用するためにも、
制度導入前に税務・消費税・源泉徴収の取扱いをあらためて確認することをおすすめします。
福利厚生費・現物給与の税務処理は当事務所へご相談ください
食事支給制度の導入、福利厚生費の判定、現物給与の取扱い、消費税や源泉徴収への影響確認など、
実務に即したサポートを行っています。
お気軽にご相談ください。
参考情報
- 国税庁「食事を支給したとき」
- 国税庁「食事を支給したときの非課税限度額の判定」
- 国税庁「令和8年版 源泉徴収のしかた」
- 財務省「令和8年度税制改正の大綱」
- 国税庁「従業員に対する食事の提供(消費税)」







