〜節税保険ブームの終焉と、生命保険・共済制度の正しい活用法〜
「法人保険に入れば節税になりますか?」
「利益が出ているので、保険で税金を減らしたい」
というご相談は、今でも少なくありません。
かつては、保険料を経費にしながら解約返戻金を貯める、
いわゆる「節税保険」が広く利用されていた時期がありました。
しかし、2019年の税制改正以降、法人保険を使った過度な節税は大きく制限されています。
第3話では、生命保険が本当に節税になるのか、
そして保険や共済制度をどのように活用すべきかを解説します。
1.保険加入=節税、ではありません
法人が生命保険に加入した場合、保険の種類や契約内容によって、
保険料の全部または一部が損金になることがあります。
そのため、利益が出ている会社では、保険料を支払うことで当期の税負担が軽くなる場合があります。
しかし、保険加入は単なる節税策ではありません。
保険料を支払えば、会社の現預金は減ります。
また、解約時には解約返戻金が雑収入などとして課税対象になることがあります。
つまり、保険は「税金が消える仕組み」ではなく、
課税のタイミングを変えたり、保障や退職金準備、事業継続リスクに備えたりするための手段です。
生命保険を検討する際は、節税効果だけでなく、
保障内容、解約返戻率、資金繰り、出口戦略を確認することが重要です。
2.2019年税制改正で「節税保険」は大きく制限されました
2019年の法人税基本通達の改正により、
最高解約返戻率が高い法人保険については、
保険料の損金算入割合が制限されることになりました。
改正前は、保険料の多くを損金にしながら高い解約返戻金を期待できる商品がありました。
しかし、現在は解約返戻率に応じて資産計上が必要になるなど、
以前のような単純な節税効果は期待しにくくなっています。
そのため、法人保険を検討する際に、
「保険料が経費になるから得」
「税金を減らせるから加入する」
という考え方は危険です。
生命保険は、あくまでリスク対策や資金準備の手段として位置づけ、
税務上の取扱いを確認したうえで加入する必要があります。
3.法人保険を活用する本来の目的
法人保険は、節税目的だけでなく、会社を守るためのリスク対策として活用されます。
たとえば、次のような目的があります。
- 経営者に万一のことがあった場合の事業継続資金
- 借入金返済や運転資金の確保
- 役員退職金の準備
- 後継者への事業承継資金の準備
- 従業員の福利厚生
- 取引先や金融機関への信用補完
特に中小企業では、経営者個人の信用や働きに会社経営が大きく依存していることがあります。
そのため、経営者に万一のことがあった場合に、借入金返済、従業員給与、取引先への支払いをどう守るかは重要な課題です。
保険は、こうした万一のリスクに備えるための手段として考えるべきです。
「税金を減らすため」ではなく、「会社を守るため」に必要かどうかを検討しましょう。
4.保険加入前に確認すべきポイント
法人保険を検討する場合は、次の点を確認しておく必要があります。
- 保険加入の目的は明確か
- 保障額は過大または不足していないか
- 毎年の保険料を無理なく支払えるか
- 保険料の損金算入割合を確認しているか
- 解約返戻率と解約時期を確認しているか
- 解約時に課税が発生する可能性を確認しているか
- 役員退職金や事業承継の計画と整合しているか
- 借入金や資金繰りへの影響を確認しているか
保険は長期契約になることが多く、途中で解約すると損失が出る場合もあります。
加入時だけでなく、解約時・退職時・相続時まで見据えて設計することが大切です。
5.小規模企業共済は、経営者の退職金づくりに有効です
個人事業主や小規模企業の役員であれば、
小規模企業共済を活用できる場合があります。
小規模企業共済は、経営者の退職金を準備するための制度です。
掛金は、一定の範囲内で所得控除の対象となるため、
所得税・住民税の負担軽減につながります。
ただし、節税効果だけを見て加入するのではなく、
将来の退職金準備、資金繰り、掛金負担、受取時の税務も含めて検討する必要があります。
小規模企業共済は、短期的な節税ではなく、
経営者個人の将来資金を計画的に準備する制度として考えましょう。
6.中小企業退職金共済は、従業員の福利厚生に有効です
従業員の退職金制度を整えたい場合には、
中小企業退職金共済、いわゆる中退共の活用を検討することがあります。
中退共は、中小企業が従業員の退職金を外部に積み立てる制度です。
掛金は原則として会社の損金となり、従業員の福利厚生にもつながります。
採用難や人材定着が課題となる中で、
退職金制度を整えることは、従業員に安心感を与える効果があります。
