共有不動産を処分するときのハードルと法的手続き - 【近江八幡・滋賀】税理士|澤田匡央税理士事務所
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共有不動産を処分するときのハードルと法的手続き

〜共有持分の売却・共有物分割・所在不明共有者への対応をわかりやすく解説〜

相続などをきっかけに、土地や建物を兄弟姉妹など複数人で共有するケースは少なくありません。
しかし、共有不動産は、単独所有の不動産に比べて、売却や活用の意思決定が難しくなりやすいという特徴があります。

「自分の持分だけでも売却したい」
「共有者の一人が売却に反対している」
「共有者の所在が分からない」
といった場合には、通常の不動産売却とは異なる法的手続きが必要になることがあります。

この記事では、共有不動産を処分するときに生じやすい問題と、
共有持分の売却、共有物分割請求、所在等不明共有者に関する制度、
売却時の税金について、税理士事務所の視点から解説します。

※本記事は令和8年7月時点の法令・公表情報をもとに作成しています。
共有不動産の処分は、民法・不動産登記法・税法などが関係します。
実際の手続きでは、弁護士・司法書士・税理士・不動産会社などの専門家へご相談ください。

1.共有不動産とは

共有不動産とは、1つの土地や建物を複数人が持分割合に応じて所有している不動産をいいます。
相続によって兄弟姉妹が実家を共有した場合や、夫婦で住宅を共有している場合などが代表例です。

共有者は、それぞれ不動産全体のうち一定割合の権利を持ちます。
たとえば、兄弟3人が各3分の1ずつ所有している場合、
各人が特定の場所を3分の1ずつ所有しているのではなく、
不動産全体に対して3分の1の共有持分を持っている状態です。

この「共有持分」は、共有者本人が単独で処分できます。
一方、不動産全体を売却する場合や、大きな変更を加える場合には、
原則として共有者全員の同意が必要になります。

2.共有持分だけを売却することは可能です

共有者は、自分の共有持分だけであれば、他の共有者の同意を得ずに売却できます。
たとえば、3分の1の持分を所有している人は、その3分の1の持分だけを第三者へ譲渡できます。

不動産会社などの広告で「共有持分を買い取ります」と表示されているのは、
不動産全体ではなく、一部の共有持分だけを買い取るサービスです。

ただし、共有持分だけを購入した人は、その不動産を単独で自由に使用・売却できるわけではありません。
他の共有者との調整が必要であり、利用方法や将来の処分に制約があります。

そのため、共有持分のみの売却価格は、
不動産全体を売却した場合の持分相当額よりも大幅に低くなることが一般的です。

できるだけ高い価格で売却したい場合は、
まず共有者全員で不動産全体を売却できないか話し合うことが重要です。

3.共有不動産全体の売却には共有者全員の同意が必要です

共有不動産全体を第三者へ売却する行為は、共有物の処分に当たります。
そのため、原則として共有者全員の同意が必要です。

共有者の一人でも売却に反対すると、通常の方法では不動産全体を売却できません。
また、共有者の中に認知症などで意思能力が十分でない人がいる場合には、
成年後見人等の選任が必要になることがあります。

共有者の住所は分かっていても連絡が取れない場合や、
売却条件について意見が一致しない場合には、
話し合いだけで解決できないこともあります。

このような場合は、共有物分割の手続きを検討します。

4.共有物分割とは

共有者は、原則としていつでも共有物の分割を請求できます。
共有物分割とは、共有状態を解消し、それぞれの共有者が単独で所有する財産や金銭を取得する手続きです。

共有物分割の主な方法には、次のものがあります。

  • 現物分割:土地を分筆するなど、現物を分ける方法
  • 代償分割:一人が不動産を取得し、他の共有者へ代償金を支払う方法
  • 換価分割:不動産を売却し、代金を持分割合に応じて分ける方法

