家族間のお金のやり取りは贈与税がかかる?注意すべき6つのポイントを税理士が解説
家族や親族の間で、お金や財産を渡すことは珍しくありません。
親が子どもの生活費を負担する、祖父母が孫の教育費を援助する、
配偶者へ自宅の持分を移す、子ども名義の預金口座へ毎年お金を入れる――。
こうした行為は、内容によっては税務上の「贈与」と判断され、
贈与税の対象になることがあります。
一方で、家族間のお金の移動がすべて贈与になるわけではありません。
生活費や教育費として通常必要な範囲の援助は、一定の場合に贈与税がかからないこともあります。
この記事では、添付資料で紹介されている6つの事例をもとに、
贈与の基本と、実務で特に注意したいポイントを分かりやすく解説します。
1.そもそも「贈与」とは何か
民法上の贈与とは、一方が自分の財産を無償で相手に与える意思を示し、
相手がそれを受け取ることで成立する契約です。
大切なのは、贈与する側だけでなく、受け取る側にも
「もらった」という認識があることです。
例えば、親が子ども名義の口座を作り、子どもに知らせずにお金を入れているだけでは、
子どもが贈与を受けたと認識していない可能性があります。
その場合、形式上は子ども名義でも、実質的には親の財産とみなされることがあります。
贈与を確実に成立させるためには、次の点を意識しましょう。
- 贈与する側と受け取る側の意思が一致していること
- 誰が、誰に、何を、いつ贈与したかが分かること
- 受け取った側が財産を自分で管理・使用できること
- 通帳や印鑑、キャッシュカードなどの管理状況が実態に合っていること
2.贈与するとき、契約書は必要なのか
贈与契約は口頭でも成立します。
そのため、法律上は必ずしも契約書がなければ贈与が成立しないわけではありません。
しかし、税務上は、後から「本当に贈与があったのか」が問題になることがあります。
特に相続税の申告や税務調査では、過去の資金移動について説明を求められることがあります。
そのため、贈与契約書を作成し、贈与の事実を記録しておくことをおすすめします。
贈与契約書には、一般的に次の内容を記載します。
- 贈与者と受贈者の氏名・住所
- 贈与する財産の内容
- 贈与日
- 贈与者が無償で与える意思
- 受贈者が受け取る意思
- 双方の署名または記名押印
預金を贈与する場合は、現金で手渡しするよりも、
贈与者の口座から受贈者本人の口座へ振り込む方が、
資金移動の記録を残しやすくなります。
3.家族間の貸し借りは贈与になるのか
親から子、祖父母から孫など、親族間でお金を貸し借りすることもあります。
本当に返済する前提があり、返済期限や返済方法などが明確で、
実際に約束どおり返済されていれば、通常は贈与とは扱われません。
ただし、次のような場合は注意が必要です。
- 借用書や金銭消費貸借契約書がない
- 返済期限が決まっていない
- 返済実績がない
- 借りた人の収入から見て返済が困難である
- 利息をまったく取らず、実質的に返済を求めていない
このような状態では、形式は貸付けでも、実質的には贈与と判断される可能性があります。
また、無利息や極端に低い利率で貸し付けた場合、
通常受け取るべき利息相当額が贈与とみなされるケースもあります。
家族間であっても、契約書を作成し、返済期日・返済額・利率を定め、
実際に口座振替などで返済記録を残すことが大切です。
4.子どもの生活費や教育費の援助に贈与税はかかるのか
親や祖父母などの扶養義務者から、
生活費や教育費として通常必要と認められる範囲の財産を受け取った場合、
原則として贈与税はかかりません。
ここでいう生活費には、日常生活に必要な費用が含まれます。
教育費には、学費、教材費、文具費など、通常必要な費用が含まれます。
ただし、非課税となるのは、必要な都度、必要な金額を直接その目的に使う場合です。
例えば、数年分の生活費を一括で渡し、
そのお金が預金として残っている場合は、贈与税の対象になる可能性があります。
また、「生活費」や「教育費」という名目でも、
実際には株式や不動産の購入、貯蓄などに充てている場合は、
非課税の対象とはなりません。
趣味の高額な自動車やぜいたく品の購入代金なども、
通常必要な生活費として扱われない可能性があります。
5.贈与税は、財産をもらったら必ずかかるのか
贈与税は、原則として財産をもらった人にかかる税金です。
暦年課税の場合、1月1日から12月31日までの1年間に受けた贈与の合計額から、
基礎控除110万円を差し引いた残額に対して課税されます。
したがって、1年間に受けた贈与の合計額が110万円以下であれば、
通常は贈与税はかからず、申告も不要です。
ただし、110万円の基礎控除は、贈与した人ごとではなく、
贈与を受けた人ごとに年間110万円です。
例えば、父から80万円、母から80万円を同じ年に受け取った場合、
受贈者が受けた贈与の合計は160万円となるため、
110万円を超える部分について贈与税の申告が必要になる可能性があります。
また、最初から「毎年100万円を10年間贈与する」と約束している場合は、
毎年の贈与ではなく、定期金に関する権利の贈与と判断される可能性があります。
毎年贈与する場合は、その都度、贈与の意思を確認し、
年ごとに契約書を作成しておくことが重要です。
※実務上のポイント
令和6年(2024年)1月1日以降の贈与からは、相続開始前の生前贈与加算の対象期間が従来の「3年」から段階的に「7年」へ延長されています(経過措置あり)。相続対策として暦年贈与を行う場合は、将来の相続税への影響も踏まえて計画的に実施することが大切です。
6.子どもや孫の名義で作った預金は、贈与になるのか
子どもや孫の名義で預金口座を作り、毎年お金を入れている方もいます。
しかし、口座名義を子どもや孫にしただけで、
