〜財産・借金・相続人の確認〜
第1話では、ご家族が亡くなられた直後に必要となる死亡届、葬儀、役所手続き、
そして資料を残しておくことの重要性について解説しました。
葬儀や役所手続きが少し落ち着いたら、次に確認すべきことがあります。
それが、財産・借金・相続人の3つです。
相続税がかかるかどうか、遺産分割をどう進めるか、相続放棄を検討すべきかは、
この3つを確認しなければ判断できません。
今回は、相続が発生した後にまず確認したい基本事項を整理します。
1.まず確認すべきは「財産・借金・相続人」
相続というと、預貯金や不動産などの「財産」に目が向きがちです。
しかし、相続ではプラスの財産だけでなく、借金や未払金などのマイナスの財産も引き継ぐ可能性があります。
また、財産の分け方を決めるためには、誰が相続人になるのかを正確に確認する必要があります。
家族の認識だけで判断すると、前婚の子、養子、代襲相続人などを見落とすことがあります。
そのため、相続が発生したら、まず次の3つを確認しましょう。
- どのような財産があるか
- 借金や未払金がないか
- 誰が相続人になるか
この3つを早めに整理することで、相続税申告が必要かどうか、
遺産分割協議をどう進めるか、専門家へ相談すべきかを判断しやすくなります。
2.確認すべき主な財産
相続財産には、現金や預貯金だけでなく、不動産、株式、保険金、事業用財産など、
さまざまなものが含まれます。
まずは、次のような財産がないか確認しましょう。
- 現金・預貯金
- 自宅土地・建物
- 田・畑・山林・雑種地などの不動産
- 賃貸アパート・貸家・貸地などの収益不動産
- 上場株式・投資信託・国債などの金融資産
- 非上場株式・出資金
- 生命保険金
- 自動車・貴金属・骨董品
- ゴルフ会員権
- 事業用の売掛金・在庫・設備
- 貸付金・未収入金
特に、預貯金と不動産は相続税の判断に大きく影響します。
通帳、固定資産税の納税通知書、証券会社の残高報告書、生命保険証券などを集めておくと、
後の手続きがスムーズになります。
3.預貯金は通帳だけでなく過去の動きも重要です
預貯金については、亡くなった日の残高だけでなく、
過去の入出金の動きも重要です。
相続税の申告では、死亡日時点の預金残高を確認するだけでなく、
生前に大きな出金がないか、家族名義の口座へ資金移動がないか、
名義預金に該当するものがないかを確認することがあります。
たとえば、亡くなる前に多額の現金が引き出されている場合、
そのお金が何に使われたのかを確認する必要があります。
医療費、介護費、生活費、葬儀準備などで使われていれば説明できますが、
使途不明のまま残っている場合は、相続財産として確認が必要になることがあります。
通帳は処分せず、できれば過去数年分を保管しておきましょう。
相続税申告や税務調査では、通帳の履歴が非常に重要な資料になります。
4.不動産は固定資産税通知書から確認する
不動産を確認する際には、まず固定資産税の納税通知書を探しましょう。
固定資産税通知書には、土地や建物の所在地、地目、地積、評価額などが記載されています。
ただし、固定資産税通知書に記載されている評価額が、そのまま相続税評価額になるわけではありません。
土地は路線価方式や倍率方式などにより評価し、建物は固定資産税評価額をもとに評価します。
また、次のような不動産は評価が複雑になりやすいため、税理士への相談をおすすめします。
- 自宅土地
- 貸家・アパートの敷地
- 貸地・借地権がある土地
- 農地・山林
- 市街化調整区域の土地
- 形が不整形な土地
- 道路に接していない土地
- 共有名義の土地
土地評価は、相続税額に大きな影響を与える分野です。
評価方法を誤ると、相続税を払い過ぎたり、後で税務署から指摘されたりする可能性があります。
5.生命保険金も確認しましょう
生命保険金は、受取人固有の財産とされることがありますが、
相続税の計算上は「みなし相続財産」として課税対象になる場合があります。
被相続人が保険料を負担し、死亡により相続人が保険金を受け取る場合には、
相続税の対象になることがあります。
一方で、相続人が受け取る死亡保険金には、
一定の非課税枠があります。
生命保険については、次の点を確認しましょう。
- 保険会社名
- 保険証券の有無
- 契約者
- 被保険者
- 保険料負担者
- 受取人
- 保険金額
契約者、被保険者、保険料負担者、受取人の関係によって、
相続税、贈与税、所得税のいずれの対象になるかが変わることがあります。
保険金を受け取った場合は、早めに税理士へ確認しましょう。
6.借金・未払金も必ず確認する
相続では、預貯金や不動産などのプラスの財産だけでなく、
借金や未払金などのマイナスの財産も確認する必要があります。
主な債務には、次のようなものがあります。
-
住宅ローン
(※団体信用生命保険(団信)に加入している場合は、
保険金によって完済されるため、
相続人が返済を引き継がなくてよいケースがあります) - 事業用借入金
- カードローン・消費者金融からの借入
- クレジットカードの未払金
- 医療費・介護施設費用の未払金
- 固定資産税・住民税・所得税などの未納税金
- 保証債務
- 事業上の買掛金・未払金
住宅ローンについては、団体信用生命保険(団信)に加入している場合、
死亡時に保険金で完済されることが一般的です。
そのため、住宅ローン残高がそのまま相続人の負担になるとは限りません。
まずは借入先の金融機関へ確認しましょう。
借金が多い場合には、相続放棄や限定承認を検討する必要があります。
相続放棄は、原則として相続の開始があったことを知った時から3か月以内に家庭裁判所へ申述する必要があります。
3か月は長いように感じますが、財産や借金を調査しているとすぐに過ぎてしまいます。