建物や狭い土地など、物理的に分割しにくい不動産では、
代償分割や換価分割が選択されることがあります。

まずは共有者間で協議を行い、共有物分割協議書などを作成します。
協議がまとまらない場合には、裁判所の手続きを利用することになります。

5.話し合いがまとまらない場合の共有物分割手続き

共有者同士で話し合いがまとまらない場合、
共有物分割請求訴訟を提起する方法があります。

裁判所は、不動産の形状、利用状況、共有者の希望、経済的価値などを考慮し、
現物分割、代償分割、競売による換価分割などの方法を判断します。

裁判手続きになると、時間や費用がかかるだけでなく、
共有者間の関係が悪化する可能性もあります。
そのため、可能であれば裁判前に、不動産の査定額や各共有者の希望を整理し、
専門家を交えて協議することが望ましいでしょう。

なお、遺産分割前の相続財産については、
一般の共有物分割とは異なり、原則として家庭裁判所の遺産分割手続きで解決します。
相続から長期間経過した場合には例外的な取扱いもあるため、個別確認が必要です。

6.認知症などで意思能力がない共有者がいる場合

共有者の一人が認知症などにより、不動産売却の内容を理解して意思表示できない場合、
家族が本人に代わって勝手に売却契約へ同意することはできません。

この場合、成年後見人等を選任し、
成年後見人が本人に代わって売却手続きを進める方法があります。

ただし、本人の居住用不動産を処分する場合には、
家庭裁判所の許可が必要となることがあります。
また、売却が本人の利益にかなうかどうかが重視されるため、
家族の都合だけで自由に売却できるわけではありません。

将来、親の認知症が心配な場合には、
判断能力が十分なうちに家族信託や任意後見制度などを検討することも一つの方法です。

7.共有者の所在が分からない場合の新しい制度

共有者の中に、氏名や住所が分からない人、
登記上の住所へ連絡しても所在が確認できない人がいる場合、
以前は共有不動産の処分が長期間進まないことがありました。

令和5年4月施行の改正民法では、所在等不明共有者がいる場合に利用できる、
次の制度が設けられました。

  • 所在等不明共有者の持分取得制度
  • 所在等不明共有者の持分譲渡権限付与制度

これらの制度により、一定の要件を満たす場合には、
裁判所が定める供託金を納めたうえで、
所在等不明共有者の持分を他の共有者が取得したり、
不動産全体を第三者へ譲渡したりできる可能性があります。

ただし、制度を利用するには、共有者の所在を確認するために必要な調査を行い、
裁判所へ申立てをする必要があります。
単に連絡が取れないというだけで直ちに利用できるわけではありません。

8.所在等不明共有者の持分取得制度

所在等不明共有者の持分取得制度は、
裁判所の決定により、所在等不明共有者の共有持分を他の共有者が取得する制度です。

申立てをした共有者は、裁判所が定める金額を供託したうえで、
所在等不明共有者の持分を取得します。
供託金は、原則として所在等不明共有者の持分の時価相当額を基準に決められます。

この制度を使えば、所在不明者が手続きに参加しなくても、
他の共有者が持分を取得し、共有関係を整理できる可能性があります。

なお、所在等不明共有者の持分が共同相続人間で遺産分割すべき相続財産に属する場合には、
原則として相続開始から10年以上経過していることが必要です。

9.所在等不明共有者の持分譲渡権限付与制度

所在等不明共有者の持分譲渡権限付与制度は、
不動産全体を第三者へ売却する際に、
所在等不明共有者の持分も合わせて譲渡する権限を裁判所から得る制度です。

この制度では、所在等不明共有者以外の共有者全員が、
自分の持分を同じ第三者へ譲渡することが前提となります。
一部の共有者だけが売却を希望している場合には利用できません。

裁判所の決定が確定した後は、定められた期間内に売買を成立させる必要があります。
期限内に譲渡しなかった場合には、裁判の効力が失われることがあります。

売却先や売却条件の準備を進めたうえで申立てを検討することが重要です。

10.共有持分を売却した場合の税金

共有不動産全体を売却した場合も、共有持分だけを売却した場合も、
売却によって利益が生じれば譲渡所得税・住民税の対象となります。

譲渡所得は、原則として次のように計算します。

譲渡所得 = 売却代金 − 取得費 − 譲渡費用

共有不動産を売却した場合は、共有者ごとに、
持分に応じた売却代金、取得費、譲渡費用を計算します。

相続で取得した不動産は、被相続人の取得費と取得時期を引き継ぐのが原則です。
売買契約書などがなく取得費が分からない場合には、
概算取得費を使うことがありますが、税負担が大きくなる可能性があります。

