「相続財産に入るもの」と「相続税がかかるもの」は、同じだと思われがちです。
しかし、実際には民法上の相続財産と、相続税法上の課税対象となる財産は必ずしも一致しません。
たとえば、死亡保険金は民法上は受取人固有の財産とされる一方で、
相続税では課税対象になる場合があります。
このような違いを理解することが、適切な相続対策の第一歩となります。
1.民法上の相続財産とは
民法では、人が亡くなると、その人の財産上の権利義務が相続人に承継されます。
相続財産には、現金・預金・不動産・株式などの資産だけでなく、
借入金などの負債も含まれます。
2.民法上は相続財産ではないのに、相続税がかかるもの
相続税法では、「みなし相続財産」として、
民法上の遺産とは別に課税対象となる財産が定められています。
- 死亡保険金
- 死亡退職金
- 一定の年金受給権
これらは遺産分割の対象ではないものの、相続税の計算には含まれます。
なお、死亡保険金は原則として受取人固有の財産であり、
遺産分割の対象にはなりませんが、
その金額が他の相続人との関係で著しく不公平となる場合には、
例外的に特別受益に準じて持ち戻しの対象となる可能性があります
(最高裁平成16年10月29日決定)。
3.死亡保険金と非課税枠
相続人が受け取る死亡保険金には、
500万円 × 法定相続人の数の非課税枠があります。
ただし、相続人以外が受け取る場合には適用されません。
4.死亡退職金の取扱い
死亡退職金もみなし相続財産として扱われ、
同様に非課税枠が適用されます。
5.相続財産でも非課税となるもの
- 墓地・墓石
- 仏壇・仏具
- 祭祀財産
これらは国民感情に配慮し、相続税の非課税財産とされています。
6.生前贈与と相続税の関係(最新の改正)
民法上は生前贈与された財産は相続財産には含まれませんが、
相続税では一定期間内の贈与が課税対象に加算されます。
令和6年(2024年)1月以降、この加算対象期間は
従来の3年から7年へ段階的に延長されています。
そのため、「生前に贈与したから相続税はかからない」とは限らず、
相続直前の贈与は相続税に取り込まれる可能性がある点に注意が必要です。
7.民法と税法の違いを理解する重要性
相続では、「誰が相続するか(民法)」と「何に税金がかかるか(税法)」を分けて考える必要があります。
8.実務上のチェックポイント
- 民法と税法で対象財産が異なることを理解する
- 死亡保険金は遺産分割と課税で扱いが異なる
- 特別受益の問題が発生する可能性を考慮する
- 生前贈与は加算対象期間に注意する
- 税務と遺産分割を一体で検討する
9.まとめ
民法上の相続財産と相続税の課税対象は一致しません。
この違いを理解することで、より適切な相続対策が可能になります。
相続対策については、税理士へご相談ください。







