第9回 「黒字なのに不安です」と言われた日・・・創業者を支援する税理士として感じたこと
創業支援連載|第9回
「先生、黒字なんですけど、不安なんです」
創業して半年ほど経ったお客様から、こう相談を受けたことがあります。
売上は順調に伸び、利益も出ている。数字だけ見れば、順調そのものです。
それでも、なぜか不安が消えない。
今回は、創業者を支援している税理士の立場から、
実際の現場で感じる「創業期のリアル」と、
そこから見えてきた大切なポイントを体験談としてお伝えします。
「黒字なのに不安」その理由はシンプルだった
その方の試算表を確認すると、確かに黒字でした。
売上も増加傾向で、経費もコントロールされています。
しかし、もう一つの数字を見たとき、理由が分かりました。
問題だったのは
- 預金残高が思ったほど増えていない
- 売掛金が増えている(入金が遅れている)
- 今後の支払い予定が見えていない
つまり、利益は出ているのに、
資金の流れが見えていなかったのです。
これは、昔から商売の世界で言われる
「勘定あって銭足らず」
という状態そのものです。
創業者が最初につまずくのは「数字」ではなく「見え方」
創業者の方は、決して数字が苦手というわけではありません。
むしろ、自分の事業に関しては非常に感覚が鋭い方が多いです。
ただし、問題は
数字の見え方が整理されていないこと
にあります。
売上は分かる、経費もなんとなく分かる。
でも、「今月いくら残るのか」「来月は大丈夫か」という視点で数字を見ていない。
これが、不安の正体であることが多いです。
税理士として最初にやることは「難しい分析」ではない
このような場合、税理士として最初に行うのは、
難しい経営分析ではありません。
むしろ、次のようなシンプルな整理から始めます。
まず整理すること
- 毎月の売上(入金ベース)
- 毎月の固定費(家賃・人件費など)
- 月末の預金残高
- 未回収の売上(売掛金)
- これから出ていく支払い
この5つを並べるだけで、
「なぜ不安なのか」が見えるようになります。
「見える化」すると行動が変わる
先ほどの創業者の方も、
この整理を行ったことで状況が一変しました。
- 入金サイトの見直し
- 利益率の低い仕事の調整
- 広告費の最適化
- 支払いタイミングのコントロール
数字が見えることで、「なんとなくの不安」が「具体的な対策」に変わります。
創業期に本当に必要なのは「完璧な経理」ではない
創業期に必要なのは、
完璧な帳簿ではなく、
今の状況が分かることです。
最低限必要な状態
- 毎月の収支が把握できる
- お金の残高が分かる
- 今後の支払いが見えている
これが整うだけで、経営の安定感は大きく変わります。
税理士の役割は「申告」だけではない
税理士の役割は、単なる申告業務ではなく、
数字の意味を一緒に整理することにあります。
このような「お金の流れ」の考え方は、
会計の世界では
「キャッシュフロー」
と呼ばれます。
利益ではなく、
「実際にお金がどう動いているか」を見る視点です。
今後の連載では、このキャッシュフローの考え方についても、
より詳しく解説していきます。
まとめ|不安の正体は「分からないこと」にある
創業期の不安の多くは、
数字が見えていないこと
にあります。
売上ではなく、お金の流れを見る。
それだけで、経営の安定感は大きく変わります。
創業期の数字の見える化は当事務所へ
資金繰りの見える化、経理体制の整備、創業期の不安解消など、
実務に沿ったサポートを行っています。
お気軽にご相談ください。
参考情報
- 国税庁「記帳や帳簿等保存について」
- 国税庁「青色申告制度」
- 中小企業庁「創業支援」
- 日本政策金融公庫「創業の手引き」