必ずしも贈与が成立するわけではありません。
贈与が成立するためには、渡す側と受け取る側の意思が一致し、
受贈者がその財産を実際に管理できる状態であることが重要です。
次のような場合は、いわゆる名義預金と判断される可能性があります。
- 子どもや孫が口座の存在を知らない
- 通帳や印鑑を親や祖父母が管理している
- 子どもや孫が自由に引き出せない
- 贈与契約書がなく、贈与の意思が確認できない
- 実質的に親や祖父母の資金として管理されている
名義預金と判断されると、贈与者が亡くなったときに、
その預金が相続財産として相続税の課税対象になる可能性があります。
子どもや孫へ預金を贈与する場合は、年齢や管理能力にも配慮しながら、
贈与の事実と管理状況を明確にしておくことが大切です。
7.婚姻20年以上の夫婦が使える「おしどり贈与」とは
婚姻期間が20年以上の夫婦の間で、
自宅または自宅を取得するための資金を贈与した場合、
贈与税の配偶者控除を利用できることがあります。
この特例は、一般に「おしどり贈与」と呼ばれています。
一定の要件を満たすと、暦年課税の基礎控除110万円に加えて、
最高2,000万円まで控除できます。
主な要件は次のとおりです。
- 婚姻期間が20年を過ぎた後に贈与が行われたこと
- 贈与財産が居住用不動産、または居住用不動産を取得するための金銭であること
- 贈与を受けた年の翌年3月15日までに、その不動産へ実際に住んでいること
- その後も引き続き住む見込みがあること
- 贈与税の申告をすること
この特例は、税額が0円になる場合でも申告が必要です。
また、不動産を贈与すると、登録免許税、不動産取得税、司法書士報酬などの費用が発生することがあります。
相続で取得する場合との比較も必要です。
なお、贈与税の配偶者控除(いわゆる「おしどり贈与」)は、一定の要件を満たす場合、相続開始前の生前贈与加算(3年~7年への延長)の対象外とされており、相続時に持ち戻しの対象とならない点も大きな特徴です。
「2,000万円まで非課税だから得」と単純に判断せず、
将来の相続税、登記費用、譲渡所得税なども含めて検討しましょう。
8.贈与税の申告が必要な場合
暦年課税で1年間に受けた贈与の合計額が110万円を超えた場合、
原則として贈与税の申告が必要です。
申告期間は、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までです。
また、次のような特例を利用する場合は、
税額が0円でも申告や届出が必要になることがあります。
- 贈与税の配偶者控除
- 相続時精算課税
- 住宅取得等資金の非課税
- その他、申告を要件とする特例
期限を過ぎると特例を利用できない場合があるため、
贈与を受けた時点で申告の要否を確認しておくことが重要です。
9.贈与を行う前に確認しておきたいチェックポイント
- 本当に贈与なのか、それとも貸付けなのか
- 贈与者と受贈者の意思が一致しているか
- 贈与契約書を作成しているか
- 受贈者が財産を実際に管理できるか
- 年間の贈与額が110万円を超えないか
- 複数人から受けた贈与を合計しているか
- 生活費や教育費として渡したお金が目的どおり使われているか
- 贈与税の申告や特例の届出が必要ではないか
- 将来の相続税への影響を検討しているか
贈与は、実行後に取り消したり、過去に戻って契約書を整えたりすることが難しい場合があります。
金額が大きい贈与、不動産の贈与、毎年継続する贈与などは、
実行前に税理士へ相談することをおすすめします。
10.税理士からのワンポイントアドバイス
贈与で最も大切なのは、名義だけでなく実態です。
誰が財産を管理し、誰が自由に使うことができるのか。
贈与者と受贈者の双方が贈与を認識しているのか。
その事実を後から説明できる資料が残っているのか。
税務上は、契約書、振込記録、通帳や印鑑の管理状況、
受贈者の年齢や意思確認などを総合的に見て判断されます。
特に相続開始後は、贈与者本人へ確認することができません。
「生前に渡したつもり」だけでは、税務上の贈与として認められない可能性があります。
贈与を相続対策として活用する場合は、
贈与税だけでなく、相続税、所得税、不動産取得税、登録免許税なども含めて検討しましょう。
贈与・相続対策は、実行前にご相談ください
澤田匡央税理士事務所では、親子・夫婦・祖父母と孫の間の贈与について、
贈与税の申告だけでなく、将来の相続税まで見据えたご相談を承っています。
「毎年110万円を贈与したい」
「子ども名義の預金が名義預金にならないか心配」
「家族間の貸付けを適切に行いたい」
「おしどり贈与を利用した方がよいか知りたい」
「相続対策として、いつ何を贈与すべきか相談したい」
このようなお悩みがある場合は、お気軽にご相談ください。
個別のご家族の状況や財産内容を確認したうえで、適切な方法をご案内します。
まとめ
家族間のお金や財産の移動であっても、
受け取った側が無償で財産を取得すれば、贈与税の対象になる可能性があります。
一方、通常必要な生活費や教育費、一定の配偶者控除など、
要件を満たすことで贈与税がかからない制度もあります。
贈与を行うときは、契約書や振込記録を残し、
受贈者が実際に財産を管理できる状態にしておくことが重要です。
税務上の取扱いは、金額や名義だけでなく、
当事者の意思や管理の実態によって判断されます。
贈与を実行した後に問題が判明することがないよう、
特に高額な贈与や不動産の贈与については、事前に専門家へ相談しましょう。
参考情報
※本記事は一般的な制度を分かりやすく解説したものです。
実際の贈与税・相続税の取扱いは、財産の種類、金額、贈与の方法、家族関係などにより異なります。
個別の適用については税理士へご確認ください。







