いざというときのために知っておきたい資金繰り支援策
〜中東情勢・原油価格高騰・物価高に備える中小企業の資金対策〜
不安定な国際情勢や原油価格の高騰、原材料費・物流費・電気代の上昇は、
中小企業の経営に大きな影響を与えます。
「仕入価格が急に上がった」
「商品や原材料の入荷が遅れて売上が立たない」
「燃料費や外注費が増え、利益が残らない」
という状況は、どの業種でも起こり得ます。
売上や利益が急に悪化したとき、最も重要になるのが資金繰りです。
いざというときに慌てないために、国や政府系金融機関などが用意している資金繰り支援策を確認しておきましょう。
※本記事は、令和8年5月1日現在の情報をもとに作成しています。制度の内容、利率、要件は変更されることがありますので、実際の利用時には最新情報をご確認ください。
1.資金繰り対策は「困ってから」では遅い
資金繰りは、会社の生命線です。
利益が出ていても、売掛金の回収遅れ、在庫増加、仕入価格の上昇、借入金返済、税金や社会保険料の納付により、
手元資金が不足することがあります。
特に、原材料や燃料を多く使う業種では、
仕入単価の上昇が数か月遅れて資金繰りに影響することがあります。
また、価格転嫁が遅れると、売上は維持できていても利益率が下がり、資金余力が減っていきます。
そのため、資金繰り対策は「お金が足りなくなってから」ではなく、
早い段階で準備しておくことが重要です。
2.まずは手元資金で何か月分の固定費を賄えるか確認する
まず確認したいのは、現在の手元資金で何か月分の固定費を賄えるかです。
固定費とは、売上の増減に関係なく発生しやすい費用をいいます。
- 人件費
- 家賃
- リース料
- 保険料
- 借入金返済
- 通信費・水道光熱費
- 税金・社会保険料
たとえば、毎月の固定費が300万円で、手元資金が900万円であれば、
約3か月分の固定費を確保できていることになります。
この「何か月持つか」という感覚を持っておくと、
借入を検討すべきタイミングや、経費削減・価格交渉を行うべき時期が見えやすくなります。
また、実務上は「現預金残高が月商の何か月分あるか」という視点も重要です。
中小企業では、一般的に現預金残高が月商の3か月分程度あると、
一定の資金安全性が確保されていると考えられています。
さらに、景気変動や取引先の倒産、災害などの不測の事態に備えるのであれば、
月商の3〜6か月分程度の現預金を確保しておくことが望ましいでしょう。
例えば、月商1,000万円の会社であれば、
現預金3,000万円程度が一つの目安になります。
もちろん業種や事業内容によって適正水準は異なりますが、
自社の預金残高を月商と比較することで、
現在の資金余力を簡単に確認することができます。
「利益は出ているのに預金が増えない」
「売上は順調なのに資金繰りが不安」
という場合は、
現預金月商比率や資金繰り表を確認することで原因が見えてくることがあります。
3.日本政策金融公庫のセーフティネット貸付
中東情勢や原油価格上昇などにより資金繰りに影響を受ける中小企業・小規模事業者向けに、
日本政策金融公庫などでは、特別相談窓口やセーフティネット貸付による対応が行われています。
経済産業省は、中東情勢の変化に伴い、全国の日本政策金融公庫、商工組合中央金庫、信用保証協会、
商工会議所、よろず支援拠点などに設置されている相談窓口を拡充し、
資金繰りや経営に関する相談を受け付けるとしています。
また、日本政策金融公庫は、中東情勢や原油価格上昇などの影響を受けた事業者からの融資や返済に関する相談に、
政策金融機関として対応すると案内しています。経営環境変化対応資金では、
国民生活事業で7,200万円、中小企業事業で7億2,000万円の融資限度額が示されています。
資金繰りが悪化してから急いで相談するよりも、
売上減少や原材料費上昇の影響が見え始めた段階で、早めに相談することが大切です。
4.セーフティネット保証5号
セーフティネット保証5号は、全国的に業況が悪化している業種に属する中小企業者について、
市区町村長の認定を受けることで、信用保証協会による一般保証とは別枠の保証を受けられる制度です。
原油価格高騰の影響を受けている場合には、
最近1か月の売上原価のうち原油等の仕入額が20%以上を占めることや、
最近1か月の原油等仕入単価が前年同月比で20%以上上昇していることなど、
一定の要件が設けられています。
ただし、セーフティネット保証5号は、対象業種や認定要件が時期によって変わることがあります。
利用を検討する場合は、自社の業種が対象かどうか、売上高・利益率・原油等仕入額の要件を満たすかを確認する必要があります。
当事務所では、試算表や売上資料、原価資料をもとに、
認定申請に必要な数字の確認や金融機関への説明資料づくりをサポートします。
5.小規模企業共済の契約者貸付
小規模企業共済に加入している個人事業主や会社役員は、
納付した掛金の範囲内で契約者貸付を利用できる場合があります。
中小企業基盤整備機構は、小規模企業共済の契約者貸付について、
簡易迅速に事業資金等の貸付けを受けられる「一般貸付」と、
特別な事情がある場合に利用できる「特別貸付」があると案内しています。
