創業支援連載|第4回
開業後は、営業や集客、商品・サービスの提供に意識が向きやすく、
税務手続きが後回しになりがちです。
しかし、創業直後には期限のある届出も多く、
対応が遅れると青色申告のメリットを受けられなかったり、
その後の経理・申告実務に影響したりすることがあります。
本記事では、個人事業・法人それぞれの開業後に確認しておきたい税務手続きを、
税理士事務所の実務目線でわかりやすく整理します。
1.まず押さえたい考え方|「開業したら自動で税務手続きが完了する」わけではない
開業や会社設立をしただけでは、税務署への必要な届出がすべて自動で完了するわけではありません。
事業形態や従業員の有無、青色申告を選ぶかどうか、インボイス登録を行うかどうかによって、
必要な手続きは変わります。
特に創業初年度は、
「何を提出する必要があるか」
と
「いつまでに提出する必要があるか」
を整理しておくことが重要です。
2.個人事業で開業した場合の主な税務手続き
(1)個人事業の開業・廃業等届出書
個人で新たに事業を始めた場合は、開業の届出を行います。
開業届は、事業開始後の基本となる届出であり、
事業用の事務所等を新設・移転した場合にも確認が必要です。
開業届の提出期限は、「確定申告期限まで(実務上は早めの提出推奨)」
(2)所得税の青色申告承認申請書
青色申告を行う場合は、別途、青色申告承認申請書の提出が必要です。
青色申告は、一定の帳簿作成を前提に、節税面や欠損金の取扱いなどでメリットがあります。
個人事業で早めに確認したい届出
- 開業届
- 青色申告承認申請書
- 青色事業専従者給与に関する届出書(必要な場合)
(3)青色事業専従者給与に関する届出書
ご家族に事業を手伝ってもらい、その給与を必要経費にしたい場合は、
青色事業専従者給与に関する届出を検討します。
家族に給与を払っているからといって、届出なしで経費にできるわけではないため注意が必要です。
3.法人を設立した場合の主な税務手続き
(1)法人設立届出書
法人を設立した場合は、法人としての各種届出が必要になります。
個人事業よりも、設立後に確認すべき届出の種類が増える傾向があります。
(2)法人税の青色申告承認申請書
法人でも、青色申告を選ぶ場合には承認申請が必要です。
設立第1期から青色申告を受けたい場合は、提出期限の管理が特に重要です。
(3)給与支払関係の届出
役員報酬や従業員給与を支払う場合には、源泉所得税に関する実務も発生します。
創業初年度は、法人設立直後に経理体制まで整っていないことも多いため、
給与を支払う前に必要な準備をしておくことが大切です。
法人で確認したい主な届出
- 法人設立届出書
- 青色申告承認申請書
- 源泉所得税関係の届出
- インボイス登録申請(必要に応じて)
4.従業員がいる場合は「源泉所得税」に注意
従業員に給与を支払う場合は、源泉所得税の実務が発生します。
また、常時10人未満の給与支給者であれば、
源泉所得税の納期の特例
を利用できる場合があります。
この特例を使うと、原則毎月の納付ではなく、年2回にまとめて納付する取扱いが可能になります。
ただし、申請しなければ自動で適用されるものではないため、該当する場合は早めに確認したいポイントです。
5.インボイス登録をするかどうかも創業時の重要テーマ
開業後は、インボイス制度への対応も検討が必要です。
取引先が適格請求書を求める業種では、創業当初から登録を検討した方がよいケースがあります。
一方で、登録すると消費税の申告・納税が必要になる可能性があるため、
「取引上必要か」「価格設定にどう影響するか」を見ながら判断することが大切です。
インボイス登録で確認したい点
- 主な取引先がインボイス登録を求めているか
- BtoB中心か、一般消費者向け中心か
- 登録後の経理・消費税申告に対応できる体制があるか
6.消費税は「新規開業だから関係ない」とは限らない
新たに開業した個人事業者や新設法人は、原則として、基準期間がないため消費税の納税義務が免除されるケースが多くあります。
ただし、一定の場合には免税とならないことがあるため、創業時点で一度確認しておく必要があります。
特に法人は、資本金や設立の状況によって例外ルールの確認が必要になることがあります。
また、免税事業者であっても、インボイス登録を受けることで課税事業者になる場合があります。
7.開業後の実務で見落としやすいポイント
- 青色申告の申請期限を過ぎてしまう
- 家族給与を払っているのに必要な届出をしていない
- 給与支払を始めたのに源泉所得税の取扱いが未整備
- インボイス登録の要否を曖昧なままにしている
- 会計ソフトや帳簿体制の整備が遅れ、記帳が後回しになる
創業直後は本業が忙しくなりやすいため、税務手続きを後回しにしない仕組みづくりが大切です。
8.税理士に相談するメリット
開業後の税務手続きは、単に書類を出せば終わりではありません。
その後の帳簿管理、資金繰り、節税、申告まで見据えて整理することが重要です。
税理士に早い段階で相談することで、
事業形態に応じた必要手続きの整理、青色申告の活用、インボイス判断、経理体制づくりまで、
一体で進めやすくなります。
まとめ|開業後は「届出」「経理」「消費税」の3点を早めに整理
開業後の税務手続きでは、
必要な届出を期限内に行うこと、
経理体制を早めに整えること、
消費税やインボイスの判断を後回しにしないこと
が重要です。
創業直後の対応が、その後の税務実務のやりやすさを大きく左右します。
「とりあえず開業してから考える」ではなく、初年度のうちに基本を整えておくことをおすすめします。
開業後の税務手続きのご相談は当事務所へ
開業届、青色申告、法人設立後の届出、源泉所得税、インボイス対応など、
創業直後の税務手続きはその後の経営に大きく影響します。
当事務所では、創業段階に応じて必要な手続きを整理し、実務に沿ってサポートしています。
お気軽にご相談ください。
参考情報
- 国税庁「新たに事業を始めたときの届出など」
- 国税庁「開業する場合」
- 国税庁「新設法人の届出書類」
- 国税庁「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請」
- 国税庁「インボイス発行事業者登録申請手続」
- 国税庁「新規開業又は法人の新規設立のとき」








