創業支援連載|第7回
創業後は、営業や集客、商品・サービスの提供が優先になりやすく、
経理は「後でまとめてやればいい」と考えてしまいがちです。
しかし、経理体制が整っていないと、売上は出ているのにお金が残らない、
申告時期に慌てる、資金繰りの不安が大きくなる、といった問題が起こりやすくなります。
本記事では、創業後に早めに整えておきたい経理体制について、
税理士事務所の実務目線でわかりやすく整理します。
1.なぜ創業直後に経理体制を整えるべきなのか
経理は、単に税金の申告のためだけに行うものではありません。
売上、経費、利益、資金残高を正しく把握し、
事業が順調に進んでいるかを確認するための基本業務です。
創業直後は、売上が安定せず、支出の先行が起こりやすい時期です。
そのため、数字を見ないまま進めてしまうと、
気づいたときには資金が不足しているということもあります。
経理体制を整える目的
- 毎月の利益と資金繰りを把握する
- 申告や納税に備える
- 融資や補助金申請に必要な数字を整理する
- 経営判断を感覚ではなく数字で行う
2.まずは「事業のお金」と「個人のお金」を分ける
創業後の経理で最初に行いたいのが、
事業のお金と個人のお金を分けることです。
個人事業では特に、生活費の支払いと事業経費が混ざりやすく、
記帳の負担が大きくなります。
法人であっても、会社のお金と個人のお金の区別が曖昧だと、
経理処理や資金管理が不安定になります。
分けておきたいもの
- 事業用の預金口座
- 事業用のクレジットカード
- 事業用の現金管理
- 請求書や領収書の保管場所
この基本ができているだけでも、日々の記帳や月次確認がかなり楽になります。
3.記帳は「まとめて」ではなく「定期的に」行う
記帳を数か月分まとめて行うと、領収書の内容が分からなくなったり、
経費の入力漏れが起きたりしやすくなります。
また、数字の異常に気づくのも遅れます。
そのため、創業直後から
毎週または毎月の記帳ルール
を決めておくことが大切です。
おすすめの進め方
- 週1回、または月1回の入力日を決める
- 銀行口座とカード明細を定期的に確認する
- 売上・経費・未払金・未入金をまとめて確認する
- 月末時点の預金残高を必ず確認する
4.請求書・領収書・契約書の保存ルールを決める
経理体制の整備では、書類の保管方法も重要です。
請求書、領収書、契約書、通帳記録などが整理されていないと、
記帳の正確性が落ちるだけでなく、申告時や税務調査時にも困ることがあります。
紙で受け取る書類だけでなく、PDFやメールで受け取る書類も増えているため、
紙と電子の両方を意識した整理が必要です。
保存で意識したいこと
- 売上関係と経費関係で分ける
- 月ごと、取引先ごとなどルールを決める
- 電子データは保存場所を決める。データで受け取ったものはデータのまま保存するルールがあります。
- 後から探せる状態にしておく
5.会計ソフトは早めに導入した方がよい
創業後しばらくはExcelや手書きで管理しようと考える方もいますが、
取引が増えると限界がきやすくなります。
特に、インボイス対応や消費税申告、資金繰り管理まで考えると、
会計ソフトの導入は早いほど有利です。
会計ソフトを導入することで、銀行明細やクレジットカード明細の取り込み、
日々の記帳、試算表の作成などが進めやすくなります。
事業用口座を開設する際は、あわせてネットバンキングを契約しておくと、会計ソフトとの連携が非常にスムーズになります。
6.毎月確認したい数字は多くない
創業者の方からは、「数字を見るのが苦手」という声をよく聞きます。
ただ、最初から細かい分析をする必要はありません。
まずは、次の基本数字を毎月確認できれば十分です。
最低限見たい数字
- 今月の売上
- 今月の経費
- 今月の利益
- 月末の預金残高
- 未回収の売掛金
これらが分かるだけでも、資金不足や売上低下の兆候に早く気づくことができます。
7.経理体制は「税金対策」だけでなく「経営管理」のために必要
経理というと、確定申告や決算のための作業という印象を持たれがちです。
しかし、実際には経理体制が整っているかどうかで、
事業の見え方が大きく変わります。
たとえば、どの商品・サービスが利益につながっているか、
毎月の固定費がどのくらいか、
いつ資金が不足しそうかなどは、
経理が整っていないと判断が難しくなります。
8.税理士に相談するタイミングは「困ってから」では遅いこともある
創業後の経理体制は、問題が起きてから整えるより、
早い段階で形を作った方が負担が小さく済みます。
記帳方法、会計ソフトの選び方、消費税やインボイスへの対応、
月次確認のやり方などを最初に整理しておくことで、
創業後の混乱を防ぎやすくなります。
まとめ|経理体制は「小さくても早く」整えることが大切
創業後の経理体制は、完璧である必要はありません。
ただし、
事業と個人のお金を分ける、
定期的に記帳する、
請求書や領収書を整理する、
毎月数字を確認する
という基本は、できるだけ早く整えておくことが重要です。
創業初年度の経理のやり方が、その後の申告・資金繰り・経営判断のしやすさを大きく左右します。
創業後の経理体制づくりは当事務所へご相談ください
創業直後の記帳体制、会計ソフト導入、インボイス対応、月次確認の仕組みづくりなど、
当事務所では創業期に必要な経理体制づくりをサポートしています。
お気軽にご相談ください。
参考情報
- 国税庁「個人で事業を行っている方の記帳・帳簿等の保存について」
- 国税庁「記帳や帳簿等保存・青色申告」
- 国税庁「適格請求書等保存方式の概要」
- 日本政策金融公庫「創業の手引+」
- 中小企業庁「小規模事業者の資金繰りの改善に向けた取組」