共有者によって取得時期や取得原因が異なる場合もあるため、
共有者全員が同じ譲渡所得になるとは限りません。

11.共有のマイホームを売却した場合の3,000万円特別控除

共有している自宅を売却した場合、
一定の要件を満たせば、居住用財産を譲渡した場合の
3,000万円特別控除を利用できる可能性があります。

この特例は、共有者全員で3,000万円ではなく、
適用要件を満たす共有者ごとに最高3,000万円まで控除できる制度です。

ただし、各共有者が実際にその家屋へ居住していたか、
家屋と敷地の所有関係がどうなっているかなどによって、
特例の適用可否が変わります。

たとえば、現在は片方の共有者しか住んでいない実家を共有者全員で売却する場合、
現在住んでいない共有者は、原則としてこの3,000万円特別控除を受けられません。
ただし、以前その家屋に住んでいた場合には、
住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却するなど、
一定の要件を満たせば適用できる可能性があります。
共有名義であるだけで全員が自動的に控除を受けられるわけではないため、売却前の確認が重要です。

特例を利用するためには確定申告が必要です。
売却前に税理士へ確認しておくと安心です。

12.共有不動産を放置するリスク

共有不動産を処分できないまま放置すると、
共有者の死亡によってさらに相続が発生し、共有者の人数が増えていくことがあります。

共有者が増えるほど、売却や管理について合意を得ることが難しくなり、
所在不明者や認知症の共有者が生じる可能性も高まります。

また、固定資産税、修繕費、草刈り費用、建物の解体費などの負担をめぐり、
共有者間でトラブルになることもあります。

相続によって不動産を共有する場合は、
「とりあえず共有」にするのではなく、
将来誰が使用し、誰が管理し、いつ処分するのかまで話し合うことが大切です。

13.共有不動産を処分する前に確認したいこと

共有不動産の売却や共有関係の解消を検討するときは、
次の事項を整理しましょう。

  • 登記事項証明書に記載された共有者と持分割合
  • 共有者全員の住所・連絡先・意思能力
  • 不動産を使用している人や賃借人の有無
  • 住宅ローンや抵当権の有無
  • 不動産全体の査定額と共有持分の査定額
  • 各共有者の取得時期・取得費
  • 売却後の譲渡所得税の見込額
  • 共有物分割・所在等不明共有者制度の利用可能性

法的な解決だけでなく、売却後に手元へ残る金額まで確認したうえで、
最適な方法を選ぶことが重要です。

14.税理士事務所ができるサポート

共有不動産の処分には、法律・登記・不動産売買・税務が複雑に関係します。
当事務所では、主に税務面から次のようなサポートを行っています。

  • 共有不動産売却時の譲渡所得税の試算
  • 共有者ごとの取得費・譲渡所得の確認
  • 3,000万円特別控除などの特例適用の確認
  • 相続税申告における共有不動産の評価
  • 共有不動産を含む遺産分割案の税額比較
  • 売却代金の分配と税務上の注意点の確認
  • 弁護士・司法書士・不動産会社との連携

共有関係の解消や裁判手続きについては弁護士、
登記については司法書士、不動産売却については不動産会社と連携しながら進めることが重要です。

15.まとめ|共有不動産は早めの整理が重要です

自分の共有持分だけであれば、単独で売却することは可能です。
しかし、共有持分のみの売却は、不動産全体を売却する場合よりも価格が低くなりやすいという問題があります。

不動産全体を高く売却するためには、
共有者全員の合意を得て売却することが基本です。
合意できない場合には、共有物分割請求などの裁判手続きを検討します。

また、共有者の所在が分からない場合には、
改正民法による所在等不明共有者の持分取得制度や、
持分譲渡権限付与制度を利用できる可能性があります。

共有不動産は放置するほど権利関係が複雑になりやすいため、
相続が発生した段階や、共有者間で問題が生じた段階で、
早めに専門家へ相談しましょう。

共有不動産の相続・売却・税金でお困りの方へ

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遺産分割案の税額比較、不動産売却時の譲渡所得税のご相談をお受けしています。

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参考情報


事務所通信を参照して作成。

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