すでに小規模企業共済に加入している場合には、
いざというときの資金調達手段として、契約者貸付の利用可能額を確認しておくと安心です。
ただし、貸付を受ける場合には返済が必要です。
借入期間や返済方法、利率、利用条件を確認したうえで、資金繰り表に反映させることが重要です。
6.経営セーフティ共済の貸付制度
中小企業倒産防止共済、いわゆる経営セーフティ共済に加入している場合、
取引先が倒産して売掛金などの回収が困難になったときに、共済金の借入れを受けられる制度があります。
また、取引先が倒産していない場合でも、一定の範囲で一時貸付金を利用できる場合があります。
経営セーフティ共済は、取引先倒産時の備えであると同時に、
緊急時の資金繰り対策としても確認しておきたい制度です。
ただし、制度を利用するには加入状況や掛金総額などの確認が必要です。
「加入しているが、貸付可能額を把握していない」という会社は、
早めに確認しておきましょう。
7.借入金台帳・借入金一覧表を作成しておく
資金繰り対策で重要なのは、新たな借入制度を知ることだけではありません。
現在の借入状況を整理しておくことも同じくらい重要です。
借入金台帳や借入金一覧表には、次のような項目を記載しておきましょう。
- 金融機関名
- 借入日
- 当初借入額
- 現在残高
- 借入利率
- 借入期間
- 据置期間
- 毎月の返済額
- 返済期限
- 資金使途
- 担保の有無
- 保証人・連帯保証人の有無
- 信用保証協会保証の有無
借入情報を整理しておくことで、毎月の元金返済額、利息負担、今後の返済ピーク、
借換えの検討時期が分かりやすくなります。
資金調達を行う際にも、現在の借入状況を整理した資料があると、
金融機関への説明がスムーズになります。
8.借りられる金額よりも「返せる金額」を確認する
資金繰りが不安になると、「いくら借りられるか」に意識が向きがちです。
しかし、実務上は「いくら返せるか」の確認がより重要です。
必要以上に借入を増やすと、将来の返済負担が重くなります。
特に金利上昇局面では、利息負担の増加にも注意が必要です。
借入を検討する際には、次の点を確認しましょう。
- 借入後の毎月返済額はいくらになるか
- 返済後に手元資金は残るか
- 売上が回復しない場合でも返済できるか
- 税金・社会保険料の納付資金を確保できるか
- 既存借入の借換えや返済条件変更も検討すべきか
資金調達は、会社を守るための手段です。
借入後の資金繰り表を作成し、返済可能性を確認したうえで判断しましょう。
9.TKCファストリンクによる迅速な資金調達
TKC全国会と日本政策金融公庫が連携する「TKCファストリンク」は、
中小企業・小規模事業者向けの資金調達をスピードアップする提携スキームです。
TKCファストリンクでは、TKC会員事務所が関与先企業を日本政策金融公庫へ紹介することで、
融資の申込みから概ね5営業日以内、創業の場合は7営業日以内に検討結果を得られる可能性があります。
通常は概ね2〜3週間程度かかることもあるため、迅速な資金調達につながる可能性があります。
ただし、迅速な融資判断を受けるには、日頃から月次決算、試算表、経営計画、資金繰り表などが整っていることが重要です。
いざというときに早く動ける会社は、普段から数字を整えている会社です。
10.税理士事務所ができる資金繰り支援
当事務所では、月次決算や巡回監査を通じて、資金繰りの見える化と金融機関対応を支援しています。
- 資金繰り表の作成支援
- 借入金台帳・借入金一覧表の作成支援
- 既存借入の返済予定確認
- 日本政策金融公庫・金融機関への相談準備
- セーフティネット保証5号の認定要件確認
- 売上減少・原価上昇の資料整理
- 現預金月商比率の確認
- 経営計画書・業績予測表の作成支援
- 価格転嫁・利益率改善の相談
- TKCファストリンクの活用支援
- TKCシステムを活用した借入情報管理
資金繰り対策は、単に融資を受けることではありません。
現状を正確に把握し、必要な資金を見極め、返済可能な範囲で金融機関と相談することが大切です。
11.まとめ|資金繰り支援策は、使う前の準備が大切です
中東情勢、原油価格高騰、物価高、金利上昇などにより、
中小企業の資金繰りは今後も不安定になりやすい状況です。
日本政策金融公庫のセーフティネット貸付、セーフティネット保証5号、
小規模企業共済の契約者貸付、経営セーフティ共済の貸付制度など、
いざというときに利用できる制度を事前に知っておくことが重要です。
ただし、制度を知っているだけでは十分ではありません。
月次決算、資金繰り表、借入金一覧表、経営計画書、現預金月商比率などを日頃から確認しておくことで、
必要なときに素早く動くことができます。
資金繰りに不安を感じたら、早めにご相談ください。
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当事務所では、月次決算・巡回監査を通じて、
資金繰り表の作成、借入金管理、金融機関提出資料の整備を支援しています。
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