事業を営む上で、車、機械、建物、パソコンなどの固定資産は欠かせません。これらの資産は一度に多額の費用が発生するため、会計・税務上では「減価償却」という仕組みを使って、資産の価値減少を複数年にわたって費用として配分します。
本記事では、減価償却の基本的な考え方から、少額資産の特例、さらには償却資産税の申告ポイントまで、社長が押さえておくべき実務知識をわかりやすく解説します。適切な減価償却処理は、正確な損益計算と節税対策の両方に直結します。
減価償却とは、時間の経過や使用によって価値が減少する固定資産(減価償却資産)の取得費用を、耐用年数に応じて分割し、各事業年度の経費として計上する会計ルールです。これにより、費用収益対応の原則に基づき、資産が稼ぐ収益とその使用コストを適切に期間対応させることができます。
例えば、1,000万円の機械(耐用年数10年)を購入した場合、購入年度に全額を経費計上すると、その期の利益が大幅に減少してしまいます。減価償却により毎年100万円ずつ費用化することで、企業の真の実力を反映した正確な利益計算が可能になります。
| 分類 | 主な例 | 備考 |
|---|---|---|
| 有形固定資産 | 建物(附属設備含む)、構築物、機械・装置、車両・運搬具、工具・器具・備品 | 物理的な形がある資産 |
| 無形固定資産 | 特許権、商標権、ソフトウェア、営業権、水道施設利用権 | 形のない権利やソフトウェア |
| 非減価償却資産 | 土地、電話加入権、一定の美術品等 | 価値が減少しないため減価償却不要 |
ポイント:使用可能期間が1年未満、または取得価額が10万円未満の資産は、減価償却の対象外。一括で消耗品費等として費用計上可能です。
税務上、少額の減価償却資産については、取得年度に一括で損金算入できる特例が設けられています。これによりキャッシュフローの改善や事務負担の軽減が図れます。
| 取得価額 | 取り扱い | 対象 |
|---|---|---|
| 10万円未満 または使用可能期間1年未満 |
消耗品費等として一括費用計上 | 全事業者 |
| 10万円以上20万円未満 | 一括償却資産として3年均等償却 (取得価額合計の1/3ずつ) |
全事業者 ※償却資産税の課税対象外 |
| 30万円未満 (中小企業者等の特例) |
少額減価償却資産として全額即時損金算入 (年間合計300万円まで) |
青色申告の中小企業者等 ※償却資産税の課税対象 |
減価償却資産の中には、固定資産税の一種である償却資産税が課税されるものがあります。建物や車両(自動車税対象)、ソフトウェア等を除く事業用資産が対象です。
社長へのアドバイス:年末の大掃除時に固定資産台帳と現物を照合し、不要資産は廃棄・除却処理を。無駄な税金を防ぎます。
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適切な減価償却処理は、財務体質の健全化と税務リスクの低減に直結します。ご不明点は税理士にご相談ください。
※本記事は令和7年10月1日現在の法令等に基づいて記載しております。法改正や個別事情により取扱いが異なる場合があります。
参考:国税庁タックスアンサー「No.2100 減価償却のあらまし」