借金が多い可能性がある場合は、早めに専門家へ相談しましょう。
7.相続人は戸籍で正確に確認する
相続人を確認するには、戸籍の収集が必要です。
一般的には、亡くなった方の出生から死亡までの連続した戸籍を集め、
配偶者、子、親、兄弟姉妹などの相続関係を確認します。
家族の中では「相続人はこの人たちだけ」と思っていても、
戸籍を確認すると、前婚の子、養子、認知した子、代襲相続人などが判明することがあります。
相続人が一人でも漏れていると、遺産分割協議が無効になる可能性があります。
不動産の名義変更や預貯金の解約手続きでも、相続人を正確に確認する必要があります。
戸籍収集は時間がかかることがあります。
特に本籍地が何度も変わっている場合や、古い戸籍が必要な場合は、早めに取りかかることが大切です。
また、法務局の「法定相続情報証明制度」を利用すると、
戸籍一式の代わりに法定相続情報一覧図の写しを各金融機関等へ提出できる場合があります。
預貯金解約や相続登記の手続きを進めやすくなるため、複数の金融機関や不動産がある場合は活用を検討しましょう。
8.遺言書がある場合は手続きが変わります
遺言書がある場合、原則として遺言内容に従って財産を引き継ぐことになります。
そのため、相続人全員で遺産分割協議をする前に、必ず遺言書の有無を確認しましょう。
公正証書遺言であれば、公証役場で検索できる場合があります。
また、自筆証書遺言については、法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用しているケースもあります。
自宅で封印された自筆証書遺言を見つけた場合は、勝手に開封しないよう注意が必要です。
家庭裁判所での検認が必要になることがあります。
遺言書がある場合でも、相続税申告が必要になることがあります。
遺言内容と税務上の特例適用、納税資金、遺留分などを総合的に確認するため、
早めに専門家へ相談しましょう。
9.相続税がかかるかどうかを大まかに確認する
財産と借金、相続人を確認したら、相続税がかかる可能性があるかを大まかに確認します。
相続税には基礎控除があります。
基礎控除額は、次の計算式で求めます。
3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数
たとえば、法定相続人が3人の場合、基礎控除額は4,800万円です。
相続財産の合計額が基礎控除額を超える場合には、相続税申告が必要になる可能性があります。
ただし、財産額が基礎控除以下に見えても、名義預金、生前贈与、不動産評価、生命保険金などを確認すると、
申告が必要になるケースがあります。
反対に、基礎控除を超えていても、小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減により、
税額が出ないこともあります。
ただし、これらの特例は申告が必要になる場合があるため注意が必要です。
10.早めに税理士へ相談した方がよいケース
次のような場合は、早めに税理士へ相談することをおすすめします。
- 自宅や土地を所有している
- 預貯金や有価証券が多い
- 相続財産が基礎控除を超える可能性がある
- 賃貸不動産を所有している
- 生前贈与を受けている人がいる
- 家族名義の預金がある
- 生命保険金を受け取っている
- 借金が多い、または借金の全体像が分からない
- 相続人が多い、または関係が複雑
- 遺言書がある
- 相続税申告が必要か分からない
相続税の申告期限は、原則として相続開始を知った日の翌日から10か月以内です。
財産調査、戸籍収集、遺産分割協議、申告書作成を考えると、早めに動き出すことが大切です。
11.税理士事務所ができるサポート
当事務所では、相続が発生した後の初期段階から、
財産・借金・相続人の確認をサポートしています。
- 相続税申告が必要かどうかの初期判定
- 預貯金・証券・生命保険の確認
- 固定資産税通知書をもとにした不動産確認
- 借入金・未払金・葬式費用の整理
- 戸籍収集による相続人確認
- 法定相続情報一覧図の取得サポート
- 名義預金・生前贈与の確認
- 相続放棄を検討すべきケースの整理
- 小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減の確認
- 司法書士・弁護士など他士業との連携
「財産がどれくらいあるか分からない」
「相続税がかかるか分からない」
「何から確認すればよいか分からない」
という段階でもご相談いただけます。
12.まとめ|財産・借金・相続人の確認が相続手続きの出発点です
相続が発生したら、まず財産、借金、相続人を確認することが大切です。
この3つを整理しなければ、相続税がかかるかどうか、遺産分割をどう進めるか、
相続放棄を検討すべきかを判断できません。
特に、預貯金、不動産、生命保険、借入金、戸籍は、相続手続きの基本資料です。
早めに資料を集め、全体像を把握しましょう。
相続税がかかるか分からない段階でも、税理士に相談することで、
必要な資料や今後の流れを整理できます。
不安な場合は、早めに専門家へ相談することをおすすめします。
相続財産・相続税の確認でお困りの方へ
当事務所では、相続税申告が必要かどうか分からない段階からご相談いただけます。
預貯金、不動産、生命保険、借金、相続人の確認を行い、
相続税申告が必要かどうかを一緒に整理します。
「財産の全体像が分からない」
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次回予告
第3話では、「こんな人は税理士に相談した方がいい」をテーマに、
相続税がかかる可能性があるケースや、税理士に相談すべき判断基準を解説します。