ただし、一度制度を導入すると継続的な掛金負担が発生します。
会社の資金繰りや給与制度とのバランスを見ながら導入することが大切です。
7.経営セーフティ共済は、取引先倒産リスクへの備えです
経営セーフティ共済は、正式には中小企業倒産防止共済といい、
取引先が倒産した場合に連鎖倒産を防ぐための制度です。
掛金は一定の範囲で損金算入できるため、節税効果もあります。
しかし、本来の目的は節税ではなく、取引先倒産時の資金繰り対策です。
また、解約時には解約手当金が益金となるため、
将来の課税や資金計画も踏まえて活用する必要があります。
さらに、経営セーフティ共済の活用で現在もっとも注意したいのが、
解約後に再加入する場合の損金算入制限です。
令和6年10月1日以後に共済契約を解約し、その後再加入した場合、
解約日から2年を経過する日までの間に支払う掛金は、
損金または必要経費に算入できません。
以前は、一定期間掛金を支払った後に解約し、解約手当金を受け取ったうえで、
すぐに再加入して再び掛金を損金算入するという使い方が見られました。
しかし、このような「解約してすぐ再加入し、また損金を作る」というサイクルは、
現在では大きく制限されています。
したがって、経営セーフティ共済は「決算対策として一度解約して、また入り直せばよい」
という考え方ではなく、取引先倒産リスク、解約時の益金課税、再加入後2年間の損金算入制限、
退職金や赤字との相殺など、出口戦略まで含めて慎重に検討する必要があります。
経営セーフティ共済は、短期的な節税策ではなく、
取引先リスクや将来の資金繰りに備える制度として考えることが重要です。
8.保険・共済は「出口」まで考えて選ぶ
保険や共済を活用する際に重要なのは、
加入時の節税効果だけで判断しないことです。
生命保険であれば、解約返戻金をいつ受け取るのか、
役員退職金とどう組み合わせるのか、
受取時にどのような課税があるのかを確認する必要があります。
共済制度についても、掛金を支払うときだけでなく、
解約時・退職時・受取時の税務を確認しておくことが重要です。
特に経営セーフティ共済は、令和6年10月1日以後の解約について、
再加入後2年間の掛金が損金・必要経費にならない場合があるため、
解約のタイミングには十分な注意が必要です。
「今期の税金が減るか」だけでなく、
「将来どのタイミングでお金が戻るか」
「そのときに税金が発生するか」
「会社や経営者の資金計画と合っているか」
を確認しましょう。
9.税理士事務所ができるサポート
当事務所では、生命保険や共済制度について、
節税効果だけでなく、資金繰り・退職金・事業承継・リスク対策の視点から総合的に検討します。
- 法人保険の税務上の取扱い確認
- 保険料の損金算入割合の確認
- 解約返戻金と将来課税の確認
- 役員退職金との整合性確認
- 小規模企業共済の活用相談
- 中小企業退職金共済の導入検討
- 経営セーフティ共済の活用相談
- 経営セーフティ共済の解約・再加入時の税務確認
- 資金繰り表への反映
- 事業承継・相続対策との連携
- TKCシステムを活用した月次決算・納税予測
保険や共済は、正しく使えば会社を守る有効な手段になります。
しかし、目的を誤ると、資金繰り悪化や将来の課税リスクにつながることもあります。
10.まとめ|保険は「節税商品」ではなく「会社を守る仕組み」です
生命保険や共済制度には、税務上のメリットがあります。
しかし、保険加入そのものが自動的に節税になるわけではありません。
2019年の税制改正以降、過度な節税保険は大きく制限されています。
また、経営セーフティ共済についても、令和6年10月1日以後の解約については、
再加入後2年間の掛金が損金・必要経費に算入できない制限が設けられています。
これからは、保険や共済を「税金を減らす道具」としてではなく、
「会社を守る仕組み」として考えることが大切です。
保険や共済を検討する際は、
保障内容、税務処理、資金繰り、出口戦略、退職金、事業承継まで含めて判断しましょう。
法人保険・共済制度のご相談はこちら
当事務所では、月次決算・巡回監査を通じて、
生命保険や共済制度の活用、役員退職金、事業承継、納税予測を総合的にサポートしています。
「今加入している保険が適切か確認したい」
「節税目的で保険加入をすすめられている」
「経営セーフティ共済を解約すべきか迷っている」
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という方は、経営支援・巡回監査サービスをご覧ください。
次回予告
第4話では、「在庫整理と家族給与で行う節税対策」をテーマに、
見落とされがちな合法的節税と、その注意点を解説します。







